西日本皮膚科
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86 巻, 5 号
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目次
図説
  • 道下 可奈子, 加賀 麻弥, 上井 貴絵
    原稿種別: 症例報告
    2024 年86 巻5 号 p. 445-446
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル 認証あり

    患者:43 歳,女性
    主訴:右季肋部の索状腫瘤
    既往歴:卵巣嚢腫
    現病歴:初診 1 カ月前に右季肋部痛を自覚した。その後同部位から右鼠径部方向に伸長する索状腫瘤に気づき受診した。
    現症:右季肋部にゴム様軟の斜めに走る索状物を触知した(図 1 )。
    臨床検査所見:血液検査は施行していない。
    超音波検査:皮下組織と脂肪組織の間に管腔構造があり,内腔に充実成分はなく血流シグナルはなかった(図 2 )。
    治療および経過:身体所見,超音波所見よりモンドール病と診断し,経過を観察した。初診 6 週間後に,右腋窩に同様の索状物が出現し,右乳房のしこりを自覚した。長さ約 3 cm の細い索状物がみられた(図 3 )。右季肋部の索状腫瘤は消退傾向であった。右乳房下方に不整形の腫瘤を触知した。触診では右季肋部の索状物との連続はなかった。
    精査にて右乳癌,右腋窩リンパ節転移,ステージⅢC と診断した。右季肋部と右腋窩の索状腫瘤は右乳癌に伴うモンドール病と考えた。高次病院で右乳癌への手術・放射線・内分泌療法を受け,その後の皮疹の経過は不明である。

  • 篠田 英和, 篠田 大介, 桐生 美麿
    原稿種別: 症例報告
    2024 年86 巻5 号 p. 447-448
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル 認証あり

    患者:15 歳,男性
    現病歴:小学 5~6 年生頃,左乳頭下方の褐色斑と丘疹に気づいた。中学生になりやや大きくなったため,摘出を希望し受診した。
    現症:左乳頭部より内下方に径 1.5 × 0.8 cm の褐色斑とその中央に径 0.4 cm の褐色丘疹が認められた(図 1 )。圧痛や痒みはなかった。
    病理組織学的所見:乳頭と思われる中央部は表皮,真皮ともやや上方に突出し,その中央部に毛包がみられた(図 2 a)。真皮上中層には平滑筋束(図 2 a)や拡張した,断頭分泌を伴う腺管構造(図 2 b)が硬化性線維性の間質とともに散在性にみられ,さらに真皮下方には断頭分泌をする乳腺小葉も認められた(図 2 c)。
    免疫組織化学的所見:エストロゲンレセプター抗体染色(図 3 )では腺上皮細胞の核が黒褐色に染色され陽性で(>95% ),プロゲステロンレセプター抗体染色でも同様に陽性所見(>90% )を示した。
    治療および経過:副乳の乳頭,乳輪を含め切除術を行った。以後再発は認めない。

  • 三原 崇, 佐藤 絵美, 松田 絵奈, 古賀 佳織, 今福 信一
    原稿種別: 症例報告
    2024 年86 巻5 号 p. 449-450
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル 認証あり

    患者:47 歳,男性
    主訴:左拇指の自発痛および圧痛
    職業:野球コーチ(利き手:右)
    現病歴:初診 3 カ月前に痛みを伴う左拇指の皮下結節に気づいた。近医皮膚科を受診し精査目的に当科を紹介となった。
    初診時現症:左拇指掌側に痛みを伴う軟な皮下結節がみられた(図 1 )。
    超音波検査所見:直径 5.5 mm の境界明瞭で血流のない低エコー領域を認めた(図 2 )。
    MRI 所見:脂肪抑制 T2W1 で左拇指皮下に小結節状の明瞭な高信号域を認めた(図 3 )。
    病理組織学的所見:皮下脂肪組織周囲に末梢神経,血管で構成される病変があり,軽度線維化を伴っていた(図 4 a)。神経線維を中心に同心円状に皮膜が何重にも取り囲んだ Pacini 小体を 5 つ認めた(図 4 b)。
    診断:Pacinian neuroma

  • 馬場 まゆみ
    原稿種別: 症例報告
    2024 年86 巻5 号 p. 451-452
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル 認証あり

    患者:27 歳,女性
    主訴:左腋窩の有痛性結節
    既往歴:慢性蕁麻疹
    外傷歴:なし
    現病歴:初診 1 カ月前より放散痛や,疼痛にて肩関節の可動域制限を伴う皮下結節を自覚した。
    現症:皮膚表面は淡い赤紫色を呈し,弾性軟で軽度隆起していた(図 1 )。熱感はなかった。試験穿刺にて混濁した黄色液を吸引した。
    細菌培養検査:嫌気性培養下のチョコレート寒天培地に白いコロニーを形成した。同定菌は抗酸性を示すグラム陽性桿菌でレボフロキサシン以外は耐性を示した(図 2 )。
    診断MycobacteriumM.fortuitum 感染症
    経過:抗生剤 2 剤療法を開始した(アジスロマイシン以外は 1 日量を記載)。レボフロキサシン 500 mg・クラリスロマイシン 800 mg にて臨床症状は軽快したが嘔吐と下痢が出現した。レボフロキサシン 500 mg・ミノサイクリン 200 mg へ変更するも嘔気と眩暈があり,リファンピシン 450 mg・アジスロマイシン 1500 mg/ 週に変更した。この時点で皮下膿瘍は触知せず,1 カ月後には瘢痕化した。約 2 カ月後に内服治療を終了した。初診から 1 年後,膿瘍の再発なく瘢痕は消失した。

綜説
症例
  • 牧野 公治, 城野 剛充, 田中 憲一郎, 水橋 覚, 小野 宏, 瀬戸口 敬介
    原稿種別: 症例報告
    2024 年86 巻5 号 p. 465-470
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル 認証あり

    80 歳,男性。肺結核に対する標準 4 剤併用療法の開始約 1 カ月後から四肢の腫脹,浸潤,瘙痒,眼瞼の腫脹を生じ,当科に入院した。皮膚生検の結果,表皮の海綿状態が著しく,抗結核薬による湿疹型紅皮症として 4 剤中止とプレドニゾロン(PSL)30 mg/日の 1 週間投与で軽快し退院した。抗結核薬の再投与を試みたが,イソニアジド(INH)やエサンブトール(EB)を投与した直後に皮疹が再燃して発熱や好酸球増多も生じたので再入院した。抗結核薬も薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome ; DIHS)の原因薬剤とされており,遷延する皮疹,高熱,肝障害,好酸球増多より非典型 DIHS と診断した。改めて PSL 30 mg/日を投与したところ症状は改善し,PSL を漸減して退院した。リンパ球幼弱化試験陽性の薬剤はなかったが,経過より INH と EB が被疑薬と考えられた。リファブチン,ピラジナミド,レボフロキサシン,エチオナミドによる治療を導入するも患者が副作用を理由にこれを拒み,以後厳重フォローの方針となった。その後,DIHS,結核とも再燃せず,コルチゾール値を確認しながら PSL を漸減し,初診から約 1 年 2 カ月後に PSL の投与を終了した。結核の治療では薬疹などの副作用が多い複数の薬剤を長期服用する必要がある。皮膚結核の診断ならびに治療,副作用対策の中心となる皮膚科医が抗結核薬の理解を深める必要性を痛感した。

  • 田中 宏治, 隈 有希, 中原 真希子, 猪口 淳一, 江藤 正俊, 中原 剛士
    原稿種別: 症例報告
    2024 年86 巻5 号 p. 471-475
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル 認証あり

    Enfortumab vedotin(パドセブ® 以下 EV)は,がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌に対する治療薬であるが,皮疹の出現頻度が約 5 割と比較的高い。当院で経験した 3 例について比較検討を行った。がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌に対して点滴静注後,全例 10 日程で皮疹が出現した。臨床像は紅斑丘疹型であった。当院の 3 例は皮疹のみで全身症状を伴わない症例だったが,皮疹の病理組織学的には重症化が示唆される所見であった。EV は,重症薬疹に至った症例報告もあり,治療を継続している間は軽度な皮膚障害が出現したタイミングで,皮膚科の介入が望ましい。

  • 竹中 花予, 吉川 真人, 井上 優貴, 澤田 昌樹
    原稿種別: 症例報告
    2024 年86 巻5 号 p. 476-478
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル 認証あり

    67 歳,男性。右上葉肺癌に対しニボルマブ投与を開始した。開始 68 週後に,潰瘍が多発するため当科を受診した。初診時右下腿に径 3 cm の浅ぼれ潰瘍,右足趾と背部にも 1~2 cm 程度の潰瘍を認めた。病理組織学的所見では真皮上層に密な好中球やリンパ球の浸潤を認めた。血管炎の所見は認めなかった。ゲンタマイシン軟膏やスルファジアジン銀クリームを外用するも潰瘍は拡大し,新規潰瘍の出現がみられた。下腿の潰瘍は 6 cm まで増大し,生検部は黄色壊死を伴う深い潰瘍となっていた。軽度な外傷を契機とした潰瘍の新生も認めたことから壊疽性膿皮症を第一に考え,組織培養が陰性であることを確認したのちクロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏の外用を開始した。開始後 1 カ月で潰瘍の痂皮化がみられ,その後上皮化した。以上よりニボルマブ投与中に生じた壊疽性膿皮症と診断した。海外での報告例も少なく,貴重な症例であると考えた。

  • 村山 友実子, 夏秋 洋平, 本田 えり, 石井 文人, 名嘉眞 武國
    原稿種別: 症例報告
    2024 年86 巻5 号 p. 479-482
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル 認証あり

    68 歳,女性。右上肺腺癌に対して,オシメルチニブ,ベバシズマブ投与開始 9 日目に顔面に Grade 2 のざ瘡様皮膚炎が出現し,爪周囲炎,下痢,皮膚乾燥が続発した。投与開始 17 カ月から後頭部に鱗屑,膿疱,びらん,脱毛を伴う紅斑局面が出現し,徐々に症状が増悪したため当科を紹介され受診した。皮膚生検の病理組織像では,真皮浅層から深層にかけて,主に毛包周囲に好中球,リンパ球,形質細胞の稠密な炎症細胞浸潤を認め,真菌要素は陰性であった。以上より Erosive Pustular Dermatosis of the Scalp(EPDS)と診断した。ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル液外用を開始したところ,皮疹ならびに脱毛は徐々に改善し,治療開始 6 カ月後には十分な発毛が得られたため外用治療は終了した。6 カ月後,頭皮に脱毛を伴わない紅斑,丘疹,痂皮が生じ,症状の再燃と判断し外用治療を再開した。近年,epidermal growth factor receptor(EGFR)阻害薬投与による EPDS 発症報告が散見されており,その発症機序や臨床的特徴について検討した。

  • 黒木 千晶, 永井 貴子, 西尾 紀一郎, 占部 和敬
    原稿種別: 症例報告
    2024 年86 巻5 号 p. 483-487
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル 認証あり

    74 歳,男性。4 カ月前から繰り返す脳梗塞,脳出血,頭部 MRI 画像所見と血液検査から血管内リンパ腫が疑われ,ランダム皮膚生検目的に当科を紹介され受診した。老人性血管腫 2 箇所と正常皮膚 1 箇所より皮膚生検を行った。胸部の老人性血管腫内で腫瘍細胞の集簇を認めた。免疫組織化学染色で腫瘍細胞は CD20 陽性,CD3 ほぼ陰性であり,血管内大細胞型 B 細胞リンパ腫(intravascular large B-cell lymphoma:IVLBCL)と診断とした。当院では過去 10 年間で同様に IVLBCL を疑いランダム皮膚生検を行った症例が 28 症例あり,うち 13 症例で IVLBCL と診断した。これらを検討すると老人性血管腫や小紅斑からの生検で陽性率が高く,皮膚生検の部位としては皮下脂肪織の多い腹部や大腿での陽性率が高かった。IVLBCL を疑う症例でランダム皮膚生検を行う際は生検採取部を慎重に検討する必要がある。

  • 土井 彩奈未, 赤尾 圭, 豊田 智宏, 長山 理依, 安藤 司恩, 橋本 公二, 田中 厚
    原稿種別: 症例報告
    2024 年86 巻5 号 p. 488-491
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル 認証あり

    84 歳,女性。体幹,四肢に緊満性水疱が出現し精査の結果,水疱性類天疱瘡と診断された。プレドニゾロン内服 0.5 mg/kg/day より開始し,経過良好につき内服量を漸減中であった。その経過の中で,急性腎不全をきたし入院となり,入院 4 日後に肛門粘膜に粘膜潰瘍を認めた。ステロイド内服治療中ということもあり提出したサイトメガロウイルス(CMV)の抗原血症検査が陽性となり,皮膚生検でも陽性細胞を認めたため,CMV 感染症による粘膜潰瘍と診断した。自験例では早期発見,治療により良好な経過を辿ることができたが,汎発化し重症化することもあるため,水疱性類天疱瘡のステロイド投与時は CMV 感染症の合併を考えることの重要性を再認識した。

  • 牧野 公治, 矢口 貴志, 林 秀幸, 西 葉月, 鎗田 響子, 鍬本 充, 亀井 克彦
    原稿種別: 症例報告
    2024 年86 巻5 号 p. 492-497
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル 認証あり

    黒色菌糸症は免疫低下者の日和見感染として増加している。悪性腫瘍に関連・併存した 3 例を経験したので報告する。症例 1 は 62 歳男性で,急性骨髄性白血病に化学療法と同種末梢血幹細胞移植を行った後 GVHD を発症し,プレドニゾロン 12.5 mg/日とイトラコナゾール(ITCZ)後発品 100 mg/日を内服していた。初診 4 カ月前から右手首皮膚が腫脹し,10 × 6 cm の鱗屑と軽度浸潤を伴う暗赤色斑を生じた。皮膚の組織培養で ExophialaE.oligosperma を検出し,ITCZ を 1 日 200 mg に増量して治癒した。症例 2 は 59 歳男性で,多発性骨髄腫に対しレナリドミド療法中だった。初診 1 カ月前から右膝に硬結のち囊腫様病変を生じ,穿刺排膿した検体から E. xenobiotica を検出した。ITCZ 100~200 mg/日を約 4 カ月服用後,残存硬結を全摘し治癒した。症例 3 は 82 歳男性で,去勢抵抗性前立腺癌の放射線治療後,初診半年以上前より左第 1 指間に圧迫で排膿する硬結があった。皮膚転移などを疑い皮膚生検を行うも皮下から木片が現れ,組織培養で E. jeanselmei を検出した。異物除去のみで硬結は収縮し,家族の希望で経過観察とした。免疫低下者では抗真菌薬の使用機会が多いが治療効果も発揮し難く長期使用から耐性化も懸念される。抗真菌薬の生体利用率考慮,5 cm 未満の病変に対する手術療法で治療期間短縮に寄与した。

  • 松永 仁美, 市村 知佳, 城野 剛充, 水上 智之, 花田 聖典, 牧野 公治
    原稿種別: 症例報告
    2024 年86 巻5 号 p. 498-502
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル 認証あり

    BCG 肉芽腫に対して,それぞれ外用治療ないし手術療法で治癒した 2 例を経験したので報告する。症例 1:8 カ月,男児。初診 13 日前,親が左上腕の約 1~2 cm の青紫色腫脹に気付き,前医を受診し抗生剤を投与されたが難治だったため,当科を紹介され受診した。膿汁を穿刺し抗酸菌培養した結果,Mycobacterium tuberculosis complex を検出し,上記と診断した。1% リファンピシン軟膏外用を行い 5 カ月半で治癒した。症例 2:1 歳 10 カ月,男児。初診 21 日前,親が左上腕に青紫色の皮下腫脹に気づき,前医を受診ののち当科を紹介され受診した。BCG ワクチン接種から期間が空いていたこともあり超音波検査と触診の所見から類表皮囊腫を疑った。家族の希望で全身麻酔下に皮膚腫瘍摘出術を行ったが,病理組織所見から乾酪壊死を伴う類上皮肉芽腫を認め,上記と診断した。リファンピシン軟膏外用は非常に簡便だが治療期間のコンセンサスが得られていない。一方で,手術療法は短期間で治癒を得られるが,乳児では全身麻酔が必要になるので引き続き適用や運用について検討が必要である。BCG ワクチン接種後の副反応は近年増加傾向にあるが,乳児に発症するため保護者の不安は強くなりやすい。保護者と密に話し合いを行いながら,フォローや治療方針を決定していく必要があるだろう。

  • 松立 吉弘, 佐々木 千晃, 岩田 麻里, 黒尾 優太, 岡﨑 秀規, 定本 靖司, 瀬戸 太介, 武市 浩美
    原稿種別: 症例報告
    2024 年86 巻5 号 p. 503-506
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル 認証あり

    78 歳,男性。3 週間前から冠状溝に潰瘍が生じたため,泌尿器科を受診した。その際,血尿があり膀胱鏡検査を行ったところ膀胱後壁に腫瘍を認め,膀胱癌が疑われた。冠状溝の病変について当科を紹介された。冠状溝に膿苔を付着する潰瘍を認め,臨床的に硬性下疳を疑ったが,RPR は 1.1 R. U.(基準値<1.0)とわずかに基準値越え,TPLA は 0.20 C. O. I.(基準値<1.0)と陰性であった。性交渉歴を否定したため,3 週間後に再検したところ RPR<0.4 R. U.,TPLA 0.30 C. O. I. と陰性であった。冠状溝の潰瘍辺縁の病理組織所見では,真皮全層に形質細胞を主体とするびまん性の炎症細胞浸潤を認めたが,抗 treponema pallidum 抗体を用いた免疫組織化学染色は陰性であった。膀胱癌の手術を控えて神経質になっており,梅毒血清反応の再検や梅毒としての治療は拒否された。当科でのフォローは途切れていたが,初診 20 週間後に躯幹,手掌に紅斑が生じ再診された。RPR 14.2 R. U.,TPLA 45.90 C. O. I. と陽性であり,第 2 期梅毒と診断した。アモキシシリン 1500 mg/日を 8 週間内服し,半年後には RPR は 3.2 R. U. まで低下しており,治癒と判断した。検査法・試薬の技術向上により梅毒血清反応のウインドウピリオドは短縮されているが,本症例のように発症から 6 週間後でも陽転しない場合がある。臨床的に梅毒を疑うも梅毒血清反応が陰性の場合には,粘り強く再検するとともに,治療の先行も選択肢になり得ると考える。

研究
  • 許 郁江
    原稿種別: 研究論文
    2024 年86 巻5 号 p. 507-513
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル 認証あり

    酒皶の治療は 0.75 % メトロニダゾールゲルが保険適用となったものの,欧米に比べ治療選択肢が少ないのが現状である。治療においては,患者個々に合わせた治療,生活指導やスキンケアが重要である。筆者は以前から酒皶に対し漢方薬を併用する治療を行っており,良好な成績を得ていた印象がある。今回,口渇,ほてりの適応を持つ白虎加人参湯を,酒皶に起因する顔面のほてりを訴える患者 22 例に 2~12 週間投与し,有用性を検討した。その結果,ほてりは 2 週後より改善し,顔面の紅斑,紅色丘疹,口渇においても治療前後の比較で改善が認められた。本剤に起因すると思われる副作用は認められなかった。以上の結果から,白虎加人参湯は酒皶に起因するほてりを早期から治療介入することにより,QOL 改善に寄与しうる薬剤であると考えられた。

世界の皮膚科学者
  • Kiarash Khosrotehrani
    原稿種別: letter
    2024 年86 巻5 号 p. 517-518
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル 認証あり

    Professor Khosrotehrani is a clinician-scientist, practicing dermatologist with a focus on delivering state of the art concept and technologies to real-world clinical problems. He is the inaugural St Baker-Soyer chair of Dermatology at the university of Queensland where he leads the Dermatology Research Centre and the Experimental Dermatology Group at the Frazer Institute, director of the Department of Dermatology at the Princess Alexandra Hospital and co-director of the Australian Skin and Skin Cancer Research Centre in Brisbane, Australia. Prof Khosrotehrani is passionate about the development of academic medicine and future academic clinicians and leads this effort in dermatology on the board of directors of the Australasian College of Dermatologists, or as the immediate-past President of the Australasian Society for Dermatology Research, past board member of the International Society for Investigative Dermatology, and past-Editor in Chief of the Australasian Journal of Dermatology.

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