我々は以前,皮膚科領域のステロイド性骨粗鬆症への予防治療の実態を明らかにするため,和歌山,長崎,静岡の3県下の開業医および勤務医にアンケート調査を実施,報告した。結果,ステロイド投与患者が多い反面,骨粗鬆症を定期的チェックする医師は少なく,予防的投与の目安が不明確で基準内容にばらつきがある等の課題が見え,わが国独自のエビデンスの集積とガイドラインの確立の必要性があると考えられた。その後2005年のステロイド性骨粗鬆症の管理と治療に関するガイドライン発表など,重要な転換点があったことから,予防的管理の実態の変化を観察するため,改めてアンケート調査を同3県下で実施した。月平均ステロイド投与患者は開業医で16.1人(前回調査時48.3人),勤務医13.5人(同14.9人)であり減少していた。骨粗鬆症の定期的チェックは,開業医10.7%(同5.2%),勤務医36.7%(同29.6%)が実施しており前回より上昇した。ステロイド性骨粗鬆症に予防的治療を実施するのは開業医24.0%(同38.5%),勤務医84.4%(同50.6%)で,勤務医では大幅に上昇した。使用薬剤は,ビスフォスフォネート製剤が全体で46.5%(同12.5%),活性型ビタミンD
3製剤が41.2%(同95.3%)となり,使用薬剤に変化が生じていた。ステロイド性骨粗鬆症のガイドラインの作成により,皮膚科領域の治療実態は確実に変化していた。反面,開業医のビスフォスフォネート製剤に関するガイドラインの実施率は低いと類推され,一層のガイドラインの周知が必要であると考えられた。
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