西日本皮膚科
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77 巻, 1 号
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図説
綜説
症例
  • 中尾 匡孝, 竹内 聡, 高橋 和弘, 桐生 美麿, 寺尾 浩, 古江 増隆
    2015 年 77 巻 1 号 p. 10-13
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/07/03
    ジャーナル 認証あり
    55 歳,男性。両下腿に有痛性の紅斑が出現した。徐々に皮疹は増悪し,抗生剤内服でも改善なく,発症11日後に当科を受診した。臨床像,血液生化学所見,病理組織学的所見より結節性紅斑と診断され,プレドニゾロン内服により皮疹は速やかに改善した。また全身検索を行い,大腸内視鏡検査にて大腸癌が認められた。更に PET/CT にて頚部,肝門部リンパ節の集積があり,頚部リンパ節生検で多発リンパ節結核と診断された。本症の原因疾患を複数有した例として報告し,考察したい。
  • 江頭 翔, 木藤 正人, 加口 敦士, 肥後 順子, 尹 浩信
    2015 年 77 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/07/03
    ジャーナル 認証あり
    49 歳,女性。7,8 年前より頭部,腋窩や鼠径部などの屈側部に皮疹を認めており,近医にて加療されていたが難治であった。来院半年前に全身性エリテマトーデスと診断され,当院内科に定期通院していた。1 カ月前より皮疹の増悪傾向を認めたために当科を初診した。初診時頭髪部や耳介・外耳道部,腋窩部,鼠径部を中心に体幹四肢に,5 mm から拇指頭大の紅暈を伴った小膿疱の集簇を認めた。臨床像や病理組織検査などの検査所見より,amicrobial pustulosis associated with autoimmune disease が考えられた。診断的治療も兼ねてシメチジン・アスコルビン酸併用療法を開始したところ軽快が得られた。臨床像が好発部位を越えて広がっていたこと,シメチジン・アスコルビン酸内服で改善が得られたという点で,本例は貴重な症例であったと考える。
  • 上尾 大輔, 阿南 隆, 波多野 豊, 藤原 作平
    2015 年 77 巻 1 号 p. 20-27
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/07/03
    ジャーナル 認証あり
    当初は膜様鱗屑を伴う紅斑のみ呈していたが,発症 5 年後に膿疱と鱗屑を伴う環状紅斑を生じ,汎発化した再発性環状紅斑様乾癬(recurrent circinate erythematous psoriasis, RCEP)を経験した。初期から完成期の病変まで病理組織像を含め検討し,初期には角層の一部に好中球が浸潤していたものの海綿状態を伴う皮膚炎が主体で,典型的な所見が得られず診断に苦慮したが,最終的には膿疱と環状紅斑を生じ,病理組織像でも表皮上層の好中球の集簇像を伴った海綿状態を呈したことから診断を確定した。皮疹はエトレチナートの内服により速やかに消退した。本邦報告例 72 例のうち発症後数年後に汎発化した例は 5 例であるが,数年間環状紅斑を生じず鱗屑性紅斑のみと報告されているのは自験例を除き1 例のみで,極めて稀な症例である。診療に当たっては初期の典型的な所見がない状況でもこの疾患を鑑別疾患から見逃さないことが重要と考えられた。
  • 木村 裕美, 永瀬 浩太郎, 米倉 直美, 井上 卓也, 三砂 範幸, 成澤 寛
    2015 年 77 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/07/03
    ジャーナル 認証あり
    53歳,男性。慢性腎不全に対し 1978 年に血液透析を導入され,1990 年には HTLV-I 関連脊髄症を発症し両下肢麻痺が出現した。その後両側臀部に比較的境界明瞭な硬い腫瘤が出現し,徐々に増大し小児頭大の腫瘤を形成した。病理組織学的には好酸性無構造物質の沈着がみられ,その物質はコンゴレッド染色陽性であった。免疫組織化学的には抗アミロイド A 抗体,抗 κ 抗体,抗 λ 抗体はいずれも陰性で,抗 β2-ミクログロブリン抗体が陽性であり透析アミロイドーシスと診断した。
  • 溝手 政博, 内 博史, 北 和代, 日高 らん, 中原 真希子, 中原 剛士, 師井 洋一, 古江 増隆
    2015 年 77 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/07/03
    ジャーナル 認証あり
    Methotrexate(MTX) は関節リウマチ(RA) の治療薬として有用であり,近年一般的となってきている。 一方で,関節リウマチ患者の MTX 使用中に発生した悪性リンパ腫も報告されている。今回,我々は MTX 投与中の RA 患者に発症した MTX 関連リンパ増殖性疾患(methotrexate-related lymphoproliferative disorder, MTX-LPD)の 2 例を経験した。MTX-LPD の発生機序はいまだ不明であるが,自己免疫疾患による免疫異常や MTX によって生じた免疫抑制状態では,EB ウイルスにより誘発された B 細胞のクローナルな増殖や,リンパ球のポリクローナルな増殖を抑制することができないことが原因と考えられる。RA 患者の治療中,MTX を使用する際には,悪性リンパ腫発症の可能性も念頭に置いて治療を行わなければならない。
  • 古賀 文二, 古賀 佳織, 鍋島 一樹, 中山 樹一郎, 今福 信一
    2015 年 77 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/07/03
    ジャーナル 認証あり
    菌状息肉症(mycosis fungoides : MF)には,限局性病変を示す pagetoid reticulosis(PR)という亜型がある。さらに pagetoid reticulosis(PR)には,過去に播種型 pagetoid reticulosis(disseminated PR : DPR)という細分類があった。2008 年の WHO 分類第 4 版では,MF の亜型として PR は残ったが DPR は除外された。現在 DPR は,古典的 MF もしくは他のリンパ腫(aggressive epidermotropic CD8 positive cytotoxic T-cell lymphoma,γδ-T cell lymphoma,extranodal NK/T cell lymphoma,nasal type)に帰属すると成書に記載がある。今回我々は,病理組織学的に MF に類似した組織像であったが,多発限局性の病変を呈し,peripheral T-cell lymphoma,not otherwise specified(PTCL-NOS)と診断した 1 例を経験した。42 歳,男性,初診の 8 カ月前より左腋窩,右膝窩に限局した自覚症状のない皮疹が出現し徐々に拡大した。初診時,左腋窩,右下肢,臀部右側に限局して不整形な浸潤性褐色斑がみられ,左腋窩および右鼠径部に腫大するリンパ節を触知した。左腋窩病変部位,ならびに所属リンパ節より採取した病理組織像は,核異型を伴うリンパ球様単核球が表皮内,および真皮,付属器に強く浸潤し MF 様であった。しかしながら臨床像が限局多発性病変を示し,古典的 MF と異なっていた。成書に記載がある他のリンパ腫も否定し,最終的に PTCL-NOS と診断した。自験例は MF との類似点が多く,過去の限局多発性病変を示す DPR の報告を参考に診断ならびに臨床学的特徴について考察を行い,報告した。
  • 佐々木 誉詩子, 内 博史, 師井 洋一, 古江 増隆
    2015 年 77 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/07/03
    ジャーナル 認証あり
    72 歳,女性。初診の 2 カ月前に,左胸部に自覚症状のない紅色結節が出現した。前医で行われた穿刺吸引細胞診にて異型リンパ球が認められたため,当科に紹介された。初診時,左胸部に境界明瞭でドーム状に隆起する,単発の径 2 cm の紅色結節を認め,生検した。病理組織像は,小型から中型の異型リンパ球が浸潤しており,それらは CD3・CD4 が陽性,CD30 が陰性であった。また,PCR 法で T 細胞受容体遺伝子再構成を認めた。全身検索で他臓器への浸潤はみられなかった。以上より,primary cutaneous CD4+ small/medium sized pleomorphic T cell lymphoma(PCSM-TCL)と診断し,腫瘍を全切除した。以後 33 カ月,再発・転移を認めていない。PCSM-TCL は原発性皮膚リンパ腫の 2%とまれな疾患だが,一般的に予後は良好であり,過度な治療を避けるためにも他疾患との鑑別が重要である。
  • 寺脇 志帆, 柴山 慶継, 立川 量子, 古賀 佳織, 岩崎 宏, 中山 樹一郎, 今福 信一
    2015 年 77 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/07/03
    ジャーナル 認証あり
    症例は 32 歳,女性。右大腿後面の径 10 cm の腫瘤を主訴に受診した。生検にて病理組織学的に未分化型多形性肉腫/悪性線維性組織球腫が考えられた。造影 CT 検査で同側骨盤内・鼠径リンパ節に腫大があり,PET-CT で同部位に集積もみられ,広範切除術とリンパ節郭清術を行い,術後原発部に放射線治療を行った。病理組織学的には表皮との連続のない周囲間質との境界が比較的明瞭な腫瘍病変が真皮から皮下脂肪織にかけて存在した。内部では紡錘形ないし類円形で異型性の強い腫瘍細胞が密に花むしろ状に増殖し,巨大な異型細胞も混在していた。免疫組織化学的に腫瘍細胞の核に MDM2 と CDK4 が部分的に陽性で,脱分化型脂肪肉腫との鑑別が困難であったが,fluorescence in situ hybridization(FISH 法)を用いて検討したところ MDM2/CEP12 の細胞あたりのシグナル数は 1.6 と増幅はなく,未分化型多形性肉腫/悪性線維性組織球腫の診断とした。術後 1 年となるが局所再発や遠隔転移なく経過している。
  • 西 和歌子, 岩田 洋平, 有馬 豪, 西村 景子, 奥本 隆行, 吉村 陽子, 松永 佳世子
    2015 年 77 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/07/03
    ジャーナル 認証あり
    患者は 47 歳女性,多発性硬化症による第 4 胸椎以下の神経障害があり,数年前より車椅子生活であった。2011 年 3 月より左坐骨結節部に褥瘡が生じたが放置していた。3 月下旬より 38 度台の発熱が生じ,解熱しないため,当科を受診した。初診時,左坐骨結節部の褥瘡部に壊死組織を認め,CT では左臀部から左下腿にかけて皮下深部組織内にガス像を認めガス壊疸と診断した。創部からの細菌培養では Enterococccus aviumLactbacillus sp が検出された。抗生剤の全身投与を開始したが,第 3 病日に意識障害を来したため,第 4 病日に広範囲にデブリードマンを行い,感染の沈静化を得ることができ救命することができた。デブリードマン部の欠損は,複数回の植皮術を行い上皮化した。坐骨部褥瘡は,各種外用剤による保存的治療,局所陰圧閉鎖療法(VAC 療法)を約 5 カ月間にわたり試みるも治癒しなかった。そのため左坐骨突出部の削除を含めたデブリードマンと大臀筋皮弁形成術を行うことで退院が可能となった。
  • 中尾 匡孝, 杉山 晃子, 辻 学, 三苫 千景, 安川 史子, 竹内 聡, 髙原 正和, 松田 哲男, 森田 圭祐, 古江 増隆
    2015 年 77 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/07/03
    ジャーナル 認証あり
    3 カ月の女児。父親は柔道家。生後 2 カ月より前頭部に鱗屑を伴った脱毛斑が生じたため当院を受診した。Black dot ringworm が認められ,KOH 法で毛内性の菌要素が確認された。真菌培養所見から Trichophyton tonsurans による頭部白癬と診断した。父親から頭部へのヘアブラシ法で同菌が分離された。グリセオフルビン(10 mg/kg)の内服とケトコナゾールを混じたシャンプーの併用にて,治療開始 2 カ月後には軽快した。本症は就学児や成人では格闘技競技者間での集団感染が多数報告されているが,一方乳幼児も含めた未就学児では,家族内感染によるものが多いと考えられる。本邦での未就学児の発生例を集計し報告したい。
研究
  • 森上 徹也, 森上 純子, 中井 浩三, 横井 郁美, 米田 耕造, 窪田 泰夫
    2015 年 77 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/07/03
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    ステロイド軟膏および保湿剤の外用は,アトピー性皮膚炎(AD)治療の中核である。しかし,多忙な日常業務中,医師自らが患者一人一人に外用指導を行うことは困難であろう。そこで我々は,外用法の説明用動画を自主制作し,患者に見てもらうことで,指導内容に対する理解度の向上や,指導にかかる負担の省力化を期待した。AD 患児(0∼12 歳,平均年齢 8.0±3.7 歳,男女比 3:4)とその保護者各 21 名(母親 19 名,祖母 2 名)に対し,ステロイド軟膏と保湿剤の外用指導を,動画群(n=11)と紙媒体群(n=10)に分けて行った。動画の視聴には,外来では iPad® を,家庭では YouTube® を用いた。指導日と 2 週間後に担当医と保護者がそれぞれ AD の重症度を評価した。指導内容に対する理解度と,自宅での外用法の遵守状況を visual analogue scale(VAS)で評価した。その結果,両群における 2 週間後の担当医と保護者による重症度評価は有意に改善し,群間に有意差はなかった。ステロイド軟膏を塗る動作の理解度は,動画群が有意に高かった(ρ=0.046)。ステロイド軟膏を塗る部位と回数,保湿剤を塗る動作,指導全般に対する理解度は,有意差はないものの動画群が高い傾向にあった。自宅での外用は全例が遵守できたが,YouTube® を視聴した被験者はいなかった。その理由として,外来での視聴のみで外用法が十分に理解できたとの回答が多かった。iPad® と動画を用いた外用指導は,AD 症状の改善の妨げとはならず,外用法についての理解度を高める可能性が示唆された。
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