ステロイド軟膏および保湿剤の外用は,アトピー性皮膚炎(AD)治療の中核である。しかし,多忙な日常業務中,医師自らが患者一人一人に外用指導を行うことは困難であろう。そこで我々は,外用法の説明用動画を自主制作し,患者に見てもらうことで,指導内容に対する理解度の向上や,指導にかかる負担の省力化を期待した。AD 患児(0∼12 歳,平均年齢 8.0±3.7 歳,男女比 3:4)とその保護者各 21 名(母親 19 名,祖母 2 名)に対し,ステロイド軟膏と保湿剤の外用指導を,動画群(n=11)と紙媒体群(n=10)に分けて行った。動画の視聴には,外来では iPad
® を,家庭では YouTube
® を用いた。指導日と 2 週間後に担当医と保護者がそれぞれ AD の重症度を評価した。指導内容に対する理解度と,自宅での外用法の遵守状況を visual analogue scale(VAS)で評価した。その結果,両群における 2 週間後の担当医と保護者による重症度評価は有意に改善し,群間に有意差はなかった。ステロイド軟膏を塗る動作の理解度は,動画群が有意に高かった(ρ=0.046)。ステロイド軟膏を塗る部位と回数,保湿剤を塗る動作,指導全般に対する理解度は,有意差はないものの動画群が高い傾向にあった。自宅での外用は全例が遵守できたが,YouTube
® を視聴した被験者はいなかった。その理由として,外来での視聴のみで外用法が十分に理解できたとの回答が多かった。iPad
® と動画を用いた外用指導は,AD 症状の改善の妨げとはならず,外用法についての理解度を高める可能性が示唆された。
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