日本臨床細胞学会雑誌
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38 巻, 1 号
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  • Adenoma malignumの細胞像について
    荒井 祐司, 芳賀 厚子, 平井 康夫, 秋山 太, 都竹 正文, 山内 一弘, 荷見 勝彦
    1999 年 38 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸部の悪性腺腫 (Adenomamalignum) における細胞像の診断的基準の確立を目的として検討を行った. 高分化型腺癌成分をほとんど含まない悪性腺腫8症例中再検討可能な5症例を対象とし,(1) 背景および出現部位,(2) 細胞集塊および配列,(3) 核および細胞質, の3項目について検討した. その結果,(1) 背景はきれいであったが黄色調の粘液がすべての部位に認められた.腫瘍細胞はC, Eスメアには認められたがVスメアにはほとんど認められなかった.(2) 大型シート状集塊, 全周性柵状配列を示す集塊, リボン状やぶどうの房状集塊などの出現を認めた.(3) 腫瘍細胞の細胞質には黄色調に染まる粘液を有していた. また核は類円形から楕円形で緊満感があり, クロマチンは微細顆粒状でeuchromatinの増加が示唆された.
    通常の鏡検時において1. きれいな背景に黄色調粘液の出現, 2. 黄色調粘液を有する丈の高い頸管腺細胞の集塊, 3-年齢 (高年齢) にそぐわない頸管腺細胞の出現とその量, 4. Cスメア標本に出現した頸管腺細胞の集塊, など4項目に示した所見のいずれかが認められた場合には, 上記の “悪性腺腫の特徴的細胞像” の (2),(3) と照らし合わせよく観察することにより診断可能であると思われた.
  • 入江 寿美子, 中島 久良, 高尾 直大, 森山 伸吾, 坂井 秀隆, 石丸 忠之, 入江 準二, 福居 兼実, 行徳 豊, 山邊 徹
    1999 年 38 巻 1 号 p. 6-14
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸部腺癌の早期検出を図る一環として, 子宮頸癌取扱い規約 (1997年) に基づく上皮内腺癌および微小浸潤腺癌を早期腺癌とみなし, それらと悪性腺腫の細胞診所見を通常の内頸部型浸潤腺癌などと対比した. また, 核の細胞計測学的対比も行った.
    1.早期腺癌の75.0%の例に組織学的に扁平上皮異常との共存がみられた.
    2.早期腺癌では腫瘍性背景は認められず, 腺集団の辺緑における核の羽毛状突出が特徴的であった. 核は一般に楕円形で, 中等度の大小不同を示す傾向が認められた. 核クロマチンは細穎粒状で, 核小体は中型優位の例が多かった.
    3.悪性腺腫では全例に粘液性背景がみられ, 乳頭状や蜂巣状の集団として出現していた. また, 核の不規則配列が認められた. 核は軽度腫大し類円形で, 細穎粒状ないしオペイク状のクロマチンを有し, 核小体は中型優位の例が多かった.
    4.細胞核計測では, 早期腺癌の核真円度は内頸部型浸潤腺癌に比べ低値であり, 楕円形状であることが伺われた. 悪性腺腫の細胞核は正常頸管腺の核測定値とほぼ類似していたが, 真円度のみは正常頸管腺に比べ有意に低値であり, 早期腺癌と正常頸管腺の中間的形状であることが示唆された.
  • 近 京子, 中嶋 隆太郎, 小野寺 美枝, 白鳥 まゆみ, 佐藤 博俊, 佐藤 信二, 佐藤 雅美, 藤村 重文, 菅間 敬治, 斎藤 泰紀
    1999 年 38 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    過去13年間の宮城県の肺癌検診において, 喀疾細胞診で発見された胸部X線写真陰性の早期肺扁平上皮癌190例の喀象細胞標本を対象とし, スクリーニングと判定のために注目すべき所見を検討した. その結果, 細胞質の色調 (光輝性) が最も有用な所見であった症例は126例 (66.3%) と最も多かった. このうち細胞質の色調のみが判定上有用な所見であった症例は30例で, 細胞質の染色性が重要であることが示唆された. また細胞質の染色性, 特に光輝性を適切に染色するための方法について, 種々の染色法を比較検討した. その結果, OG-6, EA-50の染色時間を長くすることにより, 背景とのコントラストが鮮明になり, 細胞質の光輝性が増す傾向にあった. さらに核分別に塩酸アルコールを用い, 染色系列にリンタングステン酸液を加えた標本において良好な染色性が得られた. 染色枚数と染色性との検討では1000枚までは染色性に問題はなかった.
  • 松井 成明, 土屋 眞一, 北村 隆司, 伊藤 仁, 津田 祥子, 九島 巳樹, 塩川 章
    1999 年 38 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳腺原発扁平上皮癌5例の細胞学的検討を行った.対象症例の発症年齢は, 44歳から72歳 (平均63.0歳) と高く, 腫瘍径3cm以下が3例で比較的小さいものが多かった. 5例中4例で肉眼的に壊死や嚢胞形成を認めた. これらの細胞像は,(1) 腺癌細胞が混在しない純粋型の角化型扁平上皮癌 (1例),(2) 腺癌細胞および扁平上皮癌細胞の混在癌 (3例),(3) 個々の腫瘍細胞が扁平上皮化生細胞に類似する扁平上皮癌 (1例) の3型に分類され, これらは組織像をよく反映していた.また, 免疫組織化学的なケラチンの発現性にも差異があり,(1) では扁平上皮系ケラチン陽性, 腺系ケラチン陰性で,(2),(3) では両ケラチンの発現が認められるが,(3) では角化細胞型ケラチンは陰性であり, 細胞および組織学的所見をよく反映していた.
  • その有効性と随伴病変の把握について
    佐藤 信也, 鍋島 一樹, 大野 招伸, 日野浦 雄之, 三倉 剛, 森田 能弘, 脇坂 信一郎, 河野 正
    1999 年 38 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    頭蓋内germinomaは放射線療法がきわめて有効で, 生検による病理診断確定が重要である. 特徴的な腫瘍細胞が認められれば術中診断は容易であるが, グリオーシスや肉芽腫性炎症などの随伴病変によって診断困難な病例もある. われわれは組織学的にgerminomaと診断された12例 (術中細胞診施行9例, 内4例は同時に凍結切片を作成) の再検討を行った. 凍結切片のみによるgerminomaの診断率は50%(2/4例)であった.その診断率の低い原因は, 得られた組織が広範なグリオーシス, 類上皮肉芽腫によって占められ, 腫瘍細胞がほとんど認められなかったこと, また組織挫滅により腫瘍細胞の確定が不可能な点にあった. 組織診断上, グリオーシスは12例中8例 (66.7%), 高度の組織挫滅は2例 (16.7%), 組織球の集籏は8例 (66.7%, 2例では類上皮肉芽腫形成を伴う) と比較的高頻度に認められることを見出した.細胞診上, グリオーシスは組織学的にグリオーシスの認められた全例で観察され, 組織球の集籏, 類上皮細胞様集団も組織学的に認められた症例の約86%に認められた. しかもそれら随伴病変が強いため凍結切片のみでは診断困難であった症例も含めて全例で圧挫細胞診にて腫瘍細胞を検出し得た.
    細胞診の併用は随伴病変により診断の困難な症例で有用であり, 細胞所見から随伴病変の存在も判断し得る.
  • Chondroid patternをとる腫瘍との鑑別を含めて
    森木 利昭, 高橋 保, 和田 匡代, 植田 庄介, 一圓 美穂, 宮崎 恵利子, 橋本 真智子
    1999 年 38 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Chondroid chordomaは通常の脊索腫に軟骨様部分を伴う腫瘍であるが, 軟骨肉腫との異同を含め論議の多い疾患である. 頭頸部のchondroid chordomaの4例について, 特に軟骨様部分を中心に, 細胞像を含め病理組織学的, 免疫組織学的, 電顕的に観察した. その結果, 軟骨様部分は通常の脊索腫同様の上皮様性格を示し, 硝子様基質を伴うchordomaと考えられた. 少量の生検材料や細胞診では軟骨肉腫や軟骨様部分の多い多形腺腫との鑑別がしばしば問題となるが, cytokeratinやEMAの上皮系マーカーの証明が重要と考えられる. また, 再発を繰り返す例では他のものよりMIB-1陽性率が高く, p53蛋白陽性であり, 再発傾向や悪性度との関連が注目された.
  • 27例の検討より
    鐵原 拓雄, 有光 佳苗, 広川 満良
    1999 年 38 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    神経鞘腫の細胞学的特徴をより明らかにする目的で, 組織学的に神経鞘腫の診断が確定した27例の細胞診標本を対象に光顕的観察を行った. 腫瘍細胞は紡錘形で, Antoni A型の部からの塗抹標本では集塊状に出現しやすく, 束状配列 (20例中20例), 渦巻き状配列 (20例中15例) がみられ, 核の柵状配列 (20例中14例) やVerocay bodies (5例) なども観察された. Antoni B型の部からの塗抹では腫瘍細胞はシート状に出現していた. また, 細胞集塊内にはヘモジデリン, 膠原線維, 核線などがみられた. 腫瘍細胞の核形は類円形, 短紡錘形, 長紡錘形などさまざまであった. 細胞質は好酸性に淡く染まり, 細胞境界は不明瞭であった. 細胞質と思われる部には線維状構造物が全例にみられた. 今回の検討によりわれわれはAntoni B型の神経鞘腫の細胞学的特徴として, 細胞集塊内にヘモジデリンや膠原線維が存在することと, 腫瘍細胞のシート状配列がみられることを提唱したい.
  • 佐藤 俊作, 冨山 眞弓, 藤井 和晃, 丸山 みゑ子, 冨田 優子, 長谷川 利恵, 安達 博信, 井藤 久雄, 板木 紀久, 紀川 純三
    1999 年 38 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    老人保健事業における子宮体がん検診の内膜細胞診を実施した311例を対象に細胞診標本の精度管理の一環として, 採取材料が良好に塗抹されているか否かを明らかにする目的でセルブロック法を用いて検討した.
    セルブロック標本は, 内膜細胞診標本作製後の採取器具を切断し, 10%中性ホルマリンの入ったスピッツ内で組織片を遊離させ固定した. 3,000回転・10分間遠心し, 沈査をメッシュに入れ, 型のごとく包埋, 薄切, H-E染色を行った.
    細胞診で増殖症とした5例の精密検査結果は, 4例が増殖症であった. 細胞診, セルブロック法とも増殖症を推定した1例は, 精密検査で内膜ポリープであった.セルブロック標本で増殖症, 細胞診で陰性と診断した20例を再検討した. このうち8例の細胞診標本に増殖症を疑う所見があったが, 12例には異常所見はなかった. セルブロック標本では組織量が不十分なため, 標本不適とした症例が113例あった. このうち101例の細胞診標本では, 細胞は十分塗抹されており判定可能であったが, 12例は細胞診でも標本不適であった. 細胞診で標本不適とした症例は19例あり, このうち7例はセルブロック標本で診断可能であった.
    細胞は適切に採取されているが, 塗抹不良の症例があり, 良好な塗抹を行うことで精度が向上しうることが示唆された.
  • 別府 理子, 日浦 昌道, 野河 孝充, 川上 洋介, 千葉 丈, 山内 政之, 亀井 孝子, 万代 光一
    1999 年 38 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    今回, 右腋窩リンパ節腫大, 痺痛を主訴とし, 卵巣に原発巣を認めた1例を経験したので報告する.
    症例は, 45歳の女性. 右腋窩リンパ節腫大, 疹痛を主訴に外科を受診し, 穿刺吸引細胞診で小集塊を形成する類円型の腺癌細胞と散在する扁平上皮癌細胞を認め, 転移性腺扁平上皮癌と診断された.乳房, 消化器, 呼吸器などの臓器には異常なく, 腫瘍マーカーCA125値が217.2U/mlと高値を示したが, CA15-3値は15.5U/mlと正常域であった.骨盤部MRIで骨盤壁に接して直径5cm大の充実性腫瘤を認め, 卵巣癌IV期の診断にて手術を施行した. 摘出卵巣腫瘍の捺印細胞標本および組織標本で, 腋窩リンパ節と同様の腺房様構造を示す腺癌細胞と扁平上皮癌細胞の混在を認め, 卵巣原発の腺扁平上皮癌と診断された. その後, 末梢血幹細胞移植 (PBSCT) を併用した高用量化学療法を6コース施行したが, 残存腫瘍の急速な増大を認め, 癌性腹膜炎のため永眠した.
  • 宮川 恭一, 中村 恵美子, 内藤 ゆかり, 清水 敏夫, 木村 薫, 川口 研二
    1999 年 38 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Papillary syncytial metaplasia (以下PSM) は子宮内膜表層上皮にみられる化生の一型で, 同時に好酸性細胞・粘液産生・扁平上皮などの化生を伴うことがある. 構成細胞は合胞状となり敷石状や乳頭状増殖を示す. 核異型は弱く, 胞体は厚みをもった好酸性を示し, 扁平上皮化生を思わせる. こうした化生変化は内膜炎, 流産や内膜掻爬後, 子宮筋腫や閉経後の内膜など主に非腫瘍性内膜疾患にみられるが, 内膜癌や内膜異型増殖症にも合併することが知られている. 化生上皮に核異型がみられる病変の良悪の判定は生検組織や細胞診では時に困難なことがある. われわれは65歳のPSMを示す内膜増殖性病変を細胞診・生検で癌と確診できず2年にわたり経過観察した. 2年後摘出された子宮には高度なPSMを伴う類内膜腺癌の筋層浸潤が確認された. 術前の細胞診・生検組織の再検討から以下の点が癌を強く疑う所見と考えられた.
    1. 年齢不相応の過剰な乳頭状増殖.
    2. 深部の多層化細胞の核の大小不同, 核小体明瞭化, 不均一なクロマチン増加.
    3. 核分裂像.
    文献ではPSMを伴う内膜病変は癌とoverdiagnosisされやすいと指摘されている. しかし, 化生細胞の過剰な増殖をみる場合, 核所見を注意深ぐ観察し, 反対に過少評価に陥らないよう注意すべきである.
  • 各務 新二, 中山 剛, 白石 泰三, 矢谷 隆一
    1999 年 38 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    頸部腫瘤を契機として発見された上咽頭低分化型扁平上皮癌の1例を報告した. 症例は78歳男性で, 頸部リンパ節穿刺吸引細胞診が施行された. 細胞学的所見では, 腫瘍細胞が散在性に出現し, 細胞質はほとんどみられず裸核状で, 核は円ないし類円形で, 核縁は円滑, 一部の細胞に切れ込みがみられた. クロマチンは細顆粒状で均等に分布し, 増量は軽度で, 好酸性の大型核小体を認めた. 後に得られたリンパ節捺印ではシート状, 小集団, 喀痰標本では疎な結合性がみられたこと以外, 基本的にはリンパ節穿刺吸引材料の所見と同様で原発巣の組織像に類似していた. リンパ節穿刺吸引材料の細胞像から原発巣を推定できなかったが, 喀痰細胞診検査でも同様の腫瘍細胞がみられたにもかかわらず, 肺病変を欠くことが原発巣の確定につながった.
  • 金子 隆子, 望月 衛, 猪狩 咲子, 箱崎 半道
    1999 年 38 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    漿膜面の術中迅速擦過およびタッチスメア細胞診により確定診断に至った癌性胃幽門狭窄症の1例を報告する. 症例は57歳女性. 悪心・嘔吐を主訴に来院. 上部消化管X線, および内視鏡検査で胃幽門部限局性の全周性狭窄があった. 内視鏡下生検を含む諸検査で確定診断に至らず, 開腹術を施行. 開腹時, 胃幽門部に大きさ4×4 cm大の腫瘤があった. 同部漿膜面の迅速擦過細胞と, 滅菌プレパラートによる直接タッチスメアを採取し迅速細胞診断を行った. 両細胞診標本中には, 異型上皮細胞が細胞集塊を形成するものと, 孤立散在性に出現するものが混在していた. 異型細胞の核は腫大し, 大小不同と核形不整が目立った. 核の偏在傾向を認めた. 核クロマチンは微細顆粒状で増量し, 細胞質はライトグリーンに淡染性, レース状であった. 胃癌の漿膜浸潤と診断し, 胃亜全摘術, リンパ節郭清術を行った. 本例は, 漿膜面術中迅速擦過および直接タッチスメア細胞診の有用性を示す好例であるとわれわれは考えた.
  • 鐵原 拓雄, 広川 満良, 有光 佳苗, 福岡 恵子, 絹川 敬吾
    1999 年 38 巻 1 号 p. 76-79
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    胚細胞腫瘍の複合型である奇形癌 (胎児性癌+奇形腫) の細胞像を経験したので報告する. 患者は29歳の男性で, 8.5×7.5×8.0 cm大の右精巣腫瘍が摘出され, その捺印塗抹細胞診が行われた. 塗抹標本には胎児性癌の細胞像に一致する大型異型細胞と奇形腫の成分と思われる小型の異型性に乏しい上皮性細胞のシートが観察された. 大型異型細胞は偽乳頭状, 腺管状の集塊として, あるいは孤立散在性に出現していた. 細胞境界は不明瞭で, 細胞質はライトグリーンに淡く染色され, 顆粒状を呈していた. 核や細胞質には大小不同が目立ち, 核クロマチンは粗顆粒状で, 好酸性で不整形の核小体を1個有していた. 背景には多数の壊死物質がみられたが, 扁平上皮や毛髪, 骨成分などはみられなかった. 胚細胞性腫瘍ではいくつかの腫瘍型が混在してみられることがあるため, とくに注意深い観察が必要と思われた.
  • 鐵原 拓雄, 広川 満良, 有光 佳苗, 清水 道生, 森 俊博, 絹川 敬吾
    1999 年 38 巻 1 号 p. 80-83
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    後腹膜腫瘍の生検にて診断された精巣burned-out tumorの1例を経験したので報告する. 症例は53歳, 男性で, 後腹膜腫瘍生検材料の捺印細胞診が行われた. Diff-Quik染色標本にて大型の異型細胞と小型リンパ球の二種類の細胞がみられ, 背景には枯山水の砂礫を白色と紫色に色づけしたような, いわゆるtigroid appearanceが観察された. 摘出された左精巣には約1 mm大の疲痕化組織がみられ, burned-out tumorと診断された. Diff-Quik染色におけるtigroid appearanceの存在は, 本腫瘍の診断および悪性リンパ腫との鑑別に有用であった.
  • 関戸 恭子, 梅村 しのぶ, 望月 裕夫, 渋谷 誠, 徳山 丞, 小坂 昭夫, 安田 政実, 長村 義之
    1999 年 38 巻 1 号 p. 84-88
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳腺lipid rich carcinomaは, 泡沫状の胞体内に脂質を有するまれな乳癌である. 今回われわれは乳腺lipid rich carcinomaの1例を経験したので報告する.
    症例は54歳, 女性. 右乳房腫瘤を主訴として来院. 画像検査により悪性が疑われ, 生検にてinvasive carcinornaと診断された後, 乳房温存部分切除術, リンパ節郭清が行われた.
    迅速生検時の腫瘍割面捺印細胞診および組織診では, 泡沫状の細胞質を呈した腫瘍細胞が認められた. 泡沫状の胞体を呈している場合, 粘液, グリコーゲン, 分泌蛋白および脂質の貯留が考えられ, signet ring cell carcinorna, glycogen rich clear cell carcinoma, secretory carcinomaおよびlipid rich carcinomaを鑑別する必要がある. 本症例の特殊染色結果では, PAS反応およびA1-cian Blue染色が陰性であり, 粘液, グリコーゲンの貯留はなく, Sudan IV染色陽性で泡沫状胞体内に脂質の貯留が認められた. 以上の細胞組織学的結果から, lipidrich carcinomaと診断された.
    lipid rich carcinomaは予後不良であるといわれているので, 泡沫状の胞体を有する乳癌細胞の診断上, まれではあるが本腫瘍の可能性を念頭におく必要があると思われた.
  • 山内 友江, 亀山 香織, 草刈 悟, 阿部 仁, 内田 光子, 小川 郁, 向井 萬起男, 秦 順一
    1999 年 38 巻 1 号 p. 89-92
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    多形腺腫の穿刺吸引細胞診 (FNA) では多彩な細胞像が認められるが, 壊死物質を認めることはきわめてまれである. 今回われわれは, 広範な凝固壊死を伴った特異な多形腺腫の1例を経験した. 症例は40歳男性. 平成6年より左耳下腺部の腫瘤に気付き, 近医にて経過観察されていた. 平成9年9月頃より, 圧痛とともに腫瘤が急激に増大したため当院紹介となり, 穿刺吸引細胞診 (FNA) に引続き摘出術が施行された. FNAでは, 多量の壊死物質を背景に上皮細胞と問質細胞の大型集塊が多数, 混在して出現していた. 上皮細胞は不規則配列で強い重積性を呈し, 個々の細胞はクロマチン濃染性だが, N/C比は低く核小体は目立たなかった. 間質細胞は粘液変性を伴っているが整った配列を呈し, 異型性を認めなかった. 多量の壊死物質を認めるも上皮細胞の異型性が乏しいこと, 良性の間質細胞を多数認めることから, 多形腺腫が強く疑われた. しかし, その他の病変や悪性の可能性も否定できなかった. 摘出された腫瘍は径約3cm大で, その大部分は凝固壊死に陥っており, 残存腫瘍は被膜直下にのみ認められた. 腫瘍組織は, 充実性あるいは管状増殖を呈する細胞異型の乏しい2相性上皮成分と, 粘液腫状の問質成分が混在し, 多彩な像を呈していた. 広範な凝固壊死を伴った多形腺腫と診断された.
  • 日野 明子, 広瀬 隆則, 山田 順子, 高井 チカ子, 山口 美紀, 佐野 寿昭
    1999 年 38 巻 1 号 p. 93-97
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    鼻腔内腫瘍として発症した浸潤性下垂体腺腫を経験したので細胞所見とともに報告する. 症例は64歳, 女性. 右鼻閉感と鼻出血が出現し, 耳鼻科にて鼻腔内腫瘍を指摘された. 頭部MRIで腫瘍は蝶形骨洞を主座とし, 眼窩, 上顎洞, 筋骨洞, 鼻腔への進展が認められた. トルコ鞍は腫瘍で置換されていた. 鼻腔からの生検で神経内分泌腫瘍と診断され, 当院脳神経外科にて経蝶形骨腫瘍摘出術が行われた. 捺印細胞像では腫瘍細胞は均一で平面的に配列していた. 細胞質は豊富でライトグリーンに淡染し, 核は円形でクロマチンは細顆粒状に増量していた. 組織像では充実性もしくは索状に配列し, perivascular pseudorosetteやmicrocystがみられた. 免疫組織化学にてcytoker-atin, chromogranin A, synaptophysinが陽性で, 下垂体前葉ホルモンは陰性であった. 電顕的には神経内分泌顆粒が認められた. 以上から下垂体腺腫null cell typeと診断した. 本腫瘍は頭蓋内の良性腫瘍だが, 時に周囲の骨を破壊して眼窩や鼻腔などの頭蓋外へ進展することがあり, 悪性腫瘍と誤認しないことが大切である.
  • 原 喜与一, 松本 敏昭, 池田 善彦, 由谷 親夫, 桂 栄孝
    1999 年 38 巻 1 号 p. 98-102
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    心臓アミロイドーシスが, 持続的心嚢液貯留の一つの原因になったと考えられる症例の心嚢液細胞診像を報告する. 患者は84歳女性, 老人性アミロイドーシスで, 高血圧性脳出血で死亡した例である. アミロイドは左右心房・心室の心内膜, 心筋層, 臓側心外膜の細胞間に広く沈着していた. 心嚢液中の中皮細胞の多くは乳頭状からまりも状の細胞集塊状を呈し, これらの細胞には核小体肥大, 核形不整, 核分裂像, 多核巨細胞, 石灰化小体などを認めたが, アミロイド様物質は認められなかった. 細胞所見は反応性中皮細胞が強く疑われたが, 臨床所見より異型性の弱い中皮腫も否定できず, 以降, 死亡に至るまで約4年間同様の所見を認めた.
  • 大原 真由美, 中村 純子, 田中 ふさよ, 池谷 武彦, 萩本 美都子, 松田 実
    1999 年 38 巻 1 号 p. 103-108
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    頭部皮膚湿疹部の擦過細胞診で, Langerhans' cell histiocytosisと考えられた症例を経験したので, その細胞所見を中心に, 病理組織所見および電顕所見とともに報告する. 症例は2歳男児で, 咳および呼吸促迫と両側耳漏を主訴として近医で治療を受けていたが軽快せず, 平成8年11月中旬より呼吸困難出現のため, 済生会中津病院へ入院した. 入院時, 上記症状とともに, 多発性の皮膚湿疹, 頭部X線像にて頭蓋骨の多発性透亮像, および胸部X線像にて両肺野の嚢胞性変化が認められた. 頭部皮膚湿疹部を擦過して作成された細胞診標本には, 組織球様の細胞が孤立性または小集団を形成して出現し, 細胞質はライトグリーン淡染性で, 核の多くは円ないし類円形であったが, 腎臓形, 類三角形, 不整形も混在し, 核に湾入や溝を認める細胞もみられた. クロマチンは細頼粒状で増量は認められなかった. 病理組織標本では, エオジン淡染性の細胞質と, 円ないし類円形で時に湾入や溝を示す核をもつ組織球様細胞, すなわちLangerhans細胞の増殖がみられ, 電顕標本では, Langerhans細胞の細胞質内に, テニスのラケット状を呈するBirbeck穎粒が認められ, この顆粒が細胞膜に付着し, その内腔が細胞外に開いている所見も認められた.
  • 齋藤 緑, 今野 良, 五十嵐 司, 岡本 聡, 佐藤 信二
    1999 年 38 巻 1 号 p. 109-110
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Bcl-2 expression has been reported in a number of malignancies, and is closely associated with the grade of cervical lesions. The present study was designed to evaluate the use of immunocytochemistry for bcl-2 protein in cervical cells. We analyzed the expression of bcl-2 protein in a total of 35 exofoliative cervial smears with emphasis on the association with the grade of cytological atypia. The samples were obtained from 13 healthy women and 22 patients with cervial lesions, including 19 dysplasia (cytological diagnosis; class III), 1 carcinoma in situ (class IV), and 2 invasive squamous cell carcinoma (class V). Expression of bcl-2 was closely related with the grade of cytological diagnosis (0% in class I and I1, 63.2% in class Ill, and 100% in class IV and V). Immunocytochemistry of bcl-2 protein may be useful for prediction of the clinical course of cervical lesions.
  • 長田 憲和, 千葉 隆史
    1999 年 38 巻 1 号 p. 111-112
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    A case of undifferentiated carcinoma of the endometrium a 42-year-old woman is reported. Endometrial cytology revealed tumor cells showing small clusters or dispersed distribution. The tumor cells had almost round nuclei, fine increased chromatin, small nucleoli, and a high N/C ratio. These findings indicated undifferentiated carcinoma, although histology was not diagnostic due to massive necrosis of the tumor. Histological examination of the resected uterus confirmed the diagnosis, emphasizing the usefulness cytology.
  • 穿刺吸引細胞診所見
    望月 衛, 高橋 勝美, 江尻 晴博
    1999 年 38 巻 1 号 p. 113-114
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    We describe a rare case of cystic islet cell tumor of the pancreas diagnosed by fine needle aspiration (FNA) cytology. A 63-year-old female presented with a cystic mass, measuring 8×8 cm, in the pancreatic tail. FNA yielded cystfluid containing both isolated neoplastic cells and loosely packed cell clusters. The cells had a high N/C ratio, round nuclei, stippled nuclear chromatin, prominent nucleoli, and fine granular cytoplasm. This case suggests that a stippled nuclear chromatin pattern is one of the most important findings for distinguishing islet cell tumors from acinar cell tumors and solid and cystic tumors of the pancreas.
  • 白石 泰三, 中山 剛, 北本 正人, 中野 洋, 村田 哲也
    1999 年 38 巻 1 号 p. 115-116
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Cytologic findings of salivary duct carcinoma (SDC) of the parotic gland obtained by fine needle aspiration are described. The aspirates contained predominantly broad flat sheets and surrounding isolated cells. These were large polygonal epithelial cells with abundant eosinophilic cytoplasm, round to oval nuclei, fine granular chromatin and predominant nucleoli. Though some cells revealed intracytoplasmic lumen on histologic sections, this was inconspicuous cytologically.
    The cytologic differential diagnosis included mucoepidermoid carcinoma, oncocytic carcinoma, acinic cell carcinoma, and metastatic carcinoma. The presence of ICL has only been described in one article that demonstrated it electronmicroscopically.
  • 心嚢液細胞診所見
    望月 衛, 高橋 勝美, 細川 洋平, 江尻 晴博
    1999 年 38 巻 1 号 p. 117-118
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    We describe a case of malignant pericardial effusion as an initial presentation of well-differentiated pulmonary adenocarcinoma. A 68-year old Japanese man was brought the emergency department because of dyspnea and chest oain. An echocardiogram demonstrated the presence of a Iarge pericardial effusion. Cytological examination of the aunctuated effusion showed many cell aggregates composed of papillary cell clusters. The neoplastic cells had centrally located round nuclei, coarse granular nuclear chromatin, and abundant clear cytoplasm. Postmortem examination revealed pericardial dissemination of pulmonary adenocarcinoma. We suggest that the morphological variety of cells is an important finding to help distinguish pulmonary adenocarcinoma from malignant mesothelioma.
  • 堀岡 良康, 辻 求, 森川 政夫, 荒木 徹也
    1999 年 38 巻 1 号 p. 119-120
    発行日: 1999/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    The imprint cytologic features of malignant peripheral nerve sheath tumor (MPNST) are reported. The patient, a 40-year-old woman, with von Recklinghausen's disease noticed a gradually enlarging subcutaneous nodule on the right shoulder. CT revealed the nodule was a tumor, measuring 9 cm in diameter. The imprint smear of the surgically resected tumor consisted of loosely cohesive groups of spindle-shaped cells and isolated cells. Most of the tumor cells had fusiform nuclei with coarse granular chromatin and indistinct, fibrillary cytoplasm, including cells with twisted nuclei and comma-shaped cells. Moreover, some isolated cells showing large and pleomorphic nuclei with granular chromatin and a few multinucleated cells were found. Intranuclear vacuoles were occasionally observed in these anaplastic cells. Histologic sections demonstrated swirling and interlacing fascicle patterns of spindle-shaped cells. Multinucleated and pleomorphic cells with intranuclear vacuoles were also found around the necrotic areas in the tumor. The majority of the tumor cell were positive for S-100 protein immunostaining.
  • 1999 年 38 巻 1 号 p. e1
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
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