中国地区7施設の共同研究により, 昭和57年6月から1年間にわたり, 感染を伴つた褥瘡, 下腿潰瘍などの慢性皮膚潰瘍を対象に, gentamicin sulfate creamを対照薬とする二重盲検法により, T-107の臨床評価を行つた。解析対象例はT-107群45例, gentamicin群41例であつた。解析には
χ2検定, Fisherの直接確率および平均順位法によるWilcoxon検定を用いた。解析の結果, 細菌の推移についてT-107群とgentamicin群の有効率を比較すると,
P. aeruginosaでは81.8%(9/11)対76.2%(16/21),
Staphylococcus sp., 68.0%(17/25)対50.0%(8/16),
Streptococcus sp., 72.7%(8/11)対57.1%(4/7)と, 両群間に有意差は認められなかつた。総合的な抗菌効果および総合判定についても有意差は認められず, また, 薬剤の使用に起因すると思われる臨床検査値の異常, 副作用の発現は, まつたく認められなかつた。以上の結果から, 褥瘡などの慢性皮膚潰瘍に対して, T-107はgentamicin sulfateと同等の抗菌力と治療効果を有する安全な薬剤であることが認められた。
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