西日本皮膚科
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58 巻, 2 号
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図説
症例
  • 村上 義之
    1996 年 58 巻 2 号 p. 197-199
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    アルストロメリアとキクの両者による接触性皮膚炎を生じた1例を報告した。初診10ヵ月前より家業である花屋を手伝うようになり, 平成7年3月頃に顔面, 前腕, 手などの露出部に痒性皮疹を生じ当科受診。アルストロメリアとキクの花, 葉, 茎による貼布試験が陽性であり, 本症と診断した。
  •  
    辻田 淳, 中村 恭子, 安元 慎一郎, 上野 安孝
    1996 年 58 巻 2 号 p. 200-202
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    55歳と46歳の女性に発症したpacemaker dermatitisの2例を報告した。ペースメーカー植え込み術を施行され5年から10年を経過した後に, 植え込み部皮膚の萎縮, 色素沈着, 潰瘍形成がみられた。1例においてゴムの成分であるtiuram mixに対するパッチテストで陽性反応が認められた。治療として, 2例ともペースメーカーをpolytetorafluoroethylene sheetにて被覆後再挿入を行い, 比較的良好な結果が得られた。Pacemaker dermatitisは体内式心臓ペーシングにともなう合併症として重要と考えた。
  • 廣田 洋子, 武藤 正彦, 濱本 嘉昭, 廣田 徹, 麻上 千鳥
    1996 年 58 巻 2 号 p. 203-206
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    33歳の女性。皮膚アレルギー性血管炎の治療経過中に左卵巣未熟奇形腫の合併を指摘され, 腫瘍切除後に皮疹が消退し再発をみない1例を報告した。初診時, 両下肢に米粒大の浸潤性紅斑が多発し全身倦怠感強く, 膝, 足関節痛が認められ歩行困難な状況であった。病理組織学的に真皮全層から脂肪織にかけて細血管のleukocytoclastic vasculitisが認められた。薬剤内服の既往なく, 細菌によるアレルギー反応をおこしうる感染病巣も検出されなかった。原因検索中に卵巣腫瘍を指摘され, 当院婦人科にて腫瘍摘出術施行。以後, 皮疹の新生をみず1年経過した。血清AFP(α-fetoprotein)は術前高値(184.7ng/ml)であったが, 術後から現在まで正常値範囲内(23.3ng/ml)である。AFPは摘出した卵巣未熟奇形腫中に免疫染色にて確認でき, 腫瘍細胞が産生したものと考えられた。
  • 新山 史朗, 坪井 廣美, 橋本 明彦, 浅井 俊弥, 勝岡 憲生
    1996 年 58 巻 2 号 p. 207-211
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    30歳の男性。掌蹠に紅斑が初発し病初期は異汗性湿疹, その後膿疱が新生したことより掌蹠膿疱症と診断されていたが, 体幹に皮疹が拡大した時期の病理組織学的所見より好酸球性膿疱性毛嚢炎の診断にいたった症例を経験した。インドメサシン, 塩酸ミノサイクリン内服にて膿疱は消失し紅斑も軽快した。また, これまで当科で経験した好酸球性膿疱性毛嚢炎の22例について集計した。最近経験した1症例についてweak androgenを測定したところ高値を示した。治療経過においてインドメサシン内服が最も有効で, 大部分の症例で内服開始後数日で皮疹は改善した。しかし減量, 中止の過程で殆どの症例が再燃し, 数ヵ月から数年症状が持続している。
  • 竹下 弘道, 桐生 美麿
    1996 年 58 巻 2 号 p. 212-214
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    61歳の男性の右下腿に生じた増殖性筋膜炎を報告した。腫瘤は紡錘形の線維芽細胞様細胞の瀰漫性増殖からなり, 神経節細胞類似の巨細胞を多数認める特徴的組織像を呈していた。免疫組織化学的検索によって, 増殖紡錘形細胞はビメンチン陽性, 神経節細胞様巨細胞の一部もビメンチン陽性所見が得られたが, 両者ともにリゾチーム, S-100蛋白, ミオグロビン, 第VIII因子関連抗原などは陰性であった。なお, 自験例は多発性血管脂肪腫を併発しており, 基礎疾患として慢性リンパ球性白血病が存在していたが, 本症との関連は明らかではない。本症は完全に摘出された場合に再発はなく, 自験例も全摘出術施行後再発を認めていない。
  • 奥田 由香, 磯田 美登里
    1996 年 58 巻 2 号 p. 215-218
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    40歳の女性のSLEの1例を報告した。初診時, 両肘, 膝, 背部, 臀部に多形滲出性紅斑様の皮疹を認めた。病理組織学的には真皮全層にわたり好中球を主体とした結節状の細胞浸潤, 血管壁の肥厚, 腫大が認められた。ステロイド剤内服による治療にて皮疹は改善したが, 減量時, 手指に滲出性紅斑が出現した。病理組織学的には, 初診時と同様に血管周囲性の好中球を中心とした細胞浸潤であり, 核破砕片を伴った, いわゆるleukocytoclastic vasculitisの像であった。
  • 赤木 竜也, 出来尾 哲, 地土井 襄璽
    1996 年 58 巻 2 号 p. 219-222
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    多発性陰嚢粉瘤症の2例を報告し, 合わせてその石灰化の機序について考擦した。症例1: 47歳の男性。1年半前に陰嚢の右側に小腫瘤が集簇しているのに気づき, 放置していたところ次第に増大してきた。症例2: 59歳の男性。4∼5年前から陰嚢に小腫瘤が4個生じているのに気づいていたが放置していた。大きさにとくに変化はなかった。症例1, 2とも全摘後の病理組織学的検査では類表皮嚢腫であった。嚢腫内容物のフォンコッサ染色では症例1はほとんど染色されなかったのに対し, 症例2では黒染する部分が多くみられ石灰沈着巣の存在が考えられた。アルシアンブルー染色, コロイド鉄染色で症例1は陰性であったが, 症例2では陽性であった。またトルイジンブルー染色で症例1はメタクロマジー陰性, 症例2ではメタクロマジー陽性であった。これらのことは, 症例1では酸性ムコ多糖が存在しなかったのに対し, 症例2では硫酸基を有する酸性ムコ多糖が存在したことを示し, 石灰沈着と硫酸基を有する酸性ムコ多糖の関与が強く示唆された。
  • 松永 若利
    1996 年 58 巻 2 号 p. 223-226
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    ポートワイン母斑が顔面, 頭部に存在する場合には思春期頃より, その一部が結節状に肥大してくることがある。このことは患者にとって非常にやっかいな問題である。最近, 顔面のポートワイン母斑が著明な増殖をきたした47歳の男性を手術する機会を得た。その臨床所見や病理組織学的所見に考察を加え, 肥大化の要因としては必ずしも日光の影響だけでなくポートワイン母斑内に存在する動静脈吻合血管の増殖, 肥大も関係するものと考えた。
  • 前田 啓介
    1996 年 58 巻 2 号 p. 227-229
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    症例は56歳の女性。平成6年8月頃に手足のしびれ感, 下腿浮腫が出現。同年10月には肝·脾腫大, 胸水, 腹水, 蛋白尿などが出現し, 当院内科へ入院となった。精査により多発神経炎, 臓器腫大, 浮腫, 皮膚症状があり, Crow-Fukase症候群と診断された。皮膚症状として, 色素沈着, 浮腫, 血管腫, 魚鱗癬を認めたが, 硬化や多毛は認めなかった。躯幹の血管腫の病理組織学的所見では, 結節の上方の真皮上層では1層の内皮細胞からなる拡張した血管腔が多数認められたが, 結節の下方では未熟な血管腔とその周囲に内皮細胞の増殖が目立つ所見を呈していた。また血管内皮細胞の間隙には円形のエオジン好性物質の沈着を認めた。多発性神経炎が種々の治療に抵抗したため血漿交換療法を行ったところ, 神経症状の改善と共に血管腫の縮小を認めた。縮小した血管腫は拡張した血管腔が主体であり, 血管内皮細胞の増殖は治療前と比較して軽度であった。
  • 倉田 佳子, 武藤 正彦, 中野 純二, 廣田 徹, 麻上 千鳥
    1996 年 58 巻 2 号 p. 230-232
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    77歳の女性の上背部segmental neurofibromatosis(Riccardi 5型)のneurofibromaから生じたneurofibrosarcomaの1例を報告した。出生時より上背正中部より左側に, 半米粒大の無数の点状褐色斑の集簇と数個の米粒大の丘疹の混在した局面があった。同部が急速に増大して腫瘤となり, 発赤, 疼痛を伴ってきた。病理組織学的に点状褐色斑は扁平母斑, 米粒大の丘疹はneurofibroma, 急速に増大した腫瘤はneurofibrosarcomaとそれぞれ診断した。腫瘤部腫瘍細胞は楕円形から紡錘形の核を有する異形性のある腫瘍細胞からなり, S-100蛋白陽性。腫瘤部辺縁部ではneurofibroma様の像を, 中央部ではneurofibrosarcomaとneurofibromaの腫瘍細胞が混在した像が認められた。したがって本症例のneurofibrosarcomaはsegmental neurofibromatosisのneurofibromaから発生したと考えられた。
  • —電顕的観察を中心に—
    萱場 光治, 石井 寛, 後藤 由美子, 成澤 寛, 幸田 弘
    1996 年 58 巻 2 号 p. 233-236
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    56歳の男性のレックリングハウゼン病患者の右前胸部に生じた悪性神経鞘腫の1例を報告した。腫瘍は手拳大の大きさで病理組織学的には一部にstoriform-patternをとる異型性の強い紡錘形から卵円形の細胞で構成され, 多数の分裂像, bizarre細胞を認め一見悪性線維性組織球腫を思わせた。しかるに, S-100蛋白染色陽性, NSE染色陽性, また電顕像で基底膜を認めたことから悪性神経鞘腫と診断した。術後に化学療法2クール施行し現在経過観察中である。
  • 窪田 正昭, 石黒 和守, 柳原 誠, 上田 恵一, 青山 文代
    1996 年 58 巻 2 号 p. 237-240
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    80歳の男性の頭部に黒色腫瘤と淡紅色腫瘤からなる疣状の腫瘍を認めた。病理組織学的に黒色部は外毛根鞘腫, 淡紅色部は増殖性外毛根鞘性腫瘍であった。増殖性外毛根鞘性腫瘍の腫瘍細胞の中に異型細胞と核分裂像を示す細胞が認められ, 異型細胞は抗PCNA抗体に陽性反応を示し, 悪性化が疑われた。悪性化に伴って細胞膜の糖蛋白や糖脂質の糖鎖構造が変化することが知られているため, 外毛根鞘腫と増殖性外毛根鞘性腫瘍と正常毛包のレクチン結合性を免疫組織化学的に検索した。その結果, 増殖性外毛根鞘性腫瘍と正常毛包の間には染色性に明らかな差異が認められたが, 増殖性外毛根鞘性腫瘍と外毛根鞘腫の間には差異が認められなかった。
  • 栗田 佳和, 平岩 厚郎, 日比 泰淳, 磯部 英一, 鳥居 修平
    1996 年 58 巻 2 号 p. 241-244
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    多発性胃癌, 多発性結腸癌の既往歴と内臓悪性腫瘍の家族歴があり, 顔面と頭部に脂腺腺腫が多発したMuir-Torre症候群の64歳の男性例を報告した。また現在までに本邦で報告されているMuir-Torre症候群8例とあわせて文献的考察を加えた。
  • 安西 三郎, 園田 忠重, 山本 淳子, 片桐 一元, 板見 智, 高安 進, 加島 健司
    1996 年 58 巻 2 号 p. 245-248
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    Sézary症候群の1例を報告した。43歳の女性, 約4年前に両手掌にそう痒性皮疹が出現し徐々に全身に拡大, 紅皮症状態となった。入院時, 全身に潮紅と鱗屑を認め頸部, 腋窩, 鼠径リンパ節を累々と触知した。末梢血液検査所見では白血球数84680/mm3と著明に増加し, CD4陽性細胞優位であった。電顕的に末梢血, 皮膚, リンパ節に脳回転様核を有するリンパ球を確認した。Sézary症候群と診断しメソトレキセート, プレドニゾロンの低量療法(MP療法)を行った。治療開始約1年後には白血球数はほぼ正常となり表在リンパ節もほとんど触知しなくなった。MP療法は比較的有効と考えられたが, 汎血球減少の出現によりメソトレキセートを中止したところ皮膚腫瘤の出現, リンパ節の腫脹を認め, LDHは急速に上昇, 全身状態が悪化し発病約6年後に死亡した。死亡時の胸水よりCD30陽性の大型異型細胞を認めた。
  • 平 嘉世, 大坪 東彦, 龍 誠治, 成澤 寛, 幸田 弘, 高橋 雅弘
    1996 年 58 巻 2 号 p. 249-251
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    71歳の男性の膝蓋部に生じたクロモブラストマイコーシスの1例を報告した。左膝部に暗紅色の疣状局面があり, 鱗屑のKOH直接鏡検で褐色の大型胞子を認めた。病理組織, 分離された菌の真菌学的所見よりFonsecaea pedrosoiによるクロモブラストマイコーシスと診断した。外科的切除, イトラコナゾールの内服により治癒した。
  • 杉本 理恵, 加藤 卓朗, 西岡 清
    1996 年 58 巻 2 号 p. 252-254
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    家庭塵埃から白癬菌を分離することによって, 家庭外で感染したと断定し得る小児白癬3例について報告した。症例1は11歳の男子の足白癬であり, 臨床材料の培養は不成功であったが, 塵埃からT. mentagrophytesが分離された。症例2は5歳の男子のT. rubrumによる体部白癬であり, 塵埃からもT. rubrumが分離された。症例1, 2とも治療後は塵埃から白癬菌はまったく分離されず, 家庭内同居人に白癬罹患はなく, 患者は家庭外で感染したものと思われた。症例3は11歳の男子のT. rubrumによる足白癬であり, 父親にも足白癬があったが, T. mentagrophytesによるものであった。塵埃からもT. rubrum, T. mentagrophytesが分離されたが, 治療後は患者の原因菌であるT. rubrumの集落数が著明に減少し, 同居人にT. rubrumによる白癬感染はなく, この患者も家庭外で感染したものと思われた。症例1, 2では剣道, 空手, 水泳などの家庭外活動を行っており, 小児の生活様式の多様化に伴い最近では家庭外で白癬に感染する機会が増加していると考えられた。
  • 小宅 慎一, 大井 綱郎, 古賀 道之, 芹澤 博美
    1996 年 58 巻 2 号 p. 255-258
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    40歳の男性。平成元年1月に梅毒感染の機会があった。同年8月頃に左前腕に紅色の皮疹が出現し, その後両上肢, 躯幹に拡大した。皮疹出現時より全身倦怠感あり。放置していたが症状が軽快しないため10月31日当科初診。両上肢, 躯幹に紅色で小豆大∼示指頭大の扁平隆起性丘疹が多発していた。血液生化学検査で肝機能障害を認めた。血沈の亢進も認めた。病理組織学的には弾性線維の変性とそれを多核巨細胞が貪食する像(elastophagocytosis)を認めた。臨床症状より梅毒が疑われたため梅毒抗体価を測定したところTPHA法10240倍, ガラス板法512倍であった。梅毒抗体価の上昇, 臨床症状より第2期梅毒と診断した。サワシリン®(amoxicillin)1500mg/day投与により皮疹, 肝障害は改善し, その後症状の再燃はない。梅毒の際には多彩な組織所見を呈することが知られているが自験例のようにelastophagocytosisを認めたとの報告は調べ得た限りなくきわめて稀と思われた。
  • —治療経過中における特異抗体価の変動—
    並里 まさ子, 小原 安喜子, 川津 邦雄, 和泉 眞蔵, 小川 秀興
    1996 年 58 巻 2 号 p. 259-263
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    長期治療にもかかわらず活動的ならい腫型らいの病像を呈した症例を報告する。患者は初回再発の後に光田反応が陰転, その後2回目の再発を来した。初診時の生検で未治療のらい腫らいに特徴的な桿状の菌を多数認め, それまで使用されていたDDSとrifampicinの効果に疑問が持たれた。Ofloxacine(OFLX)とclindamycine, 後にOFLXとminocyclineの併用に変更した。約1年半後に臨床症状, 菌形態指数の著明な改善がみられた。その時消退傾向にあるらい腫を生検し, 顆粒状に破壊された菌を認めた。治療経過中, 重度のらい反応はみられず, 主としてthalidomideの間欠的な投与のみにて対応できた。また経過を追って, らい菌特異的なphenolic glycolipid-I(PGL)と, 抗酸菌特異的なlipoarabinomannan-B(LAM)に対するIgG, IgM抗体をELISA法にて測定した。これらは臨床症状の改善とともにいずれも低下したが, とりわけPGL-IgMの低下が著明であった。これら抗体価の測定は, とくにらい腫型らいにおいては菌指数, 菌形態指数とともに有力な治療の指針となりうると考えられた。
研究
  • 山本 貴昭, 佐藤 悦郎, 堀川 尚嗣, 原 洋一
    1996 年 58 巻 2 号 p. 264-270
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    ウサギ耳介実験的褥瘡モデルを作製し, 新規プロスタサイクリン誘導体, SM-10902含有軟膏の創傷治癒促進作用について検討した。ウサギ耳介に400g/cm2の圧力で1日9時間, 3から4日間繰り返し加圧することで実験的褥瘡モデルを作製した。本病態モデルは加圧部位の皮膚組織が壊死, 剥離などをきたし, その後一部は穿孔にまでいたる病巣を生じた。本病態モデルにおいて, SM-10902の1, 10および100μg/g含有軟膏は濃度依存的に経日的な創面積の縮小および完治動物例数率の増加をもたらした。正常皮膚および損傷皮膚に塗布したSM-10902, 10および100μg/g含有軟膏はいずれにおいても皮膚血流量を上昇させ, 損傷皮膚では1μg/g含有軟膏塗布でも皮膚血流量上昇作用が認められた。一方, 損傷皮膚に塗布したSM-10902, 100μg/g含有軟膏は全身血圧にまったく影響を与えなかった。以上の結果から, 本モデルは実験的褥瘡モデルとして有用であり, 新規安定プロスタサイクリン誘導体, SM-10902含有軟膏は本モデルにおいて創傷治癒促進効果を有し, その効果には塗布した部位の局所皮膚血流改善作用が寄与していることが示唆された。さらにSM-10902含有軟膏は全身作用を示すことなく外用剤として臨床的にも褥瘡および末梢循環不全に伴う皮膚潰瘍に優れた効果を発揮するものと考えられた。
  • 田尻 雅夫
    1996 年 58 巻 2 号 p. 271-277
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    1. 炎症性苔癬化局面での臨床的有効性をもとにW/O型尿素軟膏の経皮吸収促進作用を生検材料40検体から組織学的に細胞数を数値化して評価した。2. 5%W/O型尿素軟膏0.05%トリアムシノロン(TC)軟膏(W/O型尿素軟膏と0.1%TC等量混合による)はアトピー性皮膚炎, 貨幣状皮膚炎ならびに乾癬の紅斑, 苔癬化局面を消褪させた。3. 細胞数の数値化はこれら疾患での治療前と軟膏塗布3日後, 7日後および20日後に塗布部ならびに無疹部よりそれぞれ生検し, HE染色標本を鏡検し算出した。4. 表皮角化細胞数では塗布7日後の5%W/O型尿素軟膏0.05%TC軟膏は0.05%TC軟膏とW/O型軟膏のいずれとも有意(P<0.01)に減少させていた。0.1%TC軟膏とは差はみられず同等に減少させていた。5. 真皮リンパ球数では塗布20日後の5%W/O型尿素軟膏0.05%TC軟膏は0.1%TC軟膏, 0.05%TC軟膏および10%W/O型尿素軟膏のいずれとも有意(P<0.01)に減少させていた。6. 塗布後の真皮のリンパ球数の減少はW/O型尿素軟膏がステロイドの真皮内への吸収量を増大させた結果ステロイドの作用増強の可能性が考えられた。
  • 王 黎曼, 峰下 哲, 宮下 英夫
    1996 年 58 巻 2 号 p. 278-280
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    43例のベーチェット病患者におけるプロトロンビン時間(PT), 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT), フィブリノーゲン(FIB)及び血小板凝集能(ADP, コラーゲン, エピネフリン)を測定した。PT及びAPTTは対照の健常人に比し, いずれも正常範囲を示し, 活動期の症例ではAPTTは統計的に有意ではないが高値を示す傾向があった。FIBは対照の健常人に比し, 384.3mg/dlと高値を示し有意差がみられ, とくに活動期の症例では著明な増加を示し(420.3mg/dl), 寛解期との間に有意差が認められた(P<0.05)。またコラーゲン凝集率の平均値は64.9%と上昇傾向を示した。活動期にある20例では血小板凝集能の異常例は20%であった。この結果によりベーチェット病の病態は血液凝固能亢進および血小板凝集能亢進, 活動期における血漿FIB値の上昇と強く関与していることが示唆された。
  • 清川 千枝, 蜂須賀 裕志, 森 理, 森田 美保子, 笹井 陽一郎
    1996 年 58 巻 2 号 p. 281-283
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル 認証あり
    Bcl-2遺伝子は濾胞性リンパ腫に共通の14番と18番染色体との転座における18番染色体切断面から分離された遺伝子である。今回, このbcl-2遺伝子と表皮および上皮性腫瘍の分化との関連について免疫組織化学的に検索を行った。基底細胞上皮腫, 有棘細胞癌, 尋常性疣贅, 老人性疣贅, 母斑細胞性母斑のAMeX固定およびホルマリン固定標本を作成し, ホルマリン固定標本のみマイクロウェーブ処理を行った。正常皮膚では基底層にbcl-2が強く染色され, また脂漏性角化症, 尋常性疣贅でも基底層に陽性反応を認めた。基底細胞上皮腫では腫瘍巣内に瀰漫性にbcl-2蛋白を認めた。有棘細胞癌ではほとんどの腫瘍細胞は陰性であった。以上の結果よりbcl-2の発現は表皮細胞の分化に関与していると考えた。
講座
統計
  • —皮膚科外来におけるMRSA感染症の特徴—
    岡原 佳代, 堀内 賢二, 鬼村 賢太郎, 矢村 宗久
    1996 年 58 巻 2 号 p. 292-295
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    1993年1月より1994年8月までの間に当院で分離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)139株の分離状況, コアグラーゼ型, 薬剤感受性について検討した。分離状況では外来症例(66株, 47.5%)が約半数を占め, その中でも皮膚科外来(23株)の症例が最も多かった。外来症例では薬剤感受性が比較的保たれたコアグラーゼIV型株(39.4%), III型株(18.2%)が多く分離され, 入院症例(73株)では多剤耐性型のコアグラーゼII型株(84.9%)が高率に分離された。皮膚科外来の症例は半数以上が乳幼児症例(13例)で, コアグラーゼIV型株によるせつ, せつ腫症および癰(10例), 主にコアグラーゼIII型株による伝染性膿痂疹(9例)が多かった。特に乳幼児におけるせつまたは伝染性膿痂疹ではMRSA感染症を念頭におく必要があると思われた。
治療
  • OPC-7251研究会
    1996 年 58 巻 2 号 p. 296-304
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    1%ナジフロキサシンクリームの細菌性皮膚感染症に対する有用性を検討するため, 毛包炎および尋常性毛瘡患者78名を対象に多施設オープン試験を実施した。その結果, 臨床症状の発赤, 腫脹, 紅色丘疹·膿疱は投与4日後より改善が認められ投与7日後の全般改善度は治癒44.5%, 改善36.5%で改善以上81.0%となり有効率(有効以上)は81.0%(63例中51例)であり, 副作用は76例中1例(1.3%)に軽度のそう痒が認められた。有用率(有用以上)は81.0%(63例中51例)であった。
  • 埼玉県皮膚科研究会
    1996 年 58 巻 2 号 p. 305-313
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    抗アレルギー剤あるいは抗ヒスタミン剤で治療してもコントロールが十分でない難治性蕁麻疹109例を対象としてダレン®(フマル酸エメダスチン)の4mg/日, 4週間以上の投与による有効性, 前治療薬との比較, 安全性, 有用性を検討した。投与2週間後までは単独投与とし, 3週間以降は抗アレルギー剤および抗ヒスタミン剤の併用は可とした。投与3週以降に併用治療を行った症例は8例であった。2週後および終了時に最終全般改善度, 前治療薬との比較, 概括安全度, 全般有用度の採用例はそれぞれ94例, 57例, 108例, 95例であった。終了時の最終全般改善度は「中等度改善以上」で, 86.2%(81例/94例)であった。終了時での前治療薬との比較(全般的比較)では「前治療薬に比較してやや優れる以上」が80.7%(46例/57例)であった。終了時概括安全度は「全く安全である」は, 90.7%(98例/108例)であった。副作用は11例に発現し, 症状は主に眠気で8例であった。終了時全般有用度は「有用以上」が84.2%(80例/95例)であった。以上の結果より, ダレンは難治性慢性蕁麻疹に対して有用な治療薬であると考えられた。
  • KP-SS研究班
    1996 年 58 巻 2 号 p. 314-318
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    シラミ症85症例に対して0.4%フェノトリンシャンプー剤をアタマジラミには1回の使用量10∼20mlを頭髪に, ケジラミには3∼5mlを陰毛に用い, 5分後に洗い流すことを3日間隔で3∼4回繰り返し, その臨床効果を検討した。有効性の評価対象例数はアタマジラミ症63例, ケジラミ症12例であり, 前者で4回以内使用後で中等度改善以上の有効率は92.1%, 後者では100%で合わせて93.3%であった。使用に際して刺激性などの副作用は全例で認められなかった。使用前後での臨床検査値の変動も正常範囲内であり, 採血後検査までの時間的経過による溶血例を除き, 異常値を示したものは無い。有用率もアタマジラミ症で92.1%, ケジラミ症で100%, 両者合わせて93.3%と高い有用率を示し, シラミ症に対しフェノトリンシャンプーは有用であると考えた。
  • 小野 一郎, 郡司 裕則, 舘下 亨, 金子 史男, 滝口 好彦
    1996 年 58 巻 2 号 p. 319-329
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    形成外科手術後の縫合創や比較的小範囲の浅い潰瘍創, 熱傷創に対して日東電工社製の薄手タイプのhydrocolloid被覆材, HCD-02を用いて治療した結果, 本被覆材による治療は容易, 簡便で創傷治癒も良好な結果を示すとともに, 疼痛軽減効果の点で優れていることが明らかとなった。また, 接触性皮膚炎や高度の感染などの副作用は認められずその安全性は高かった。その結果, 縫合創で最終評価としては全般改善度が中等度改善以上86.6%, 概括安全度はほぼ安全以上が100%, 有用性では有用以上が88.0%であった。また皮膚潰瘍創でも同様な結果であり, 全般改善度の中等度改善以上は82.2%, 概括安全度は全例がほぼ安全以上であり, 有用性評価は有用以上84.4%であった。本被覆材は製品の色調が淡茶色で整容的な立場からも術後洗髪, シャワーが可能であるという点でも優れており使用感でも8割以上が優れているとの評価であった。一方, 副作用はまったく認められず従来のガーゼ, 軟膏を主体としたdressing法に比較し, この点でも優れていると考えられた。このように本被覆材の有用性, 安全性はきわめて高いと考えられる。一方貼付後の表皮化, 創癒合が迅速に進むのみならず術後の瘢痕形成も軽度であることも明らかとなり, この面からみた有用性もきわめて高いものがある。このように本被覆材は縫合創, 局所皮弁の手術創の被覆材, あるいは比較的小範囲の浅い潰瘍創の治療材料として優れた製品であると考えられる。
  • 前田 学, 高木 肇, 清島 真理子, 中谷 明美, 北島 康雄, 藤広 満智子, 桑原 まゆみ, 鷲見 烈, 長谷川 核三, 伊藤 隆
    1996 年 58 巻 2 号 p. 330-336
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    重曹およびミョウバンを主成分とする入浴剤において, オーツ麦エキスの効果を検討するためにオーツ麦エキスを除いた入浴剤を対照として臨床試験を行い以下の結果を得た。1. 汗疹の患者43例に両入浴剤を1週間使用させたところ(被験入浴剤23例, 対照入浴制20例), 『そう痒』, 『紅斑』, 『丘疹·小水疱』において両者とも有意な改善が認められた(Wilcoxon符号順位検定, P<0.01)。2. 汗疹の患者においては試験後に両入浴剤を比較したところ, 『そう痒』, 『紅斑』において被験入浴剤使用群の方が, 対照入浴剤使用群に比し有意に症状は軽減した(χ2検定, P<0.05)。また『全般改善度』, 『有用性』において被験入浴剤の方が, 対照入浴剤に比し有意に優れていた(χ2検定, P<0.01)。3. 小児アトピー性皮膚炎の患者34例に両入浴剤を2週間使用させたところ(被験入浴剤20例, 対照入浴剤14例), 『そう痒』, 『紅斑』, 『丘疹·小水疱』, 『糜爛』, 『乾皮症』, 『鱗屑』, 『浸潤·肥厚』において両者とも有意な改善が認められた(符号順位検定, P<0.01, 対照入浴剤の『乾皮症』のみP<0.05)。また, 入浴剤試験後の各症状および『全般改善度』, 『有用性』において両入浴剤間に有意な差は認められなかった。
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