日本臨床細胞学会雑誌
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36 巻, 6 号
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  • 丸田 淳子, 野口 志郎, 山下 裕人
    1997 年 36 巻 6 号 p. 563-567
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    甲状腺疾患における石灰沈着, 特に砂粒体の出現頻度およびその有用性を検討した. 乳頭癌495例, 濾胞癌60例, 髄様癌3例, 濾胞腺腫730例, 腺腫様甲状腺腫628例, 慢性甲状腺炎33例, 亜急性甲状腺炎4例において, 粗大な石灰沈着の頻度は, それぞれ40%, 36%, 33%, 13%, 18%, 15%, 0%であった. 砂粒体の頻度は, それぞれ42%, 5%, 0%, 2%, 4%, 15%, 0%であった. 乳頭癌の砂粒体は, 乳頭状構造部で数多く, 濾胞構造部では少なかった. 砂粒体の細胞診での出現は乳頭癌のみで, 頻度は21%であり, 乳頭状構造優位型は濾胞構造優位型に比して高頻度であった (x2-test P =0.001). 原発巣に砂粒体を認めた乳頭癌の92例 (45%) は周囲の正常甲状腺組織にも砂粒体を認めた. 原発巣に砂粒体のないものは正常甲状腺組織にもなかった. 砂粒体を認めた乳頭癌および濾胞癌では209例中114例 (55%) に腺内播種を認めた. 周囲正常組織に砂粒体がある92例では, 10ヵ所以上の腺内播種は43例 (47%) と高頻度であった. 所属リンパ節郭清を行った乳頭癌425例では, 砂粒体陽性例のリンパ節転移数は8.0±0.7個であり, 陰性例の4.3±0.4個のおよそ2倍であった (Wilcoxon-test P<0.0001). 所属リンパ節転移は, 年齢と相関し, 若年および高齢者の症例で多かった (二次回帰分析P<0.0001). 砂粒体は40歳以下 (x2-test P<0.0001), 71歳以上 (x2-test P=0.05) の症例で有意に多かった. 砂粒体は乳頭癌の指標であるばかりでなく, 腺内播種や所属リンパ節転移の指標にもなりうる可能性がある.
  • 佐藤 雅美, 斎藤 泰紀, 鈴木 隆一郎, 関本 信, 岩波 洋, 高島 力, 中嶋 隆太郎, 藤村 重文, 金子 昌弘
    1997 年 36 巻 6 号 p. 568-575
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    「肺癌個別検診における喀疾細胞診の実施状況および精度管理に関するアンケート調査」と「肺癌集団検診における喀疾処理施設での精度管理に関するアンケート調査」とを合わせて施行した. 個別検診受託10医師会での喀疾容器配布数は平均1387個, 高危険群の比率は平均61.8%で癌発見率は受診者10万対平均72であった. D, E判定の調査結果の把握はすべての医師会で行われていたが, C判定の追跡検査結果の把握が不十分な医師会がみられた.また, 精査結果の喀疾判定施設への連絡は半数の医師会でなされておらず, また, 胸部X線発見肺癌で喀疾細胞診の見直しを求めている施設は1医師会のみであった. 喀疾処理施設へのアンケート結果からは, 受診者10万対133の肺癌が発見された. スクリーナーの業務分担別に癌発見率を比較すると, 呼吸器専任とした施設で癌発見率が高い値を示していた. また, 精査結果の把握が完全に可能な施設は45%であった. 両者へのアンケートを通じて, 精度管理は比較的良好に行われていたが, 精査結果の把握および喀疾処理施設への連絡が不十分なため, 癌発見例の当該年度および過去の細胞像の検討が十分には行い得ない施設が散見され, 精度管理上, 改善の余地が示唆された. また, 受診者10万対癌発見率150以上, 喀疾発見肺癌におけるX線無所見肺癌の比率50~60%以上を検診における喀疾細胞診の当面の目標値と設定し, これを下まわる場合には, 徹底した精度管理を要するとして対応する必要があると考えられた.
  • ヒアルロン酸結合蛋白を用いた細胞化学染色
    三浦 弘守, 宇月 美和, 一迫 玲, 澤井 高志
    1997 年 36 巻 6 号 p. 576-582
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    ヒアルロン酸と特異的に結合するヒアルロン酸結合蛋白 (以下HABP) にビオチンを標識して細胞化学染色を行い, 反応性中皮細胞の性質および悪性中皮腫と腺癌細胞との鑑別への有用性を検討した. 症例は心嚢水, 胸水, 腹水など合計42例で内訳は悪性中皮腫3症例 (上皮型2例, 混合型1例), 腺癌22症例 (肺癌10例, 乳癌8例, 胃癌2例, 膵臓癌1例, 胆管癌1例), 非癌例17症例である. 結果は悪性中皮腫では3症例中3症例 (100%) が陽性を示し,腫瘍細胞の細胞膜と細胞質内全体に陽性所見が認められた. 腺癌細胞については22症例中2例 (9.1%) が陽性を示したが, この2例は乳癌症例で, その他の腺癌はすべて陰性であった. 非癌例17症例および癌例14症例にみられた反応性中皮細胞では陽性率が各症例で13~100%(平均58.9%) で陽性となり, 陽性細胞と陰性細胞が混在して出現していた. また個々の陽性細胞においても陽性反応の強弱や多彩な染色態度を示していた.
    以上の結果により, HABPを利用した細胞化学染色は悪性中皮腫に対して特異性が高く, 腺癌との鑑別診断や反応性中皮細胞の同定に有用であると思われた.
  • 元井 亨, 石田 剛, 堀内 啓, 岡 輝明, 瀬田 章, 佐々木 学, 元井 紀子, 山内 直子, 福島 純一, 坂本 穆彦
    1997 年 36 巻 6 号 p. 583-588
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    病理組織学的に滑膜肉腫と診断された6例 (二相型滑膜肉腫 (BSS) 1例, 単相線維型滑膜肉腫 (MFSS) 4例, 単相上皮型滑膜肉腫 (MESS) 1例) につき捺印細胞診または穿刺吸引細胞診を施行し, 細胞学的所見および組織学的所見を比較検討した. MFSSではその細胞像はほぼ同様であった. すなわち, 結合性に乏しい卵円形で細胞質の乏しい腫瘍細胞が散在性に出現し, その核は円形から卵円形で均一であった. 核縁は薄く平滑で, 繊細なクロマチンを有し, 核小体は小型で明瞭であった. MFSSは線維肉腫や悪性神経鞘腫瘍など, 紡錘形細胞肉腫との鑑別が問題となることが多いが, その細胞学的な特徴から推定診断が可能であると考えられた. BSSでは組織学的には明らかな2相性パターンがびまん性に認められたにも拘わらず, 細胞学的には上皮様細胞の集塊の出現は少なかった. 上皮様腫瘍細胞はゆるい結合性を示し, やや豊かな円形または多角形の胞体を有しており, その核は紡錘形腫瘍細胞と類似していた. 立体的な集塊は観察されず, 核所見と結合性の点で通常の腺癌とは異なっていると考えられた. MESSは細胞学的, 組織学的に節状パターンを有し, 腺様嚢胞癌との鑑別が問題となったが, 核の性状はBSSやMFSSの腫瘍細胞の核に類似しており, 粘液様物質がPapanicolaou染色, May-Grünwald Giemsa染色にて染色されない点で腺様嚢胞癌と異なっていた.
  • 夏目 園子, 新福 正人, 高橋 まゆみ, 橋本 政子, 佐竹 立成, 西川 英二, 鷲見 成晴
    1997 年 36 巻 6 号 p. 589-592
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    子宮頸癌 (扁平上皮癌) 由来の細胞が, 自然尿細胞診標本中に認められることがある. これらの症例 (混入例) の細胞像に特徴があるか否か検討した.対象とした混入例は8例で, これと比較するために子宮頸癌の膀胱浸潤例4例, 膀胱原発扁平上皮癌症例5例を用いた. 結果として, 混入例では, 他の症例に比較して, 扁平上皮癌細胞や好中球の数が少なく, それら出現細胞の多くが島状の集団として点在するように認められた. 女性の場合自然尿中に扁平上皮癌細胞を認めた場合は, 必要のない混乱を避けるためにも, この結果を参考にして原発巣を考えていく必要があると考えられた.
  • 今井 忠朗, 横野 秀樹, 泉 貴文, 源田 辰雄, 本告 匡, 蔵本 博行
    1997 年 36 巻 6 号 p. 593-598
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    複雑型子宮内膜増殖症と子宮内膜癌からエンドサイト法を用いて採取された内膜細胞のうち腺管細胞集塊の形態を詳細に観察した。
    今回, 正常子宮内膜腺細胞塊normal glandular cell cluster (n-GCC) から逸脱する異型子宮内膜腺細胞塊atypical glandular cell cluster (a-GCC) を規定し, それぞれの形態的特徴と出現数, 出現率を検討し, 以下の結果を得た.
    (1) 複雑型子宮内膜増殖症 (複雑増殖) では有意にn-GCCが多く出現するが, 高分化型体部腺癌 (G1) ではほとんどみられなかった.a-GCCの出現頻度は複雑増殖ではn-GCCの1/4と少なかったが, 腺癌では症例的に多かった.
    (2) 複雑増殖にみられるa-GCCの細胞配列は, 偽重層化のため集塊の長軸に沿った二辺の最外層の柵状配列に不規則性がみられた.また柵状配列外側の凸凹と内側の境界と中心域が不明瞭, さらに中心域が重積した集塊を示した.
    (3) a-GCCのこれらの特徴ある所見は, 複雑増殖に比べG1やG2・3腺癌で有意に増強していた.
    複雑増殖とG1に出現するa-GCCの形態と出現数を把握することにより, 複雑増殖のスクリーニング, また複雑増殖とG1腺癌の鑑別診断の向上に役立っと考える.
  • 待木 信和, 佐々木 寛, 惣田 隆生
    1997 年 36 巻 6 号 p. 599-607
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    卵巣漿液性腺腫10例, 境界悪性6例, 腺癌24例の腫瘍捺印細胞診検体を用いて, 形態計測を行った. 検討した形態因子は, 細胞核因子 (10因子) と細胞集団構造因子 (5因子) に分け, 多変量解析で因子の重要性と予測判別式を作製し正診率を求めた. 核因子のみで求めた判別式による正診率は77%であり, 腺腫の84%, 境界悪性の8%, 腺癌の92%が正診された. 境界悪性の多くは腺腫と誤診された. 集団構造因子による診断正診率は73%であり, 腺腫の55%, 境界悪性の15%, 腺癌の99%が正診された. 境界悪性の多くは腺癌と誤診された. さらに全因子を対象にして多変量解析を行うと核因子は腺癌と他病変との鑑別に, 集団因子は腺腫と他病変の鑑別に有用であり, 特に核重積性, 集団辺縁核突出, 飾状構造と核縁肥厚, 核クロマチン所見が病変の鑑別に重要であった. 診断正診率は90%であった. 良性の正診率は89%, 境界悪性は64%, 悪性は100%であった. 結論として, 卵巣漿液性腫瘍では捺印細胞診を用いて腺腫と腺癌との鑑別診断は可能と示唆されたが, しかし境界悪性の診断, 特に腺癌との鑑別に限界があるように思われる.
  • 鈴木 博, 井浦 宏, 野本 千恵, 武田 祥子, 楯 真一, 岩崎 秀昭, 武田 敏
    1997 年 36 巻 6 号 p. 608-612
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    異常妊娠37例について子宮内容物捺印後パパニコロウ染色を施行し, 出現する細胞像について形態学的検討を行い以下の成績を得た.(1) 観察された細胞はジンチジウム型トロホブラスト (Syncytiotrophoblast;以下ST), ラングパンス型トロホブラスト (cytotrophoblast;以下CT), 脱落膜細胞, AriaS-Stella反応を示す腺細胞などであった.(2) 流産27例中24例 (88.9%) にST, 4例 (14.8%) にCT, 5例 (18.5%) に脱落膜細胞, 2例 (7%) にArias-Stella腺細胞が認められた.(3) 肉眼的に絨毛が不明瞭であった流産9例中7例 (77.8%) に細胞診でSTまたはCTが確認された.(4) 子宮外妊娠10例ではST, CTはすべての症例に認められず, 脱落膜細胞は7例 (70%) に, Arias-Stella腺細胞は5例 (50%) にみられた.
    病理組織診断の結果に数日間要するため子宮内容物捺印細胞診を併用することにより患者の負担を軽減させることができ臨床的価値は大きいと思われる.
  • 神崎 由佳, 稲本 和男, 細川 喜美子, 林 孝俊, 布村 眞季, 藤田 葉子, 上林 孝豊, 若田 泰
    1997 年 36 巻 6 号 p. 613-617
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    甲状腺に発生したmucosa-associated lymphoid tissue (MALT) リンパ腫の1例を報告する.症例は80歳の女性で, 橋本甲状腺炎で治療中であった.
    穿刺吸引標本は, 上皮成分はほとんどみられず, リンパ球系細胞が多数認められ, 形質細胞も混在していた. それらのリンパ球は小型から中型で, 核のくびれや大きな核小体を有する異型の強いリンパ球が比較的多数認められた. 捺印標本は, N/C比が大きく粗なクロマチンで, 軽度の核形不整がみられる中型の細胞を主体とする細胞像で, 芽球や形質細胞も混在していた. MALTリンパ腫と橋本甲状腺炎における反応性リンパ球増生とは鑑別困難であったが, 上皮成分がきわめて少なかったことが重要な鑑別点となった.
    細胞診標本のみでのMALTリンパ腫の診断は困難な場合もあるが, 細胞所見および発生部位, 臨床経過を考慮すれば診断可能であると考える.
  • 馬渡 聖子, 田中 廣, 橋本 教経, 吉武 俊一, 平野 敬之, 宮本 祐一, 入江 康司, 古川 次男
    1997 年 36 巻 6 号 p. 618-621
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    まれな肺原発悪性線維性組織球腫 (MFH) の1例を経験したので報告する. 症例は70歳, 男性. 胸部異常陰影を指摘され入院した. 気管支擦過細胞診で紡錘形細胞と多辺形細胞の2種類を認め非上皮性悪性腫瘍が疑われ手術が施行された. 術後, 病理組織検査にて, storiform patternを認め, 免疫組織化学的検査よりMFHと診断した. 肺MFHは細胞診では喀痰に出現することはほとんどなく, 気管支擦過細胞診や肺穿刺吸引細胞診で悪性細胞をみるといわれる. 本症例においても, 気管支擦過細胞診にて多数の悪性細胞を認め非上皮性悪性腫瘍が疑われ, 擦過細胞診は本症例の術前診断に有用であると考えた.
  • 寺澤 孝一, 花牟禮 富美雄, 植村 勝男, 松野 正宏, 佐藤 信也, 浅田 祐士郎
    1997 年 36 巻 6 号 p. 622-626
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Malignant rhabdoid tumorは小児の悪性腎腫瘍として報告されたきわめて予後の悪い腫瘍であり, その後軟部組織にも発生することが報告されている.今回, われわれは細胞診にて診断に苦慮した軟部malignant rhabdoid tumorの1例を経験したので報告する.症例は66歳, 男性.左轡部痛のため受診.左磐部, 腹部, 背部に皮下腫瘤が認められ背部腫瘤の穿刺吸引細胞診が施行された.腫瘍細胞は疎な結合1生を示すシート状, あるいは孤立散在性で明瞭な核小体と偏在する核を有し, 豊富な細胞質には封入体様構造が認められた.病理組織学的には光顕所見, 免疫組織化学的所見, 電顕所見よりmalignant rhabdoid tumorの診断を得た.
  • 佐々木 学, 石田 剛, 堀内 啓, 元井 亨, 福島 純一, 元井 紀子, 岡 輝明, 坂本 穆彦
    1997 年 36 巻 6 号 p. 627-632
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    われわれは類上皮肉腫 (epithelioidsarcorna;ES) の2例を経験し, 電顕および免疫組織化学的所見とあわせ, その細胞学的特徴について報告した。そしてこれまで報告されている細胞像と比較し, 本症の特徴的な細胞所見について検討した。症例1は58歳, 男性.主訴は左第2指の多発性皮下腫瘤.症例2は27歳, 男性.潰瘍を形成する左下腿の隆起性病変で周囲に軟部腫瘤を伴っていた.組織学的には両者ともESであった.いずれの症例とも細胞像は類似しており, これまでの報告とあわせ, 以下の所見がESの細胞学的特徴であると考えられた.すなわち1) 腫瘍細胞は上皮様細胞および紡錘形細胞より成る, 2) 上皮様細胞は大型で円形, 類円形ないし多稜形を示し, ライトグリーン好性の豊かな細胞質を有する, 3) 奇怪な異型の強い多核細胞がみられない, 4) 核はしばしば偏在する, 5) 上皮様細胞は緩い結合性を示すことがあり, 平面的な配列を呈すなどが挙げられる.さらに, 本腫瘍2例の細胞像を詳細に観察した結果, 上記の細胞所見に加え, さらに細胞質の棘状突起がESに特徴的な所見と思われた.そして電顕および免疫組織化学的所見より細胞学的な棘状突起の形成に中間径フィラメントの関与が示唆された.これらの細胞所見は組織学的に鑑別が問題となる肉芽腫性炎症, 良性および悪性線維性組織球腫, 扁平上皮癌, 滑膜肉腫そして線維肉腫などとの鑑別に有用であると思われた.
  • 梶原 博, 安田 政実, 伊藤 仁, 村松 俊成, 平澤 猛, 宮本 荘, 篠塚 孝男, 長村 義之
    1997 年 36 巻 6 号 p. 633-635
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    患者は63歳の女性で定期的に健診を受けていたことにより, 早期の重複癌, 卵管癌および子宮頸部腺癌が同時に発見された.健診時の子宮頸部細胞診では, 子宮頸部腺癌が, 後に精査目的で行われた内膜細胞診では, 附属器由来の悪性腫瘍が示唆された.これらの診断のもと単純子宮全摘術および両側附属器切除術が施行され, 卵管原発低分化型漿液性腺癌と子宮頸部原発内頸部型上皮内腺癌の重複癌と病理組織学的に診断された.卵管癌は, 一般に卵巣癌と比較してearly stageで子宮腔内に出現することが特徴として報告されている.術前に卵管癌を診断することは困難であるものの, 本症例においてはretrospectiveに検討すると, 内膜細胞診で同定された流入異型細胞の量が通常経験される卵巣癌の流入量よりも多かったこと, これに加えて健診時の頸部細胞診標本にも同様の異型細胞が混じていたこと, 両卵巣は画像上正常大であったこと, 腹水は存在しなかったことなどは卵管癌の可能性を考慮すべき所見と思われた.
    卵管癌は, 術前診断が困難で, 早期発見の有効な方法が確立されていないだけに, 子宮頸部あるいは内膜細胞診での卵管癌流入細胞発見に有用性が求められよう.
  • その限界と新しい可能性
    小林 省二
    1997 年 36 巻 6 号 p. 636-645
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    脳腫瘍の細胞診は手術中の迅速診断に, 凍結切片による組織診断を同時に行うことにより正診率を高めることができる.術中診断を行った302例のうち, 凍結切片で診断できたものは88.4%, 圧挫細胞診で診断できたもの91.0%であったが, 両者をあわせると95.7%に正診を得ることができた.神経膠腫群では凍結組織でも細胞診でも正確なgradeを決めるにやや困難な症例があり, high gradeの髄膜腫, 血管周皮腫などは細胞診では診断困難であった.脳腫瘍の画像診断法は革命的な進歩をとげているが神経膠腫群, 胚細胞腫, 悪性リンパ腫などではかなりの診断困難症例がみられた.現在脳腫瘍の治療法の主流は手術的切除であるが, 腫瘍によっては適時的確な病理診断のもとに術中術後の照射や抗癌剤による化学療法などが行われることにより, 治癒率の改善がのぞまれると考えられる.日本人の脳腫瘍では予後の悪い神経膠腫群が約34%を占めており, その中でも膠芽腫は5年生存率がきわだって悪い.集学的に治療法の改良が必要で, その中での細胞診断の役割は大きいと考えられる.
  • 特にカルミン染色の有用性について
    横野 秀樹, 今井 忠朗, 渡辺 恵子, 荻 真里子, 本告 匡
    1997 年 36 巻 6 号 p. 646-647
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 望月 衛, 江尻 晴博, 高橋 勝美
    1997 年 36 巻 6 号 p. 648-649
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 三宅 康之, 櫻井 孝規, 定平 吉都, 清水 道生, 広川 満良
    1997 年 36 巻 6 号 p. 650-651
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 村上 一郎, 西村 俊直, 清弘 真弓, 佐藤 正和, 星田 義彦
    1997 年 36 巻 6 号 p. 652-653
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 山内 直子, 岡 輝明, 石田 剛, 堀内 啓, 坂本 穆彦
    1997 年 36 巻 6 号 p. 654-655
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 鐵原 拓雄, 有光 佳苗, 坂元 和宏, 広川 満良, 藤原 恵一
    1997 年 36 巻 6 号 p. 656-657
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 太田 容子, 宮崎 純一, 中野 祐滋
    1997 年 36 巻 6 号 p. 658-659
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 福島 純一, 佐々木 学, 山内 直子, 岡 輝明, 坂本 穆彦
    1997 年 36 巻 6 号 p. 660-661
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 三次元粒体の計量分析を目的とした三次元形状係数に関する基礎研究
    望月 衛, 飯塚 俊幸, 南郷 脩史, 小島 英明
    1997 年 36 巻 6 号 p. 662-663
    発行日: 1997/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
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