西日本皮膚科
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53 巻, 2 号
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図説
綜説
症例
  • —国立熊本病院における薬疹の統計—
    中村 佳代子, 前川 嘉洋, 野上 玲子
    1991 年 53 巻 2 号 p. 227-231
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    多剤を併用していたために全身のそう痒性紅斑を繰り返していた薬疹の患者に, 貼布試験, リンパ球幼若化試験, 内服試験を行い, 原因薬剤を塩酸エペリゾン(ミオナール®)およびセフテラム·ピボキシル(トミロン®)であると確認できたので報告した。国立熊本病院皮膚科における薬疹は新来患者の1.9%を占め, 1988年5月より1989年9月までの間に当科で薬疹と診断された66例について検討した。男女比は1:1.4と女性にやや多い傾向があり, 年齢別にみると20代と60代に二峰性のピークがあった。原因薬剤としては, 抗生剤が最も多く, 次いで消炎鎮痛剤, 抗けいれん薬—抗精神薬, 循環器系薬の順であった。この原因薬剤の順位はここ数年の薬疹報告とほぼ同様であった。
  • —扁摘後掌蹠病変のみ治癒した1例—
    中村 猛彦, 小野 友道
    1991 年 53 巻 2 号 p. 232-235
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    尋常性乾癬の加療中に掌蹠膿疱症(以下PPPと略)を併発した症例を経験した。患者は76歳男子, 約25年前に尋常性乾癬の発症を認めた。発症13年後, 突然掌蹠に膿疱が多発し, 併せて咽頭部の発赤疹痛が出現。皮疹の消長が咽頭症状の活動性に並行していたため病巣感染が関与したPPPの合併を疑い扁摘を施行した。扁摘後, 掌蹠の皮疹は急速に消退し, 術後現在に至るまでまったく再発を認めていない。一方PPPの発症, 扁摘前後の全経過を通じ乾癬皮疹に著変は認められなかった。PPPと尋常性乾癬の異同については両疾患の発症機序が充分に解明されていないため, いまだ明確な結論が出ていない。ここでわれわれが報告する症例では先行する尋常性乾癬にPPPが併発し, その症状経過や治療に対する反応性において両疾患の分離が認められた点がきわめて特徴的である。
  • —糖尿病, 閉塞性動脈硬化症合併例—
    春木 智江, 丸山 友裕, 諸橋 正昭
    1991 年 53 巻 2 号 p. 236-239
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    糖尿病, 下肢閉塞性動脈硬化症を合併した下腿潰瘍に対し, prostaglandin E1(PGE1)静脈内投与を行い, 良好な結果を得たので報告した。症例は57歳男子, 軽微な外傷に引き続き, 左第1趾から左足底にかけて潰瘍が出現し, 強い安静時疼痛を伴った。糖尿病は比較的良くコントロールされていた。虚血性心疾患の既往のため, 外科的治療を断念し, 種々の保存的治療を試みた。シクロデキストリン包接PGE1およびリポPGE1の静脈内投与により安静時疼痛は増強したが, 潰瘍は縮小傾向を示した。間歇投与により安静時疼痛を緩和しながら治療を続け, 潰瘍はほとんど消失した。PGE1は難治性の下腿潰瘍に対し有効な治療法と考えられる。
  • 広川 政己, 水元 俊裕, 川岸 尚子, 橋本 喜夫, 松尾 忍, 飯塚 一
    1991 年 53 巻 2 号 p. 240-244
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    38歳男子の右大腿に生じたnodular fasciitisの1例を報告した。臨床的には自覚症状を欠く直径3cm弱の弾性やや硬の皮下腫瘤で, 約1ヵ月で急速な増大傾向を認めた。外傷の既往はない。病理組織学的には筋膜との明らかな連続像は認められないものの, 線維芽細胞様細胞の浸潤性増殖, 粘液様変性像, 多核巨細胞, 核分裂像および赤血球の血管外溢出などを認めnodular fasciitisの組織像にほぼ一致していた。切除後再発は認めていない。特異的な臨床像のない本症の診断にあたっては, 発症後比較的急速に大きくなるため病悩期間が約1ヵ月と短いことと, 切除後に再発をみないことが比較的重要な所見であることが伺われた。組織学的にはmyxoid malignant fibrous histiocytomaとの鑑別が重要であると考えた。
  • 高橋 一夫, 菅 千束, 佐々木 哲雄, 中嶋 弘
    1991 年 53 巻 2 号 p. 245-249
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    急性間質性肺炎で死亡した54歳女子の皮膚筋炎患者を剖検所見を付して報告した。本例は筋症状は軽微であったが, 皮膚筋炎の診断基準を満たしており, 剖検にて軽度ながら筋の変性, 細胞浸潤を示していた。肺の病理組織所見は間質性肺炎に一致するものであった。皮膚筋炎患者, とくに筋症状が軽微な皮膚筋炎患者は時に急性間質性肺炎を生じ死に至ることがあるので注意を要する。
  • 勝俣 道夫, 園田 民雄, 野崎 清恵
    1991 年 53 巻 2 号 p. 250-255
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    3歳2ヵ月女児と4ヵ月男児の両小指基部尺側に生じた, いずれも直径3mmほどで常色のrudimentary polydactylyの2例を報告した。自覚症状として, 前者に圧痛が認められた。病理組織学的にいずれも表皮には角質増殖, 顆粒層の肥厚, 表皮突起の延長を伴った表皮肥厚が認められ, 真皮乳頭層下部より真皮深層にかけ表皮に垂直方向に多数の神経線維束の縦断面が束状に配列していた。また前者には真皮乳頭層に多数のMeissner小体が存在し, 真皮深層に多数の神経線維束の横断面が認められた。症例1のS-100蛋白の検索で, Meissner小体や神経線維束に弱陽性所見が, ニューロフィラメントの検索で, 一部の神経線維束に強陽性所見が得られ, 電顕的に表皮基底層の随所にメルケル細胞とaxonが, Meissner小体内およびその周囲にはLuse bodyが, 病変部の真皮上層にはシュワン細胞や有髄および無髄の神経線維が豊富に認められた。本邦では, 自験2例以外に両小指に本病変が認められたとする報告はなく, いずれもまれな症例と考えられた。
  • —本邦報告例のまとめ—
    前川 嘉洋, 丸尾 圭志, 野上 玲子
    1991 年 53 巻 2 号 p. 256-258
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    29歳女子の右頬部にみられた色素性母斑(組織学的に複合母斑)に炎症症状を伴った表皮様嚢腫を報告した。1981年より1990年まで本邦で報告されたこの合併例は自験例を含め6例で, 青壮年に多く, 男女差はみられなかった。色素性母斑が急速に大きくなった場合には, 表皮様嚢腫の合併や悪性化の可能性も考慮し, 手術法にも工夫が必要であることを述べた。
  • —電顕的および免疫組織化学的観察—
    徳橋 至, 村上 正之, 芹川 宏二, 鈴木 秀美, 佐藤 光浩, 下田 祥由, 高桑 俊文
    1991 年 53 巻 2 号 p. 259-262
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    脂腺母斑とは無関係に生じる真性脂腺腺腫は本邦では自験例を含め10例しか報告されておらず, その詳細は不明な点が多い。症例は62歳男子。左肺癌の治療中に前額部に小豆大の丘疹出現。転移性皮膚癌を疑い切除, 組織学的に成熟脂腺細胞が主体を占める脂腺腺腫であった。電顕的観察では腫瘍辺縁部に比較し, 中心部で成熟した多数の脂肪滴を含む細胞を多く認めた。抗EMA(epithelial membrane antigen)抗体を用いた免疫組織化学的染色では成熟脂腺細胞は陽性, 移行細胞や基底細胞様細胞は陰性であり脂腺細胞の成熟度の指標となり, 脂腺腺腫と脂腺上皮腫の鑑別に際し有用であると思われた。
  • 園田 忠重, 片桐 一元, 板見 智, 高安 進, 安東 孝文
    1991 年 53 巻 2 号 p. 263-268
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    肛門周囲膿瘍, 痔瘻に臀部慢性膿皮症(以下CPP)を続発し, その瘻管壁から有棘細胞癌(以下SCC)が生じたと考えられる1例を経験した。症例は63歳男子, 昭和33年頃に発症した肛門周囲膿瘍に始まり, やがて痔瘻を生じ, 次第に臀部全体に硬結, 瘻孔が形成され, いわゆるCPPの状態となった。昭和63年頃, 臀部の数ヶ所に腫瘤が出現し急速に増大した。生検にて高分化型のSCCと診断された。すでに腫瘍が骨盤腔内へ浸潤していることがCTにて明らかとなったため, 手術適応はないと判断し, 化学療法, 放射線療法を施行したが, 腫瘍は徐々に増大し, 初診7ヵ月後, 局所感染の増悪にて死亡した。剖検時, 肛門周囲および臀部皮膚の瘢痕組織のいずれにも瘻管壁に連続してSCCの像がみられた。また, 肺, 肝への遠隔転移を認めた。以上のごとく, 自験例の特徴は, (1)痔瘻を先行病変としたCPPと考えられること, (2)SCCの発生母地は瘻管壁と考えられること, の2点にある。CPPにSCCを併発した場合, 文献的にも腫瘍は速やかに増大する傾向があり, 先行病変を欠くSCCに比べ転移率が高く予後が悪い。したがって, CPPは早期に外科的切除することが望ましく, また悪性腫瘍の早期発見に努めるべきである。
  • 松永 若利, 小野 友道
    1991 年 53 巻 2 号 p. 269-275
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    顔面, 頭部皮膚に原発する有棘細胞癌のうち, 頸部リンパ節に転移する頻度を知るため, 過去13年間に当科で治療した83症例について検討を加えた。初診時すでにリンパ節転移を来していた症例は7例であった。初診時リンパ節転移を認めなかったため, 原発巣のみの手術をした患者で, 術後経過中にリンパ節転移を認めるようになった症例が5例あった。この5例のうち原発巣の局所再発を認めたのは1例で残りの4例は原発巣にはまったく問題のないにもかかわらず, 術後頸部リンパ節に転移がはっきりしてきた症例であった。以上のごとく, 術前, 術後を通じて, 頸部リンパ節に転移を認めた症例は併せて12例であって, これは頭部, 顔面皮膚に原発した症例83例の14.5%に相当するものであった。次にこれら12例の症例を中心に, 原発巣の存在部位, 大きさ, 病理組織学的悪性度などと転移の関係についての相関を検討したところ, 組織学的悪性度と最も関係あることが判明した。即ち, 転移をきたした症例にはBroders分類I度の症例は全くなく, 悪性度が高くなるほど, 転移の頻度も高くなる可能性があった。とくに術後経過中にリンパ節転移をきたしてくる症例はほとんどBroders III度の症例であった。頸部リンパ節に病的腫大が認められた場合, 原発巣と共に根治的頸部郭清術が必要なことは言うまでもないが, たとえリンパ節腫大は認められなくとも, 原発巣の病理組織学的悪性度が高い症例には予防的郭清術が必要と思われる。
  • 尾木 兵衛, 中山 樹一郎, 師井 洋一, 堀 嘉昭, 矢野 篤次郎, 石田 照佳
    1991 年 53 巻 2 号 p. 276-283
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    左側頭部に原発した巨大な悪性血管内皮細胞腫に対してinterleukin-2(IL-2)の全身投与を試み, 一旦腫瘍の扁平化と潰瘍病変の消退をみた症例を報告した。第1回目の退院後の外来フォロー中, 患者が一時通院を怠り休薬状態となった期間に肺転移をきたしたため, 第2回目の入院時Nocardia rubra cell wall skeletonとIL-2の胸腔内併用投与による治療を試み一時的な緩解を得た。脈管由来肉腫におけるIL-2の単独全身投与あるいは起炎物質との局所併用投与の効果および副作用について自験例を含めて文献的に考察した。
研究
  • 大坪 東彦, 真崎 治行, 三砂 範幸, 西 隆久, 高橋 雅弘, 竹内 俊夫, 百武 由美子, 龍 誠治, 幸田 弘
    1991 年 53 巻 2 号 p. 284-289
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    乾癬患者7名に対してデュオアクティブ貼付療法とゲッカーマン療法の併用療法を行った。デュオアクティブ貼付は約4週間で大部分の皮疹がある程度までは軽快するが, 貼付期間をそれ以上延長してもすべての皮疹が消失することはなかった。ところがデュオアクティブ貼付療法後ゲッカーマン療法を行うと皮疹は急速に軽快し, 約2週間後にはほとんどの皮疹が消退した。なおデュオアクティブ貼付による皮疹の増悪や新生, ケブネル現象などの副作用はほとんどみられなかった。ゲッカーマン療法に対するデュオアクティブ貼付療法の併用は, とくにゲッカーマン療法抵抗性の難治症例において, 導入療法としてきわめて有益な治療法と考えられる。
  • 今山 修平, 宮原 裕子, 八島 豊, 入来 敦, 橋爪 民子, 堀 嘉昭
    1991 年 53 巻 2 号 p. 290-301
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    ステロイド外用による皮膚蒼白化現象の機序研究のための実験を行い以下の結果を得た。
    1) 兎耳介動脈を摘出し, 収縮刺激実験におけるステロイドの影響を検討した結果, ステロイドは電気刺激による収縮や, ノルアドレナリンおよび高カリウムによる収縮に影響をおよぼさず, 内皮細胞由来の弛緩因子の分泌阻害, プロスタグランジン合成阻害のいずれの機序による血管収縮反応にも影響をおよぼさないことが判明した。
    2) ヒトの自律神経系反射の喪失領域への外用実験により, 蒼白化現象は神経の介在なしにも生じることが観察された。
    3) 兎耳介皮膚を用いたステロイド外用実験の経時的観察では, 塗布の数分後一過性の血管拡張と, 引き続いて生じる浮腫が観察されたが1時間ほどで吸収された。吸収と同時に血管収縮が観察され始め, 動脈のみならず平滑筋層のない毛細血管や静脈にも管径の縮小が観察され, それは12時間以上維持された。
    4) 同じ実験の電子顕微鏡による経時的観察の結果, 塗布の数分後に肥満細胞の顆粒内容の放出が観察された。顆粒の基質物質(プロテオグリカン)は当初, 細胞周囲に限局したが, 1時間後には周囲へ拡散し, 線維束間に沈着した。この物質は9時間後まで血管周囲の線維芽細胞(veil cell)周囲に観察された。
    以上よりステロイド塗布は真皮内の肥満細胞からの脱顆粒を惹起するが, 放出された化学物質(ヒスタミンなど)の作用はやや遅れて発現するステロイドの薬理作用により抑制される。その結果, 血管拡張や透過性亢進は吸収されるが, 同時に放出された基質物質(プロテオグリカン)の排除は却って遷延し, 結合組織線維間への沈着をもたらすと考えられた。その結果, プロテオグリカンの水との高い親和性により, 結合組織圧が遷延性に上昇し, 血管の圧迫収縮を生じる機序で皮膚の蒼白化現象が生じると考えられた。
  • —トリプシン·塩酸法による走査電子顕微鏡的観察—
    村井 博宣, 真家 興隆
    1991 年 53 巻 2 号 p. 302-306
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    ヒト立毛筋の自律神経分布を検討する目的で, ヒト頭皮を上原らのトリプシン·塩酸法にて処理し走査電顕的に観察した。同時に, 通常透過電顕, および免疫組織化学的にS-100蛋白, NSEの局在を検討し総合的に走査像を判断した。走査電顕的観察によると, 立毛筋は直径4μ前後の細長い紡錘形の立毛筋細胞の束状の集合よりなり, その表面にシュワン細胞, 神経線維が認められた。シュワン細胞の核の存在する部分は膨大部となり, そこから神経線維が数個の立毛筋細胞に延びだして観察された。また神経線維束から分岐した神経線維が立毛筋細胞表面に分布し, 末端部は球状に肥大して認められた。神経線維と立毛筋細胞の直接の接着は観察されず, また立毛筋細胞表面には神経末端に対応する特別な受容器は認められなかった。われわれの観察は, 立毛筋と自律神経の三次元的関連を理解する上で有用と考えられた。
講座
統計
  • —とくに予後並びに影響因子に関する検討—
    佐藤 典子, 真家 興隆
    1991 年 53 巻 2 号 p. 313-319
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    1972年1月1日から1989年3月31日までの17年3ヵ月間に秋田大学付属病院皮膚科を受診した乾癬例につき統計的観察を試み, あわせてアンケート調査で予後およびそれに影響を与える因子を検討した。
    1) この期間の乾癬患者は389例で年別乾癬新患数および総新患数に対する比率は年々増加していた。
    2) 男女比は3:2, 発症のピークは全体では30歳代であるが男性は30歳代, 女性は0歳代(0∼9歳)であった。
    3) 尋常性乾癬が91%で, 重症ないし異型乾癬を少数認めた。
    4) 家系内発症を8%に認めた。
    5) 初発部位は頭部が40%を占めた。
    6) 入院例につき肥満度を検討したが健常人に比し有意差はなかった。
    7) 肉類をよく摂取する例が約半数を占めた。
    8) 入院療法の主体はGoeckermann療法で, 外来ではステロイド外用がその主体で光線療法を継続できる例は少数であった。
    9) 長期寛解例(1年以上73例, うち5年以上12例)があった。
    10) 長期寛解例について有効な治療法·諸因子としてステロイド外用, 光線療法のほか野菜食や禁酒が挙げられていた。
    11) 増悪因子, 再発の誘因として上気道炎·扁桃炎のほか食事の偏り, 不摂生, ストレスなどが挙げられていた。
治療
  • 河内 繁雄, 松本 和彦, 斎田 俊明
    1991 年 53 巻 2 号 p. 320-327
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    高齢者では老化に伴う薬物代謝の遅延があり, 副作用の発現抑制という観点からも, 一般成人に比べより慎重な薬剤投与が必要である。今回, 老人性皮膚そう痒症に対するオキサトミド(セルテクト®)の有効性とより有用な使用法を知る目的で, 本剤の成人常用量である60mg投与群と, その半量である30mg投与群で, 封筒法による群間比較を行った。その結果, 60mg投与群にそう痒の重症度に有意な偏りがあったが, 両群ともに全般改善度で66.7%, 75.9%の改善度(改善以上)が得られ, また安全度, 有用度にも両群間に有意差は認められなかった。したがって老人性皮膚そう痒症では, セルテクト®1日30mgの投与から開始しても十分な止痒効果が得られ, 症状に応じて増量する投与法がより有用性の高い使用法であると考えられた。
  • —健常人における同種同効市販製剤との比較—
    高橋 収, 二宮 啓郎, 原田 浩史, 武田 克之
    1991 年 53 巻 2 号 p. 328-336
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    Methylprednisolone aceponate(MPA)外用剤の臨床効果を推測する目的で, 健常人を被験者に選び皮膚血管収縮能について, 主な同種同効市販製剤との比較試験を実施した。さらに, MPA外用剤の3種剤型(軟膏, クリームおよびユニバーサルクリーム)間の血管収縮能についても比較検討し, 次の結果を得た。
    1. MPA外用剤の臨床効果は, 血管収縮試験の成績から, clobetasol propionate(CP)製剤に比してやや劣り, betamethasone valerate(BV)製剤に比して明らかに優れると推測された。
    2. 皮膚に対するMPA外用剤の安全性については, 被験者24例中1例に試験薬剤除去後24時間に, 微弱な紅斑が生じた。
    3. MPA 3剤型の血管収縮能の比較では, Bonferoniの多重比較で0.2%クリーム製剤の皮膚蒼白化反応が0.2%ユニバーサルクリームより劣る傾向を認めた以外は, 各濃度間, 各剤型間に有意差を認めなかった。
  • —健常人における, Betamethasone 17-Valerate軟膏との二重盲検法による比較—
    高橋 収, 二宮 啓郎, 原田 浩史, 武田 克之
    1991 年 53 巻 2 号 p. 337-342
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    0.2% Methylprednisolone aceponate(MPA)軟膏の全身におよぼす影響を, 0.12% betamethasone valerate(BV)軟膏と比較検討した。健常成人男子志願者16名を2群に分け, 各対象にMPA軟膏もしくはBV軟膏10gを夜間密封包帯法により3日間外用し, 副腎皮質機能を中心に全身への影響を検討した。MPA群は, いずれの副腎皮質機能検査においても外用前値に対し有意な変動を示さなかったが, BV群では, 血漿ACTH, 血清コルチゾールで外用前値に対し有意に低下し, またMPA群との比較においても有意な低下を示した。また, 両群において薬剤によると思われる一般臨床検査値の異常, 皮膚の異常所見は認められなかった。以上の結果からMPA軟膏は全身および局所に対してきわめて影響の少ない薬剤とみなしうると考えた。
  • 佐藤 紀嗣, 近藤 慈夫, 麻生 和雄
    1991 年 53 巻 2 号 p. 343-347
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    重症な乾癬患者6例に免疫抑制作用を有するシクロスポリン(以下CYAと略す)を投与し, その臨床効果について検討した。対象とした乾癬患者の内訳は, 尋常性乾癬4例, 乾癬性紅皮症1例, 関節症性乾癬1例の合計6例であった。CYAの投与量は5mg/kg/dayとし, 適宜調節した。その結果, 全般改善度として改善以上が4例(66.7%)であった。関節症性乾癬の1例においては乾癬の皮疹のみならず関節炎の程度も軽減した。副作用としては1例に脱毛が認められた。CYAが重症な乾癬患者に対して有用であり, とくに広範囲な病巣部位を持つ乾癬性紅皮症や, 関節症性乾癬に効果のみられたことは新しい乾癬の治療法として意義あるものと考えられた。
  • 山田 秀和, 佐藤 浩子, 田村 隆弘, 手塚 正
    1991 年 53 巻 2 号 p. 348-352
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    関節症性乾癬1例を含む5例の難治性乾癬に対するシクロスポリンの臨床効果を検討した。全例で改善率90%以上と著明な効果を得ることができ, そのうちの2例では皮疹が完全に消失し, また, 関節症性乾癬例では, 関節痛も消失した。 安全性については, 10mg/kg/日投与を行った1例で血圧上昇が認められたが, それ以外とくに問題となる副作用, 臨床検査値異常は認められなかった。 シクロスポリンは, 難治性乾癬に対し極めて有用性の高い薬剤であると考えられた。
  • 堀越 貴志, 小野寺 英夫, 川村 邦子, 江口 弘晃, 高橋 誠
    1991 年 53 巻 2 号 p. 353-359
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    重症の乾癬患者6例に, シクロスポリンを初期量5mg/kg/day相当量で12週間投与し, 薬剤の有効性および安全性を検討した。 全症例に良好な効果がみられ, うち4例は著明改善と判定した。 1例に血圧上昇, 1例にGOT, GPT, 尿酸値の軽度上昇がみられたが, シクロスポリンの投与中止後または12週後の漸減中に正常に復した。 とくに, 重篤なものは認められなかった。 シクロスポリンは, 既存の治療法に無効, もしくは抵抗性を示した難治性の重症乾癬患者に非常に有用な薬剤であると考えられた。
  • 高橋 省三, 諸橋 正昭
    1991 年 53 巻 2 号 p. 360-367
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    富山医科薬科大学附属病院皮膚科外来を受診した女性の瀰漫性脱毛症患者16名に対し, プラセンタエキス, 酢酸トコフェロール, サリチル酸, センブリエキスおよび数種の植物抽出液などの成分の他に, エチニルエストラジオールを配合した女性用育毛剤コラージュリッチを使用し, 臨床症状に対する影響および安全性について検討を行い, 下記の結果を得た。
    1) 瀰漫性脱毛症患者(瀰漫性脱毛症を主訴とし円形脱毛症を併発している症例3例, 脂漏性湿疹併発症例3例を含む)16例に対し, 全般改善度では「中等度改善」以上改善した症例は2例(12.5%), 「軽度改善」以上の症例は12例(75.0%)であった。
    2) 概括安全度については, 全例に副作用を認めず, すべての症例に対し「問題なし」との評価であった。
    3) 有用度の判定では, 「かなり有用」以上の有用症例が2例(12.5%), 「やや有用」以上が14例(87.5%)であった。
    これらの成績から, コラージュリッチは女性の瀰漫性脱毛症に対し有効かつ安全な育毛剤であると考えられた。
  • —Quality of Lifeの向上をめざして—
    野上 玲子, 前川 嘉洋, 丸尾 圭志, 中村 佳代子
    1991 年 53 巻 2 号 p. 368-372
    発行日: 1991/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    65歳男子の左足底に生じた悪性黒色腫(pT4a N1 M2b, stage IV)の1例を報告した。 腫瘍拡大切除後, 内側足底皮弁で再建し, DAV(DTIC, ACNU, VCR)療法, インターフェロン-β静注で初診より2年を経た現在良好な経過をとっている。 悪性黒色腫は早期にリンパ節転移や遠隔転移を起こすなどの予後不良の性格をもつだけに, 各症例に応じ “quality of life” を重視した治療法の選択が必要と思われる。 自験例における治療の有用性について述べた。
世界の皮膚科学者
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