耳鼻咽喉科展望
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35 巻, 2 号
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  • 特に悪性腫瘍を原因とする麻痺について
    実吉 健策, 上出 洋介, 部坂 弘彦, 森山 寛, 本多 芳男
    1992 年 35 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    我々は1984年7月より1990年6月までの6年間の喉頭麻痺患者117人について検討した。喉頭麻痺の原因疾患として, 悪性腫瘍による麻痺31.6%, 特発性麻痺21.4%, 術後性麻痺24.8%が多く, 前回検討した1979年7月より1984年6月までの5年間と比較して, 悪性腫瘍による麻痺の増加と特発性麻痺の減少が特徴的であった。悪性腫瘍の中では, 肺腫瘍が最も多く, 甲状腺, 食道腫瘍がそれに次いで多くみられた。頭頸部悪性腫瘍 (14例) に限った場合, 甲状腺腫瘍, 頸静脈孔症候群, 原発不明の頸部転移腫瘍による喉頭麻痺を呈した症例を認めた。主な初発症状は嗄声, 頸部腫瘤であったが, 嗄声のみを示す例や, 嚥下障害を伴う例も認められた。前回の報告ならびに諸家の報告にもあるように悪性腫瘍による麻痺を常に念頭に置く必要を今回も強調した。
  • 診断と治療
    林 智栄子, 新川 敦, 木村 栄成, 高橋 秀明, 福里 博, 坂井 真, 三宅 浩郷
    1992 年 35 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    当院で入院治療を経験した13例の急性乳様突起炎について検討した。
    我々は入院治療を必要とする急性乳様突起炎の定義を急性・亜急性中耳炎罹患後に耳後部の腫脹, 発赤, 耳介聳立を認める, 拍動性の耳漏を認める, これらの症状が経口抗生剤を投与しても改善傾向がない, X線乳突蜂巣にびまん性陰影を認めた場合とした。保存的治療を施行した10症例はABPC, Cefem系抗生物質を第1選択とした抗生剤の点滴静注により症状の改善を認めた。耳性側頭骨内合併症を認めた2症例と真珠腫を伴う1症例に対しては早期治療目的で手術を施行した。
    急性乳様突起炎の治療は, 合併症がない場合は抗生剤の全身投与を施行し, 合併症を伴う場合は積極的な手術の施行が必要であると考えられた。
  • 伊藤 文英
    1992 年 35 巻 2 号 p. 133-140
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    突発性難聴新鮮例204例, 213耳につき, 主として聴力型との関連において治療予後を分析し次のような結果を得た。
    1.低音障害型, 中音障害型が特に予後良好であり, ついで高音漸傾型, 水平型の順であった。
    2.ほぼ同程度の聴力レベルの症例でも, 聴力型により予後が異なり, 又聴力型によっては聴力レベルの低下した症例でかならずしも予後不良とはならなかった。
    3.めまいの合併率は聴力型により異なり, 又聴力型によってはめまい (+) の症例でかならずしも予後不良とはならなかった。
    4.ほぼ同様な年齢分布の症例でも, 聴力型により予後が異なり, 又聴力型によっては50歳以上の症例でかならずしも予後不良とはならなかった。
    以上の結果から聴力型は予後を左右する最も重要な因子と考えられた。
  • アンケート調査結果から
    藤崎 隆三, 五十嵐 秀一, 佐藤 弥生, 大野 吉昭, 川名 正二, 中野 雄一
    1992 年 35 巻 2 号 p. 141-147
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    学校オージオメータは, 文部省通達により昭和63年8月から新JIS規格で表示することになった。今回, 当地方部会では平成2年9月現在のオージオメータ検査の実態と耳鼻科健診の現況についてアンケート調査を行ったので報告する。
    対象は新潟県下の全ての市町村立小中学校955校である。調査は新潟県教育庁の協力を得て, 各校の養護担当教諭にアンケートを依頼した。その結果, 全校から回答が得られ, 回収率は100%であった。主なアンケート結果は以下のようであった。(1) オージオメータでの聴力検査は99.7%に行われており, そのうち新JIS規格使用は83.7%であった。(2) オージオメータの自校所有率は, 市部57.3%, 郡部34.8%であり, 地域差がみられた。(3) オージオメータの校正は必ずしも徹底されていない。(4) 全学年に聴力検査を実施しているのは, 小学校55.7%, 中学校47.0%であった。(5) 耳鼻科健診は毎年実施校が87.0%, 全学年実施は小学校62.0%, 中学校40.4%であった。
  • 1992 年 35 巻 2 号 p. 149-164
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 経皮的鼻骨整復法の考案
    長山 郁生
    1992 年 35 巻 2 号 p. 165-168
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    鼻骨骨折は近年スポーツ外傷の増加とともに, 外来に於てよく遭遇する疾患である。陥凹部の整復は鼻腔内に鉗子を挿入する挙上法によって容易に整復可能であるが, 隆起部の整復は挙上のみによっては充分でないことがあり, 術者をしばしば悩ませる。この問題を解決するために, 我々は経皮的に整復する方法を考案した。整復法: 隆起している鼻骨の直上の皮膚に切開を加え, この切開部位に, 整復用の鈎 (一本爪鈎を改良したもの) を挿入し, 鼻骨にかけ, 引き上げる。過去2年間に13例実施したが, 満足すべき結果であった。1例は術後に再整復を要した。鼻側背の皮切は小さいものであり, ほとんど目立たない。局麻下においても可能であると思われるが, 全例とも全麻下で行った。本法は, 手技は容易でしかも効果は確実である。隆起部の整復に適した方法であると考えた。
  • 胎児期軟骨の血管
    島田 和哉
    1992 年 35 巻 2 号 p. 169-175
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    軟骨は血管のない組織として知られており, 教科書的にも血管やリンパを欠くために代謝機能等は周囲からの浸潤によるとされている。しかし局所的な条件, 軟骨組織の大きさによっては無理な場合もあり, また発育の早い動物の胎生期の軟骨ではCartilage canalの中にある血管が軟骨に侵入して来るともいわれている。
    軟骨内の血流あるいは血管についての研究, 観察の試みは古く, 1743年Hunterが軟骨の中の血管の存在を報告している。その後軟骨内の血流について種々の報告がなされているが1985年, 私も胎生期のOtic capsuleが軟骨として成熟し, 化骨の直前に血流を認めて報告した。この点に関して追求している間に一般的に見られる所見であることが判明し, ラットの長管骨でも認めた。
    今回は私の観察はすでに報告してあるので簡単に述べるにとどめ, 文献的な考察を加えてCartilage canalについて検討し, 述べてみたい。
  • 上出 洋介
    1992 年 35 巻 2 号 p. 177-181
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    喉頭麻痺の原因は耳鼻咽喉科領域にとどまらないため, 我々は幅広い原因の検索にあたらなくてはならない。今回特に胸郭内疾患による喉頭麻痺を報告し麻痺の持つ複雑さと多様性を再度確認した。1) 肺門部早期肺癌, 2) ボタ口管起始部に発生した動脈瘤, 3) 陳旧性肺結核症に伴う麻痺で, 循環動態の変化によって肺動脈の拡張が出現し, 大動脈との間で反回神経を圧迫するために発症したと思われる, 3種類の原因を呈示した。これらの最終的な診断にはCTならびにMRIの画像診断が役立ち, これらの有用性とともに, 高齢者における原疾患の特定の必要性を強調した。
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