耳鼻咽喉科展望
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39 巻, 3 号
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  • 高坂 知節, 川瀬 哲明, 高橋 辰, 日高 浩史, 曽根 敏男, 鈴木 陽一
    1996 年39 巻3 号 p. 237-245
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    When recognizing severe retraction or adhesion of debris to the tympanic membranes, the otologist tends to regard these as cholesteatoma or adhesive otitis media, and usually performs ear surgery. Some of these could obtain a stable local condition by conservative therapy as an office procedure. This paper reports five cases, in which ear surgery was avoided by conservative therapy. Case 1: A 9-year-old girl consulted our clinic with a long history of otitis media with effusion. A deep atticdefect of the left tympanic membrane with relapsing otorrhea and debris was recognized. A stable condition in the tympanic membrane was acquired by conservative local treatment; irrigation, cleaning, antibiotic ear drip, and ventilation tube insertion. Case 2: A 12-year-old girl was referred for further examination of suspected external canal cholesteatoma. Infected granulation and debris of the posterior bony wall defect were recognized in the right ear. Repeated debridement obtained a smooth epithelized posterior wall with a shallow retraction. Case 3: A 28-year-old male showed right otitis media with effusion accompanying the attic wall defect and debris. Cleaning and debridement stabilized the condition of the tympanic membrane. Case 4: A 37-year-old female complained of recurrent bloody otorrhea from the left ear. Pocket-like retraction containing discharging cholesterol granulation was observed on the posterior quadrant of the left tympanic membrane. Enlargement of the pocket orifice and debridement stabilized the condition. Case 5: A 48-year-old male demonstrated a cholesterol cyst in the tympanic membrane and otitis media with effusion from the left ear. An incision was made in the cyst and a ventilation tube was inserted in the middle ear. A clear retraction pocket remained in the posterior half of the tympanic membrane. Conservative therapy for chronic ear disease not only avoids ear surgery, but also improve the postoperative results when given as a preoperative treatment. Important aspects of this therapy were precise observation under a microscope and fine treatment using otomicrosurgical instruments.
  • 大久保 仁, 野崎 信行, 辺土名 仁, 奥野 秀次
    1996 年39 巻3 号 p. 246-255
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    鼓膜穿孔耳62耳 (外傷性鼓膜穿孔10耳, 慢性穿孔性中耳炎17耳, 鼓膜換気チューブ挿入35耳) の外耳道に圧センサーを密着固定し, 仰臥位姿勢で中耳腔内圧の経時的変化を観察した。
    観察は, 中耳腔内圧上昇値 (中耳圧最大値mm/min), X-P囲続面積, 中耳腔気体容積 (微小陰圧法) を測定した。外傷性鼓膜穿孔例は, 中耳腔や乳突蜂巣に炎症病変が少なく中耳腔内圧変化もほぼ正常と考えられるので, これを標準値とした。
    外傷性鼓膜穿孔例のX-P囲続面積と理論的中耳腔気体容積は, 相関に乏しく, 中耳内圧上昇時間と中耳圧最大値の相関曲線は, Y=3.4x+20.2r=0.814を示し, 1分間の中耳内圧上昇値の平均は, 5.73±2.80mmH2Oである。
    慢性穿孔性中耳炎の17例は, X-P囲続面積と中耳腔気体容積の間に相関がなく, 中耳腔内圧上昇時間と中耳圧最大値は, 外傷性鼓膜穿孔例の相関曲線より左上に位置するものが多く認められ, 外傷性鼓膜穿孔例に近い値と高い値のグループの二つに分れた。
    中耳内圧上昇値の平均値は, 8.93±3.50mmH20を示した。
    滲出性中耳炎症例は, X-P囲続面積と中耳腔気体容積の相関に乏しく, 中耳内圧上昇値が外傷性鼓膜穿孔耳の相関曲線より左上方で大きくばらつき, 外傷性鼓膜穿孔耳の値に近いグループと飛び離れたグループの2群が認められた。
    経過観察の出来た鼓膜換気チューブ挿入耳13例は, 中耳腔気体容積に差があっても, ほぼ気体容積が拡大の傾向を経り, 中耳腔気体容積値や中耳圧最大値は, 鼓室のみならず乳突峰巣の粘膜環境を反映して疾患経過の推定に役立つものと考えられた。
  • 藤田 博之, 平出 文久, 博久 詠司, 吉浦 宏治, 萩原 晃, 舩坂 宗太郎
    1996 年39 巻3 号 p. 256-261
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    慢性中耳炎の検出菌は従来よりS. aureus, P. aeruginosaが多いと報告されいる。今回, 東京医科大学病院と板橋中央総合病院耳鼻咽喉科外来における, 2年間の慢性中耳炎の検出菌やその薬剤感受性を分析し検討した。その結果, 検出菌の頻度はS. aureus, P. aeruginosaが多かったが, 筆者らの5年前の報告より真菌類の増加が著明で, 特に大学病院ではS. aureusに次いで高頻度であった。またProteus属は両施設で減少がみられた。また単独感染が半数以上であったが, 大学病院に比べ民間病院では混合感染の割合が高かった。またCorynebacterium, S. epidermidisに混合感染が多いという結果は過去の報告と変らなかった。薬剤感受性では全体としてSBPC, CPZ, OFLXに高い感受性を示した。
  • 治療に対する考察
    白幡 雄一, 関 博之, 小林 直樹, 白沢 昭弘, 荒井 秀一
    1996 年39 巻3 号 p. 262-266
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    43歳男性と56歳男性ともに頭頸部に発症した2例の軟部好酸球肉芽腫症 (木村病) の症例を報告した。これらの症例は減量手術後にスデロイドとトラニラストの併用薬物療法を行い, 術後の経過に良好な印象を得た。木村病は再発はあるが, 悪性化した報告はなく, 難治だが極めて予後良好な疾患である。症状は腫瘤形成以外ほとんどないのが特徴であるので, おもに整容的な立場から治療計画がなされるべきである。本症に行い成功を治めたごとく, 減量手術を加えた後にステロイドとトラニラストの併用薬物療法を行い, 治療効果判定の目安として好酸球と血清IgEの動態をみながら経過観察することは難治な本症の価値ある治療法の一つであると考えた。
  • 三谷 浩樹, 中溝 宗永, 鎌田 信悦
    1996 年39 巻3 号 p. 267-272
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    耳下腺内神経原性腫瘍3例を報告した。
    2例は神経鞘腫, 1例は神経線維腫であった。本邦では現在までに40例程度報告されており, 耳下腺腫瘍における発生頻度は0-3-4%とされている。当科においては19年間の手術症例413例中3例で0, 7%であった。通常は無症候性腫脹を示し, CTや細胞診に特別な所見がなく, 術後神経脱落症状や病理組織学的検索から診断される。このように耳下腺内神経原性腫瘍の術前診断は一般に困難であり, 比較的珍しい腫瘍と考えられてきたが, 現実には決して稀なものではなく, 我々耳鼻咽喉科医が耳下腺腫瘍摘出術を施行する際には, このような症例の存在も念頭におき, 顔面神経との関連を十分に考慮して処理する必要があると思われた。
  • その組織障害に関する考察
    川目 勘太郎, 博久 詠司, 平出 文久, 舩坂 宗太郎
    1996 年39 巻3 号 p. 273-277
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    近年, ボタン型アルカリ電池が広く使用されるに伴い, 耳鼻咽喉科領域において異物としての報告が見られるようになった。本邦において電池の鼻腔異物としての報告は僅か12例しかない。今回2歳の男児で挿入より15.5時間後に除去したが, 鼻中隔粘膜および軟骨の壊死による鼻中隔穿孔を来した症例を経験したので, 鼻腔電池異物による組織傷害について文献的考察を加え報告した。本症例は, アルカリによる強烈な化学火傷による組織傷害が示唆された。
  • 小都市・その周辺地区・大都市の比較
    片山 昇, 遠藤 朝彦, 今井 透, 永倉 仁史, 若盛 和雄, 野原 修, 実吉 健策
    1996 年39 巻3 号 p. 278-285
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    昭和56-59年の間, 東京都品川区と山梨県塩山市及びその周辺地区の小学生児童を対象にアレルギー性鼻炎と生活環境の関係を検討した。アレルギー性鼻炎の有病率は品川区が最も高率であったが, 大気汚染が関与していると考えられたため生活環境のみの影響を見ることはできなかった。そこで, 山梨県の3地区を比較検討したところ, アレルギー性鼻炎の有病率は市街化や人口密度などの社会的環境と, 有症率は生活様式の欧米化との関連が示唆された。すなわち本研究から生活環境や行動がアレルギー性鼻炎発症に影響を与えていると考えられ, 生活環境の調整を含めた生活指導が小児アレルギー性鼻炎の臨床上重要であると言い得る結果が得られた。
  • 内視鏡下鼻内手術
    辻 富彦, 山口 展正, 足川 哲夫, 森山 寛
    1996 年39 巻3 号 p. 286-288
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    先天性後鼻孔閉鎖症の姉妹に対してレーザーを用いた内視鏡下鼻内手術を行った。閉鎖はいずれも右側で, いずれも骨を伴っていた。姉については術後2ヶ月後にポリープ様組織が生じたため鉗除した。術後シリコンチューブを, 妹は2ヶ月間, 姉は6ヶ月間留置した。術後1年目までで再狭窄, 再閉鎖はみられず良好な結果を得た。後鼻孔閉鎖症の幼少児に対する内視鏡下鼻内手術は侵襲も少なく有効な方法と考えられた。
  • 経鼻内バルーン法
    江崎 史朗, 徳永 雅一, 橘 敏郎, 大西 俊郎
    1996 年39 巻3 号 p. 289-293
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    眼窩底骨折に対する観血的整復のアプローチ法は, 従来より経下眼瞼法と経上顎洞法の二つの基本的アプローチが行われてきた。しかし, これらの方法では下眼瞼下縁外切開や歯齪部切開を必要とする。そこで, 我々は平成5年1月よりこれまでのアプローチ法と異なり, 内視鏡下鼻内手術による鼻内経由にてバルーンカテーテルを用いた眼窩底骨折の整復 (経鼻内バルーン法と称した) を行うことを工夫考案し11症例を重ねてき
    これまで本法によりほぼいずれの症例も良好な結果が得られており, 今回そのうち複視を主訴とした28歳男性の眼窩底骨折新鮮症例に本法整復を行った一例を呈示し, その手技について報告した。
    経鼻内バルーン法の利点は, まず下眼瞼下縁, 歯齪部, いずれの切開も必要とせず患者に対し最も侵襲の少ない点である。つぎに内視鏡下に上顎洞内で眼窩内容陥入部とふくらむバルーンが確実に接し固定されるのが確認できる点である。
    今日, 慢性副鼻腔炎に対して内視鏡下鼻内副鼻腔手術が盛んに行われるようになってきたが, 本法は内視鏡下鼻内手術に習熟すれば十分に施行可能であり, 今後は眼窩底骨折も内視鏡下鼻内手術の適工応の一つになる可能性は高いものと考えた。
  • 睡眠薬の正しい使い方
    佐野 英孝, 佐々木 三男
    1996 年39 巻3 号 p. 294-299
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原田 昌彦
    1996 年39 巻3 号 p. 300-308
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 畔柳 達雄
    1996 年39 巻3 号 p. 309-317
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 封筒法による検討
    石井 甲介, 神崎 仁, 高橋 正紘, 加我 君孝, 細田 泰弘
    1996 年39 巻3 号 p. 321-331
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    末梢前庭性障害および中枢性のめまい患者180例に, 脳代謝賦活薬であるアデポス®および脳循環改善薬であるコメリアン®を併用投与した場合の有用性を, アデポス単独投与と比較検討し, 同時に日常生活に関するアンケート調査を実施した。方法は, 封筒法によりアデポス単独投与群 (1群84例), アデポス・コメリアン併用投与群 (II群96例) に分け, それぞれ薬剤を8週間投与した。
    その結果, 自覚症状において, めまい感の強さ, 悪心・嘔吐, 首・肩こり, 随伴症状全般においてII群がI群に比し有意に優っていた。また投与開始2週後の自覚症状改善度ではII群がI群に比し有意に優る傾向を示した。平衡機能検査別改善度では, 自発眼振検査においてII群が1群に比し有意に優る傾向を示し, 全般改善度では, 投与4週後においてII群がI群に比し有意に優る傾向が認められた。投与前後で実施した日常生活に関するアンケート調査においてはI群, II群ともに高い改善度を示した項目が認められたが, 両群問での差は認められなかった。
    以上より, めまい患者におけるアデポス・コメリアン併用投与の有用性が示唆された。
  • 新川 敦, 牧野 弘治, 田村 嘉之, 相原 均, 小林 良弘, 石田 克紀, 渡辺 修一, 坂井 真
    1996 年39 巻3 号 p. 332-338
    発行日: 1996/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    Fleroxacin (FLRX) の耳鼻咽喉科領域における基礎的・臨床的検討を行った。
    手術予定患者にFLRX200mgを1回経口投与し, 中耳組織, 上顎洞粘膜及び扁桃内濃度を測定した。上顎洞粘膜, 扁桃内には血清中濃度を上回る濃度が得られた。
    臨床的検討では, 化膿性中耳炎, 副鼻腔炎及び扁桃炎患者108例にFLRX200mgを1日1回, 原則として7-14日間経口投与し, 臨床効果を検討した。有効率はそれぞれ79.2%(42/53), 83.9%(26/31), 88.2%(15/17) で全症例では82.2%であった。細菌学的には78.3%が消失し, 起炎菌ではS. aureusが最も多く検出された。副作用は5例 (4.6%) に認められたが, 特に重篤なものはなかった。
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