鼓膜穿孔耳62耳 (外傷性鼓膜穿孔10耳, 慢性穿孔性中耳炎17耳, 鼓膜換気チューブ挿入35耳) の外耳道に圧センサーを密着固定し, 仰臥位姿勢で中耳腔内圧の経時的変化を観察した。
観察は, 中耳腔内圧上昇値 (中耳圧最大値mm/min), X-P囲続面積, 中耳腔気体容積 (微小陰圧法) を測定した。外傷性鼓膜穿孔例は, 中耳腔や乳突蜂巣に炎症病変が少なく中耳腔内圧変化もほぼ正常と考えられるので, これを標準値とした。
外傷性鼓膜穿孔例のX-P囲続面積と理論的中耳腔気体容積は, 相関に乏しく, 中耳内圧上昇時間と中耳圧最大値の相関曲線は, Y=3.4x+20.2r=0.814を示し, 1分間の中耳内圧上昇値の平均は, 5.73±2.80mmH
2Oである。
慢性穿孔性中耳炎の17例は, X-P囲続面積と中耳腔気体容積の間に相関がなく, 中耳腔内圧上昇時間と中耳圧最大値は, 外傷性鼓膜穿孔例の相関曲線より左上に位置するものが多く認められ, 外傷性鼓膜穿孔例に近い値と高い値のグループの二つに分れた。
中耳内圧上昇値の平均値は, 8.93±3.50mmH
20を示した。
滲出性中耳炎症例は, X-P囲続面積と中耳腔気体容積の相関に乏しく, 中耳内圧上昇値が外傷性鼓膜穿孔耳の相関曲線より左上方で大きくばらつき, 外傷性鼓膜穿孔耳の値に近いグループと飛び離れたグループの2群が認められた。
経過観察の出来た鼓膜換気チューブ挿入耳13例は, 中耳腔気体容積に差があっても, ほぼ気体容積が拡大の傾向を経り, 中耳腔気体容積値や中耳圧最大値は, 鼓室のみならず乳突峰巣の粘膜環境を反映して疾患経過の推定に役立つものと考えられた。
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