エリスロマイシンをはじめとするマクロライド系抗生剤が慢性副鼻腔炎に対して有効であることが報告されており, 抗菌作用以外の作用が示唆されているが, なお不明な点が多く残されている。
今回われわれは, マクロライド系抗生剤の有効機序の一端を明らかにする目的で, 14員環のエリスロマイシン (EM), ロキシスロマイシン (RXM) および16員環のアセチルスピラマイシン (SPM) を, 培養鼻副鼻腔粘膜に作用させ, 繊毛運動に与える影響を電気光学的に検討した。
その結果EMでは内服の際の組織移行濃度である0.002%(2.0×10
1mg/L) 以上で充進を認めた。0.05%(5.0×10
2mg/L) 以上の高濃度になると, はじめ亢進し, やがて障害されるという二面性を呈した。RXMでも組織移行濃度の0.0005%(5.0mg/L) 以上で作用直後から充進が認められ, EMよりも長時間賦活状態が持続する傾向を認めたが, 0.005%(5.0×10
1mg/L) になると充進傾向は減弱した。SPMではほとんど充進作用を認めなかった。
以上の結果から, マクロライド系抗生剤の慢性副鼻腔炎に対する作用機序の一つとして, 繊毛運動賦活作用が想定された。また14員環マクロライドは16員環マクロライドよりも, RXMはEMよりも優れた繊毛運動活性化作用を有していると考えられた。
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