全身麻酔下手術後の患者が翌日, 嗄声を訴えることがあり, 気管内挿管による喉頭や気管への負荷について検討した。検査対象は気管内挿管麻酔による手術症例41例 (男性30例, 女性11例) で平均年齢38.2歳。頸胸部を操作しない手術を主体に選択した。検査方法は, 音声は手術前日, 手術翌日, 1週間後の計3回の測定とし, リオン社製音声評価装置SH-10を用いて振幅変動率 (APQ), ピッチ変動率 (PPQ), 規格化雑音エネルギー (NNE) を, またphono-laryngogramを用いてpitch, flow, intensityを計測した。さらに発声持続時間 (MPT) を測定しその時のflow, intensityも記録した。手術時は挿管チューブのサイズ及び挿管時と抜管時のカブ圧, また挿管状態での頸胸部X線写真等を記録した。APQ, PPQ, NNEの増加程度により嗄声増悪群とその他の群に分類し, 数項目につき検定した結果, リバースから抜管までの時間及び胸部と頸部の気管内径差において, それぞれ0.5%で有意差を認めた。よって術後の嗄声は, 自発呼吸時の喉頭・気管の上下運動及び咳嗽反射による気管の攣縮と挿管チューブとの摩擦で生じる一時的な声帯炎が主たる原因と思われた。また胸部と頸部の気管内径差では, 嗄声よりもむしろカブの気管圧迫による挿管性の反回神経麻痺との関連について今後の検討が必要であると考えられた。
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