近年, 一部の慢性副鼻腔炎患者において鼻茸の再発を繰り返す特徴的な難治症例が存在することが次第に明らかになり, このような難治症例の臨床的な背景として, アスピリン喘息 (Aspirin intolerant asthma; AIA) を含む非アトピー性気管支喘息を合併している症例が多く, 末梢血中の好酸球増多や鼻粘膜, 鼻茸に著しい好酸球浸潤があること, ステロイドの内服が著効することなどがわかってきた。そこで慢性副鼻腔炎と喘息の病態に共通する因子としてアラキドン酸代謝産物のCysteinyl leukotrienes (CysLTs) が難治化に関与している可能性を考えた。
今回我々は, 慢性副鼻腔炎患者をAIA合併症例群 (CRS-AIA), 気管支喘息合併症例群 (CRS-BA), 気管支喘息を合併しない群 (CRS-NA) の3群に分類し, 手術時に採取した鼻茸を用いてCysLTsおよびその受容体について検討を行った。鼻茸中のCysLTsをC18 Sep-Pakカラム (Waters) で抽出したのち定量し, またCysLTsの受容体であるCysLT
1受容体とCysLT
2受容体は, 鼻茸組織において免疫組織化学的検討を行った。その結果, 鼻茸中のCysLTs濃度は, CRS-AIA群においてCRS-BA群とCRS-NA群と比較し有意に高かった。一方, CRS-BA群とCRS-NA群の間には有意差は認められなかった。受容体の発現については, CysLT
1受容体, CysLT
2受容体ともに, 主に好酸球に発現しており, 他の群よりもCRS-AIA群において強く発現していた。これらの結果から, 慢性副鼻腔炎の中でも特にAIA合併症例においては, CysLTsが難治化の病態に関与している可能性が示唆された。
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