耳鼻咽喉科展望
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65 巻, 4 号
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カラーアトラス
綜説
  • 三澤 清
    原稿種別: 綜説
    2022 年 65 巻 4 号 p. 132-137
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル フリー

    リキッドバイオプシーは,その検体に含まれる遺伝子情報の有用性から最近注目されている。リキッドバイオプシーで最も臨床応用がすすんでいるのは,血中循環腫瘍DNAを使った解析であり,いくつかのコンパニオン診断システムが導入され,分子標的薬の使用に役立つ情報を得ることができる。リキッドバイオプシーは全身の腫瘍由来のDNA全体を対象とするため空間的不均一性の影響を受けにくく,時間的不均一性を考慮した解析も可能である。現段階では,リキッドバイオプシーにおける課題は多くあるが,臨床研究を活性化するキーファクターになることは言うまでもなく,医師の役割を含めた医療システムに変化をあたえるツールになると期待されている。本総説では,主にがん診療におけるリキッドバイオプシーの現状と,我々の頭頸部がんにおける臨床応用に向けた研究について解説する。

原著
  • 麻植 章弘, 結束 寿, 高橋 昌寛, 志村 英二, 山本 裕, 小島 博己
    原稿種別: 原著
    2022 年 65 巻 4 号 p. 138-143
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル フリー

    巨細胞修復性肉芽腫(Giant Cell Reparative Granuloma: GCRG)は上顎骨,下顎骨に生じることが多く,側頭骨に発生する報告は少ない。今回われわれは側頭骨を原発としたGiant Cell Reparative Granulomaに対して手術的加療を行い,完全切除を得た症例を経験した。症例は47歳女性で,頭痛,左耳痛を主訴に当科を紹介受診した。CTにて左側頭骨に腫瘤性病変を認め,鼓室内,中頭蓋底,顎関節窩への進展が疑われた。中耳からの生検で巨細胞肉芽腫の診断となった。外側側頭骨切除術,中頭蓋底合併切除術,顎関節合併切除術を行い,腫瘍を全摘出した。硬膜欠損部位は側頭筋膜で再建し,顎関節・頬骨切除部位は肋骨付き前鋸筋皮弁で再建を行った。術後はミキサー食の摂食が良好であり,術後約2週間で軽快退院となった。外耳道閉鎖による伝音難聴を認めたが,顔面神経や内耳機能は温存された。Giant Cell Reparative Granulomaは全摘が困難であった場合の再発率が高く,可能な限り完全摘出が望ましいとされる。本症例では,脳神経外科,形成外科と合同で腫瘍全摘・再建術を行い,良好な術後経過をたどったので報告する。

  • 柳原 太一, 武田 鉄平, 菊地 瞬, 細川 悠, 大村 和弘, 森 恵莉, 小島 博己, 鴻 信義
    原稿種別: 原著
    2022 年 65 巻 4 号 p. 144-151
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル フリー

    【背景】1980年代より始まった副鼻腔手術研修会は,現在世界各地で行われている。当教室では1993年に森山らを中心に国内初の副鼻腔手術研修会が行われ,2020年3月で計28回を迎えた。研修会では研修会の評価と質の向上を目的にアンケート調査を行っている。今回我々は第21回(2013年)から5年間のアンケート結果を集計し当教室における内視鏡下鼻内手術研修会の評価と変遷について考察したので報告する。

    【方法】第21回(2013年)から第25回(2017年)の手術研修会5回に参加した全受講生237名にアンケートを実施し,実習受講生142名中,回答を得られた64名分の結果を集計し,各項目を分析した。そして過去の資料を元に研修会の変遷を調べた。

    【結果】研修全体を通してアンケート回答者全員から肯定的な評価を得た。受講生の最も評価が分かれた項目は解剖実習であり,興味を持った講義は「副損傷・出血とその対応」であった。時代によって研修の内容は変化していた。

    【考察と展望】アンケート回答者の満足度は高く内容についても好評であった。時代により研修会の内容を変化させていく必要があると考えた。また,手術の質の担保と安全性の継承のための教育の場として研修会は重要であり,今後は受講時の満足度に加えその後の効果の波及についても調べることでより内容の向上が期待されると考える。

  • 中山 潤, 山口 航
    原稿種別: 原著
    2022 年 65 巻 4 号 p. 152-156
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル フリー

    症例は48歳,女性。嗄声と咽頭違和感を主訴に当科を紹介受診した。初診時内視鏡検査で,左声帯と左中咽頭側壁にそれぞれポリープと乳頭腫を疑わせる腫瘤を認め,喉頭微細手術を施行する方針となった。プロポフォールとレミフェンタニルにより麻酔導入し,直達喉頭鏡を用いて喉頭展開を行ったところ高度徐脈傾向となり,アトロピン投与するも10秒間の心静止に至った。直達喉頭鏡を外し,胸骨圧迫を行い30秒が経過したところで心拍再開し,洞調律へと回復した。心静止の原因となる要因を考慮した結果,迷走神経反射に伴うものと考え,再手術の際には大腿静脈から体外式一過性ペースメーカーを留置し,徐脈に対して早急にアトロピン投与を行うことで無事手術は終了した。

    喉頭展開は迷走神経反射を生じうる手技であり,プロポフォールとレミフェンタニル併用による麻酔では副交感神経優位の状態となることが知られている。喉頭微細手術の際には喉頭への過度な刺激を避け,徐脈を生じうることを念頭に置き麻酔科医と連携してバイタルサインに注意を払う必要がある。

  • 松下 豊, 清水 雄太
    原稿種別: 原著
    2022 年 65 巻 4 号 p. 157-161
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル フリー

    EBウイルス陽性粘膜皮膚潰瘍はEBウイルス陽性リンパ増殖性疾患の中に分類される疾患の中でも,比較的予後良好なものである。

    今回われわれは,最初に急性喉頭蓋炎の診断で抗菌薬加療を行うも改善が乏しく,その後喉頭蓋に潰瘍性病変が出現し,悪性腫瘍の可能性を考えて生検した結果,EBウイルス陽性粘膜皮膚潰瘍の診断に至った症例を経験した。

    EBウイルス陽性粘膜皮膚潰瘍は免疫抑制薬の使用を契機として発症することが多く,その場合は使用薬剤の減量や中止によってほとんどが改善する一方で,悪性リンパ腫と病理組織学的に類似することもあるため,診断を正確に行う必要がある。

    一部の悪性リンパ腫との鑑別には免疫低下の原因となりうる既往歴や投薬歴が重要となるので,咽喉頭に難治性の潰瘍性病変を認めた場合には,生検とあわせて,それらのことを念頭に置いた問診を行うことが重要である。

境界領域
  • 松永 達雄, 山本 修子
    原稿種別: 境界領域
    2022 年 65 巻 4 号 p. 162-167
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2023/08/15
    ジャーナル フリー

    若年発症型両側性感音難聴は,新たに指定難病に追加された疾患であり,生後から40歳未満で発症する特定の遺伝子を原因とした遺伝性難聴で構成される。2022年2月時点では,ACTG1CDH23COCHKCNQ4TECTATMPRSS3WFS1の7遺伝子が指定されている。指定難病に認定された患者は,福祉サービスなどの障害施策の対象となり,指定医療機関での難病に対する治療費,薬局での保険調剤,訪問看護,介護保険の費用の助成を受けることができる。本難聴の診断には遺伝学的検査が必要であり,遺伝子検査前と検査結果の開示の際などには遺伝カウンセリングが必要である。現状の遺伝学的検査では検出や解釈が困難なバリアントが多いため,バリアント評価の標準的ルールの活用と,その根拠となるデータの充実が国内外で進められている。本難聴には原因遺伝子別に病態と臨床像に異なる特徴があるため,それぞれの特徴に適した診療が推奨されている。まだ本難聴に対する根本的治療はないため,補聴器,人工内耳などによるリハビリテーションで対応されているが,遺伝子治療や再生医療の研究も進んでおり,実用化が近づいている。

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