副鼻腔嚢胞に対する鼻内法の適応は, 内視鏡下鼻内手術の発展に伴って拡大してきたが, 依然として鼻外法を適応しなければならない症例もあるし, 骨性の隔壁の開放に苦労したり, 十分な開放が行えない症例もある。今回我々は副鼻腔嚢胞7例に対して, 光学式センサー型ナビゲーションシステム, EVANS IIIとXPSドリルシステムを使用して内視鏡下鼻内副鼻腔嚢胞開放術を行い, 両システム併用の有用性の検討を行った。7例は術後性上顎嚢胞4例, 術後性筋骨洞嚢胞1例, 原発性前頭洞嚢胞1例, 術後性前頭洞・節骨洞嚢胞1例であった。
EVANS IIIは術中のリアルタイムに嚢胞の位置, 穿破部位と方向, 危険部位の的確な解剖学的情報を提供し, これにより術者は安全で確実な嚢胞の開放を行うことが可能であった。XPSドリルシステムはドリルバー使用時も削開と吸引除去が同時に行える。このため術者は常に良好な視野のもとで, 内視鏡を保持しながらの片手操作でも厚い骨性の隔壁の穿破が容易で, また十分な開放を行うことが可能であった。今回使用した弩曲タイプのカッターやドリルバーは, 直ブレードでは処理しにくい前頭洞や上顎洞の嚢胞壁の処理に適しており, 膜性および骨性の隔壁の開放が円滑であった。ナビゲーションシステムによって示された嚢胞壁の穿破部位と方向, 範囲をパワーインストルメントによって処理することで, より低侵襲で効率の良い手術が可能となると同時に, 鼻内法のいっそうの適応拡大にっながると思われた。
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