耳鼻咽喉科展望
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34 巻 , Supplement5 号
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  • 青木 基
    1991 年 34 巻 Supplement5 号 p. 357-369
    発行日: 1991/08/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    中鼓室から上鼓室にかけての解剖学的特異性とその臨床的意義について人側頭骨を用いて検討した。
    側頭骨気胞化良好例の観察において従来指摘されていた中・下鼓室-乳突蜂巣を直接結ぶ通路は存在しなかった。即ちTympanic lsthmusが唯一中・下鼓室-上鼓室・乳突蜂巣間のルートであることが確認された。
    次にTensor Tympani Foldの付着の状態をAnterior Attic Bony Plateとの関係で3つのタイプに分類した。Tensor Tympani FoldがAnterior Attic Bony Plateに直接付着しているものをAタイプ (53.8%), Tensor Tympani FoldがAnterior Attic Bony Plateより前方につくものをBタイプ (19.2%), Supratubal Spaceが多房状でAnterior Attic Bony Plateが不明なものをCタイプ (26.9%) とした。AタイプすなわちTensor Tympani Foldが直接Anterior Attic Bony Plateに直接付着しているものは, 換気障害を起こし易く病変発現に関わることが推測された。又, Anterior Attic Bony Plateについて, 気胞化良好例の人側頭骨連続切片を用いてその高さを測定した。最低0.57mm, 最高3.60mm平均1.95mmであった。耳管と鼓室を境するこの骨壁は臨床的には鼓室への換気を妨げ病変発現に関わることが推測された。鼓室後上部にも鼓膜弛緩部裏面同様, 鼓膜裏面の小腔形成の可能性を指摘した。鼓室後上部の病変の易出現性はこの関与が多いと考えられた。
  • 福田式遮眼書字法と原点叩打法の比較および解析
    杉本 春美
    1991 年 34 巻 Supplement5 号 p. 371-381
    発行日: 1991/08/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    上肢偏椅検査法として, 当教室では, 福田式遮眼書字法と原点叩打法を, めまいの初診患者に施行してきた。原点叩打法は, 1968年当教室の加藤により考案された方法で, 座標原点を被験者が手に持ったボールペンで律動的に100回叩打し, 叩打点が集中しているものを正常, 他はその軌跡により, 線状移行型, 散乱性帯状移行型, 散乱型に分類するものである。
    発症後1日から17日目までに来院し, 原点叩打法, 遮眼書字法及び他の平衡機能検査を施行し得た338例につき, 中枢性疾患と末梢性疾患に分類し, 両検査法を比較検討し以下の結果を得た。
    1) 末槍性疾患では, 原点叩打法で線状移行型を示したものが78。0%, 遮眼書字法で偏椅型を示したものが12.8%であった。
    2) 中枢性疾患では, 原点叩打法で散乱型を示すものが24.4%, 遮眼書字法で失調文字を示すものが4.9%であった。
    3) 末槍性疾患例 (カロリックテストでCP陽性を示したもの) の偏僑方向を比較したところ, 原点叩打法で患側へ偏椅するものが60%で, 遮眼書字法で患側へ偏f奇するものは24%であった。
    4) 末梢性疾患例の経時的変化を調べたところ, 原点叩打法では, 発症後3日目までは80~90%が異常を示し, 安定期に至るまでの各時期共, 原点叩打法の方が偏僑型の検出率が高かった。
  • 八代 利伸
    1991 年 34 巻 Supplement5 号 p. 383-396
    発行日: 1991/08/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    動揺病発症により種々血中ホルモン濃度が変化することが知られ, このホルモン動態が動揺病の易罹患性 (susceptibility) に関与すると考えられている。
    本研究では, 健康成人ボランティアに対し, 実際に回転負荷装置を用いコリオリ加速度負荷を加え動揺病を誘発し, その時の血中ホルモン濃度の変動を測定した。また被験者の動揺病誘発時の症状をGraybielのDiagnostic scoreに従い点数化し, その点数から酔いやすい群, High susceptibilityと酔いにくい群, Low susceptibilityに分類し, それぞれについて血中ホルモン濃度の変動を比較した。
    動揺病誘発により, High susceptibilityの群ではADH, ACTH, プロラクチン, コルチゾル, アドレナリンの血中濃度が有意に上昇した。上昇の程度はADHにおいて最も顕著であった。Low susceptibilityの群では, 動揺病誘発によるホルモンの血中濃度の変動をほとんど認めなかった。
    これらの結果から, High susceptibilityの群では, 動揺病誘発による血中ホルモン濃度の変動が有意に大きかったが, これが単に動揺病発症によるストレスへの, 生体の視床下部一下垂体-副腎を中心とした内分泌系の反応によるものか, それとも直接個々のsusceptibilityをあらわすものかどうかははっきりしなかった。
    また, 血中ホルモン濃度の変動はADHにおいて最も顕著であり, ADHの中枢での作用機序等から, 動揺病の発症にADHが関与する可能性が推測された。
  • 液晶鼻息計と赤外線熱画像装置を用いて
    春名 真一
    1991 年 34 巻 Supplement5 号 p. 397-428
    発行日: 1991/08/15
    公開日: 2011/09/13
    ジャーナル フリー
    鼻腔の複雑な形態を通る呼気流をその流量と温度をパラメータとした熱画像として描出させ, 画像による呼気気流動態を解析することを目的とした。熱画像として, 液晶鼻息計 (Liquid Crystal Rhinomanometer, 以下LCRと略す) による鼻息像と, 呼気から放散される赤外線を温度として表示した赤外線熱画像との両者を用いて, 立体的な呼気気流動態を観察した。
    LCR上の鼻息像は, その面積から鼻腔通気状態を判定できるばかりでなく, 鼻腔モデルの鼻腔側壁の閉塞実験による鼻腔形態の変化に伴って夢鼻息像の形状も変化することが認められた。また呼気の束を表現する鼻息像上の分葉状の所見は, 健康診断の結果から全体の98%に認められ, なかでも2分葉状を呈したものは高率に認められた。また実験的鼻息像においても2分葉の所見は認められ, その所見は鼻腔モデルの下鼻甲介の前半部を切除した時に消失し, 鼻息像の形状は鼻腔前半部の影響を受けていることが考えられた。さらに鼻息像の内側部分は総鼻道・中鼻道からの呼気流, その外側部分は下鼻道からの呼気流によることが示唆された。
    鼻腔モデルの鼻腔側面と鼻腔各横断面での赤外線熱画像を総合して呼気気流動態を考えると, これまでの鼻内気流の研究報告とほぼ一致したが, 鼻腔側面方向より観察されにくい下鼻道上方部にも呼気の流路が認められた。上咽頭から流入した呼気流は, 下鼻甲介後端部付近から下鼻道, 中鼻道, 総鼻道に分かれて流路を形成し, 下鼻甲介前端部で中鼻道の呼気流は総鼻道と一緒になった。そして, 下鼻道と総鼻道の気流は, internal nasal valve部において集束されるように流れるが, 鼻外の外鼻孔部で再び2つに拡散した。
    以上の結果から, 鼻外的に捉えた呼気の熱画像より, 鼻腔内の呼気気流動態を推測することが可能であると考えられた。
  • 岩崎 光雄
    1991 年 34 巻 Supplement5 号 p. 429-448
    発行日: 1991/08/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科領域の特殊性から, 耳鼻咽喉科疾患は心身医学的配慮を必要とすることが多い。文献的にみて具体的に個々の疾患の心身医学的病態傾向について比較検討し報告したものは少ない。本研究は, 過去12年間に耳鼻咽喉科心身症専門外来にて診察を行った心身医学的病態のある330症例について疫学的な調査を行い, 器官別に耳疾患は眩量症, 鼻疾患は慢性副鼻腔炎, 咽喉頭疾患は咽喉頭異常感症を中心に検討した。
    心身医学的病態のある症例は, 心身医学的にみて, 眩量症は心身症群 (特に自律神経失調症), 慢性副鼻腔炎は神経症群 (特に心気神経症), 咽喉頭異常感症は神経症群 (特に不安神経症) が多い傾向であった。また, 心因に関して, 眩量症は心因反応を起こしやすく, 逆に慢性副鼻腔炎は心因反応を起こし難い傾向が存在した。心理検査においては, CMI検査では, 眩量症は神経症傾向を示しやすい傾向があり, 逆に慢性副鼻腔炎は神経症傾向を示し難い傾向があり, YG検査では, 慢性副鼻腔炎は安定適応型が多く, 眩量症・咽喉頭異常感症は不安定不適応型が多くなる傾向が存在した。以上より, 耳鼻咽喉科の器官別 (疾患別) に心身医学的傾向が異なることを示した。
  • 小林 毅
    1991 年 34 巻 Supplement5 号 p. 449-462
    発行日: 1991/08/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    動揺病や内耳性めまいの発症においてみられる顔面蒼白, 悪心, 嘔吐などの自律神経症状の発生機序に関して様々な仮説が提起されているが, いまだ確定するに至っていない。近年, ラットの異味症を用いた定量的動揺病実験モデルが報告され, また自律神経機能に関しても検査法の発達から様々な実験がなされている。
    本研究では,(1) 異味症を指標とした各種条件の回転刺激によるラット動揺病誘発の検討,(2) 手術的片側迷路破壊によるラットの内耳性めまい誘発と異味症の検討,(3) 異味症を指標とした片側迷路破壊ラットに対する自律神経遮断薬の影響の検討,(4) 心電図モニターによる回転刺激中のラットにおける心拍数, R-R間隔およびR-R間隔変動係数 (CVR-R) の測定を行った。
    その結果,(1) 定常的な回転負荷 (single rotation) では飼料摂取量の減少のみを認め, 変化する回転負荷 (double rotation) では回転数を増加させるとともに無栄養物 (カオリン) の摂取量増加が見られ, 異味症が誘発された。(2) 片側迷路破壊により, 術直後よりめまい体位および眼振の発現を認めた。さらに, 術後1日目より異味症が誘発され4日間持続した。(3) 片側迷路破壊ラットに対する副交感神経遮断薬 (アトロピン) の皮下注射投与により異味症は抑制され, 交感神経遮断薬 (プロプラノロール) の皮下注射投与では抑制されなかった。(4) 回転負荷中の心拍数減少およびR-R間隔延長を認めたが, CVR-Rは一定の傾向を認めなかった。
    これらの結果から, ラットにおける異味症は動揺病および内耳性めまいにおける自律神経症状の定量的指標として有用であり, その機序には副交感神経系の関与が示唆された、動揺病誘発中のdynamicな自律神経系活動に関しては, 相対的な副交感神経系の緊張状態が示唆された。しかし, 交感神経系との関連等の解明には至らず, 今後さらに検討を要すると考えられた。
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