耳鼻咽喉科展望
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59 巻, 3 号
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カラーアトラス
綜説
  • 大島 猛史
    2016 年 59 巻 3 号 p. 118-123
    発行日: 2016/06/15
    公開日: 2017/06/15
    ジャーナル フリー

     耳管開放症の症状は特徴的であり, 典型的な症例では問診で耳管開放症を疑うことは難しくない。 診断のポイントは, (1) 3主徴, (2) 体位による症状の変化, (3) 他覚的所見をとらえる, の3点である。 治療は保存的治療が主体であるが, 最も大切なことは患者に疾患の説明をすることである。 これにより患者は間欠的に訪れる不快な症状に耐えることができるようになる。 難治例では手術的治療の対象となる。 鼻すすりは耳管開放症と関連の深い現象で, 耳管開放症の病態を変化させる。 中耳病変の原因ともなるので, 鼻すすり癖は早期にやめさせなければならない。

臨床
  • 西谷 友樹雄, 飯村 慈朗, 加藤 雄仁, 三浦 正寛, 太田 史一
    2016 年 59 巻 3 号 p. 124-128
    発行日: 2016/06/15
    公開日: 2017/06/15
    ジャーナル フリー

     鼻副鼻腔乳頭腫を完全摘出するためには, 術前に腫瘍基部を推定し, 適切な術式を選択することが推奨される。 しかし従来の CT, MRI を用いた基部推定方法では, 広基性基部に対しその一部を推定できても広基性である基部すべてを推定することはできなかった。 今回われわれは経時的な造影効果を撮影する Dynamic MRI を用いて基部推定を行った。 その結果, 基部と基部を含まない断面において異なる造影効果が得られたことから, 広基性基部を推定できる可能性があると考えられた。 Dynamic MRI は簡便ではないが, 広基性基部を推定できる可能性が示唆された。

  • 三浦 正寛, 飯村 慈朗, 小島 慎平, 岡田 晋一, 菊地 瞬, 久保田 俊輝, 千葉 伸太郎, 太田 史一
    2016 年 59 巻 3 号 p. 129-134
    発行日: 2016/06/15
    公開日: 2017/06/15
    ジャーナル フリー

     蝶形骨洞内より発生した鼻副鼻腔乳頭腫に対して内視鏡下鼻内副鼻腔手術による摘出を選択するとの報告が増加しているが, 詳細に述べられた報告は少ない。 今回われわれは, 蝶形骨洞内より発生した鼻副鼻腔乳頭腫に対して Endoscopic Sinus Surgery (ESS) を施行した。 術後の病理検査は内反性乳頭腫の診断であったが, 再発なく良好な経過を認めた2症例を経験したので報告する。
     蝶形骨洞の構造的な理由から, 観察のためには70度硬性斜視鏡が有用であり, 腫瘍基部の処理のためには弯曲した鉗子やマイクロデブリッダー及びダイヤモンドバーが必要であった。 そして視野確保のためには蝶形骨洞前壁を削開する必要がある。 そのため蝶形骨洞前方を走行する蝶口蓋動脈中隔後鼻枝の血管処理には電気焼灼機器を使用した。 さらには蝶形骨洞周囲に内頸動脈や視神経などの重要臓器があり, より安全に手術を施行するためにナビゲーションシステムによる危険部位の同定を必要とした。 術前に, 内頸動脈損傷に対するリスクマネージメントの必要性もあり, 蝶形骨洞内より発生した鼻副鼻腔乳頭腫に対する ESS は施設の設備や術者の技量を考慮して行う必要があると考えられた。

  • 内尾 紀彦, 苦瓜 夏希, 月舘 利治, 飯島 明, 石井 正則
    2016 年 59 巻 3 号 p. 135-139
    発行日: 2016/06/15
    公開日: 2017/06/15
    ジャーナル フリー

     65歳, 女性。 左耳からシュー, シューという空気の抜けるような音が出現し当科を受診した。 頭部 MRA にて左内頸動脈の狭窄を認めたため, 当院の脳神経血管内治療科へ紹介した。 脳血管撮影にて左内頸動脈海綿静脈洞部に75%の狭窄を認めた。 本人の強い治療希望もあり, 血管内治療を施行した。 内頸動脈狭窄部にバルーン拡張を施行したところ, その直後より血管性耳鳴の消失を認めた。 再狭窄や解離を予防するため, 血管内ステント挿入術として STENT TSUNAMI® を挿入し手術を終了した。 術後半年経過するも, 血管性耳鳴の再発を認めていない。
     拍動性耳鳴の患者を診察する際には血管性病変の存在に注意し, 画像診断により原因検索を充分に行うべきと考える。

  • 大村 和弘, 浅香 大也, 松脇 由典, 積山 真也, 宮脇 剛司, 鴻 信義
    2016 年 59 巻 3 号 p. 140-144
    発行日: 2016/06/15
    公開日: 2017/06/15
    ジャーナル フリー

     眼窩内側壁骨折整復術に対して, 硬性再建資材として使用した u-HA/PLLA コンポジットプレート (SUPER FIXSORB-MX®) が術後感染の原因となり眼窩内膿瘍を形成した1例を経験したので報告する。
     症例は40歳男性で, 2年前にボクシングの試合で受傷した左眼窩内側壁骨折に対して, 東京慈恵会医科大学附属病院耳鼻咽喉科にてシリコンプレートでの圧迫固定にて整復を行った。 術後, 眼球陥凹の残存に加え複視の改善がみられなかったため, 1年前に東京慈恵会医科大学附属病院耳鼻咽喉科にて u-HA/PLLA コンポジットプレート (SUPER FIXSORB-MX®) を使用した硬性再建を形成外科と合同で行った。 その後, 眼球運動障害及び眼球陥凹は改善し経過良好だったが, 感冒を契機に眼痛, 眼球突出, 複視を認めたため東京慈恵会医科大学附属病院耳鼻咽喉科を受診した。 副鼻腔 CT 所見上 u-HA/PLLA コンポジットプレート周囲の感染と膿瘍形成を認めたため, 全身麻酔下に眼瞼結膜下切開にて u-HA/PLLA コンポジットプレートを抜去し, 経鼻内視鏡的アプローチにて副鼻腔の病的粘膜を除去した。 術後6ヵ月現在, 眼球運動障害及び眼球突出は改善し経過良好である。 硬性再建の資材による感染は, 非常にまれではあるが起こりうるものとして, 術中及び術後の経過観察を丁寧に行っていく必要があると考えられた。

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