耳鼻咽喉科展望
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60 巻, 6 号
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カラーアトラス
綜説
  • ―その最新の知見について―
    太田 伸男, 倉上 和也
    2017 年 60 巻 6 号 p. 268-275
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

     IgG4 関連疾患は, 罹患臓器に CD4 や CD8 陽性 T リンパ球と IgG4 陽性形質細胞が浸潤する全身性疾患であり, IgG4 陽性細胞の浸潤は, 膵臓, 胆管, 涙腺・唾液腺, 中枢神経系, 甲状腺, 肺, 肝臓, 消化管, 腎臓, 前立腺, 後腹膜, 動脈, リンパ節, 皮膚, 乳腺などに認められる。 病変が複数臓器に及び全身疾患としての特徴を有することが多いが, 単一臓器病変の場合もある。 耳鼻咽喉科領域においては, ミクリッツ病やキュットナー腫瘍などの硬化性唾液腺炎や Riedel 甲状腺炎などが代表的な IgG4 関連疾患で, 耳下腺, 顎下腺, 涙腺の腫脹を主訴として耳鼻咽喉科をまず受診する場合もあるため, 耳鼻咽喉科臨床医が IgG4 関連疾患に関する知識を広めると同時に理解を深める必要がある。 血中 IgG4 高値に加え, リンパ球と IgG4 陽性形質細胞の著しい浸潤と線維化が本疾患の特徴で自己免疫機序の関与が考えられているが, 原因は不明である。 IgG4 関連疾患のマネージメントの上で, 本疾患の診断, 悪性腫瘍の合併と唾液腺外の合併症に対する対応が臨床上特に重要な問題点である。 したがって, 可及的速やかな診断, 症状の把握, 唾液腺外合併症と悪性腫瘍の検索, 他科との連携を含めた総合的な長期間のフォローアップが必要である。 ステロイド治療が第一選択となるが, 減量, 中断によって多くの例で再発が認められる難治性の疾患であることも念頭に置く必要がある。

臨床
  • 内尾 紀彦, 黒田 健斗, 倉島 彩子, 重田 泰史
    2017 年 60 巻 6 号 p. 276-280
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

     今回われわれは術後に唾液腺導管嚢胞と診断された耳下腺嚢胞の1例を経験した。 27歳男性, 1週間前から左耳下部の腫脹,圧痛を認め受診した。 左耳下部に可動性良好な腫瘤を認め, 超音波検査, 頸部 MRI において耳下腺前方で咬筋外側の皮下に嚢胞性病変を認めた。 細胞診を施行したところ Class II であり明らかな悪性所見を認めなかった。 診断及び根治目的で手術を行う方針となった。 左耳前部に S 字状の切開をおいた。 耳下腺前方で咬筋外側の皮下に嚢胞性病変を認めた。 嚢胞壁と皮下軟部組織が強く癒着しており, 同部位における剥離操作において嚢胞壁の損傷をきたしたため可及的に摘出した。 病理学的検索の結果, 唾液腺導管嚢胞の診断となった。 術後2日目より常食を開始したところ, ドレーンからの透明な排液の増加を認め, 唾液漏が疑われた。 創部をガーゼで圧迫し, 絶食にて経過観察を行ったところ症状は軽快し, 2ヵ月後に完治した。 耳下腺嚢胞性疾患の術前鑑別診断は困難であり, 手術の際には唾液漏及び顔面神経麻痺を起こさぬよう留意すべきである。 また嚢胞壁と皮下軟部組織との癒着が強い場合は, 繊細な剥離操作を検討すべきである。

  • 平林 源希, 武富 弘敬, 安藤 裕史
    2017 年 60 巻 6 号 p. 281-285
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

     Bow hunter 症候群は頸部回旋により椎骨動脈が狭窄し, 一過性の虚血症状を来す病態である。

     今回われわれは前庭障害を来した Bow hunter 症候群の1例を経験したので報告する。 症例は50歳女性で, 回転性めまい, 歩行障害を主訴に受診した。 右向きの定方向性眼振を認めていたため左前庭神経炎の疑いで入院加療を行った。 入院時の頭部 MRI では梗塞などの病変は認めなかった。 また頭部 MRA では右椎骨動脈の低形成と Willis 動脈輪の正常変異を認めたが, 原因の関連はないと判断した。 めまい症状の軽快後に退院となり, 退院後に施行した温度刺激検査にて左耳の高度半規管麻痺を認めていたため左前庭神経炎と診断したが, 退院6週間後に頸部回旋に伴う一過性の意識消失発作が出現したことから Bow hunter 症候群の診断に至った。 治療は保存的加療とし, 頸部回旋を回避する生活指導のみで発症後2年経過観察しているが, 左耳の高度半規管麻痺は残存するも, 意識消失発作の再燃やめまい症状の出現は認めていない。 前庭神経炎と考えられた病態は, Bow hunter 症候群の本態である椎骨脳底動脈循環不全により, 前庭障害を来したものと推定された。

インストルメント
  • 榊原 昭
    2017 年 60 巻 6 号 p. 286-292
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

     耳鼻咽喉科診療への内視鏡ビデオシステムの導入は, 局所の詳細な観察, 画像の保存が可能になるなど, メリットが多い。 しかし一方では, カメラや光源の導入コスト, 機材の大きさ, 煩雑なケーブルの取り回しなどが欠点となっている。

     モニターや操作用のダイヤルなどを一切省いたユニークなレンズ交換式の汎用デジタルカメラ (Olympus AIR A01®) は小型軽量で, 撮影条件の設定や画像の確認などは, 無線で接続されたスマートフォンやタブレット端末で行うのが特徴である。 これに iPad Pro®, バッテリー LED 光源を組み合わせて, 安価で小型の無線接続内視鏡ビデオシステムを構築し, 鼓膜, 鼻副鼻腔の観察と記録, さらには内視鏡下の処置と小手術に応用して, 2年間にわたってその有用性と安全性について検証した。

     当システムは小型軽量でケーブルが不要でモニターも自由に移動でき, 耳内や鼻副鼻腔の観察と記録のみならず, 内視鏡下の処置や小手術も安全, 確実に行うことが可能であった。 また, リアルタイムで iPad Pro® に表示されるストリーミングビデオ, 記録された画像ともに高品位であった。

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薬剤の特徴と注意点
学会関係【第18回 耳鼻咽喉科手術支援システム・ナビ研究会】
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