眼球反対回旋運動 (Ocular counterrolling) は, 耳石器, 特に卵形嚢を起源とする前庭眼反射の一つとして理解されてきた。今回, 我々は被験者の頭部と体幹を一体として左右に傾斜して眼球反対回旋運動を解発し, 画像解析装置により眼球反対回旋運動の定量的解析を行った。そして暗算負荷, 上肢運動負荷, 長時間傾斜, ランダムドットによる視野刺激が眼球反対回旋運動にどのような影響を与えるかを詳細に研究した。
実験1 : 被験者を傾斜負荷装置に固定し, 左右方向に最大60°まで2°/secの等速度で傾斜させ, 眼球反対回旋運動を測定した。まず, 前方一点固視, 安静固定状態で測定し, 次に暗算負荷, 上肢運動負荷の条件で測定した。その結果, 暗算負荷は, 眼球反対回旋運動に影響を与え, 左右の対称性が明らかに改善した!しかし上肢運動負荷は眼球反対回旋運動に影響を与えなかった。
実験2 : 傾斜負荷装置に被験者を固定し, 側方45°20分間の長時間傾斜固定をし, 眼球反対回旋運動の変化を測定した。その結果, 長時間傾斜中, 眼球反対回旋運動が変化しない群と漸減する群があることがわかった。
実験3 : 45°傾斜負荷中に視野刺激 (重力軸方向, 被験者の身体軸方向) を与えて眼球反対回旋運動を測定し, また傾斜せずに被験者の斜め45°方向からの視野刺激のみを与えて眼球運動の変化を測定した。その結果, 視野刺激により明らかに眼球反対回旋運動は変化し, また視野刺激のみでも眼球回旋は誘発された。これらのことより, 眼球反対回旋運動は, 中枢, 視野刺激など耳石器以外の入力を受けやすぐ.様々な状況下で常に変化していることがわかった。
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