SPFX発売直後の特に過敏症や精神症状などの副作用調査を兼ねた耳鼻咽喉科領域感染症に対する臨床効果と組織移行性の調査として慢性中耳炎 (真珠腫性中耳炎を含む) における中耳粘膜への薬剤移行性につき検討した。臨床効果は耳鼻咽喉科領域感染症を有する患者で, 中耳炎9例, 副鼻腔炎7例, 咽喉頭炎2例, その他2例の計20例が対象となり, 副作用は全例とも認められなかった。有効性は併用薬の関係で3例除外した。17例で判定し改善以上15例で有効率88.2%であった。
中耳粘膜へのSPFX組織移行性は10例の慢性中耳炎手術患者について行った。SPFX血清中, 中耳粘膜 (肉芽) 内濃度は内服2時間後 (1例) で0.701μg/m
l, 1.107μg/gで, 4時間後 (9例) ではそれぞれ, 0.133-1.178μg/m
lと0.475-3.574μg/gとの結果となった。組織内濃度/血清中濃度比は0.89-3.57, 平均2.20と1例を除き, 血清中濃度を上回る濃度が中耳組織内に移行していた。
今回の検討によりSPFXの良好な組織移行性, そして安全性と臨床効果が示され, 耳鼻咽喉科感染症に対しても非常に有用な薬剤と考えられた。
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