取手協同病院, 都立駒込病院耳鼻咽喉科外来を, めまいを主訴として訪れた30名の「眩量症」患者 (男性13例, 女性17例) に対し, エレン ® 20mg錠を1日3回12週投与した。本剤は薬理作用から, セロトニンおよびノルエピネフリンの取り込み阻害作用を有した薬剤であるが, 動物実験上では, 学習行動増加作用, 脳波賦活作用, 抗健忘作用, 低酸素保護作用が確認されている。
このことから動脈硬化や血流障害が発症原因と考えられる「眩量症」に対し中枢からは, 代償機構の促進, 末梢からは前庭機能の回復が期待できる。その結果, 投与前後の自覚的所見に関しては,「眩量発作」「眩量感」「身体動揺感」「悪心・嘔吐」「倦怠感」「頭重・頭痛」「肩こり」「不眠」いずれにも有意な改善がみられ, 他覚的所見に関しても,「起立検査」「足踏検査」「頭位変換眼振」「頭振り眼振」において, 有意な改善がみられた。
12週という短期の検討ではあるが, 副作用も示さず, 本剤は「眩量症」の自覚症状の改善をもたらし, 他覚的には平衡神経系の不均衡に対しても有意な改善をもたらす薬剤であると結論した。
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