耳鼻咽喉科展望
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66 巻, 1 号
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カラーアトラス
綜説
  • ―これまでの実験結果から―
    福田 智美, 穐山 直太郎, 小島 博己
    原稿種別: 綜説
    2023 年 66 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    1829年にCruveilkierから中耳真珠腫が報告されて以来,約200年間にわたる長い間,病因論に関する研究がなされてきた.これまでにわれわれは,現在広く支持されている内陥基底細胞乳頭状増殖説に関する詳細な分子機構の解明を行ってきた.中耳真珠腫の構成細胞として,新しく上皮幹細胞/前駆細胞と神経堤由来細胞が同定された.中耳真珠腫発症起点と考えられている鼓膜弛緩部陥凹について,①中耳陰圧により惹起されるメカノセンシング,②炎症や細菌感染で誘導されるサイトカインネットワークで発現した角化細胞増殖因子のパラクライン作用,により鼓膜陥凹が誘導された.増殖期ではこれまで報告されている,①炎症や細菌感染で誘導されるサイトカインネットワークによる上皮細胞および線維芽細胞の過剰増殖に加え,新たに,②慢性炎症や細菌感染で惹起されるサイトカインネットワークを介した細胞のエピジェネティクス変化による基底細胞乳頭状増殖,③p63発現による部分的上皮-間葉転換による基底細胞乳頭状増殖,が示唆された.

原著
  • 三浦 正寛, 千葉 伸太郎, 宮村 洸輔, 三浦 拓也, 嶋村 洋介, 中島 隆博, 太田 史一
    原稿種別: 原著
    2023 年 66 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    睡眠呼吸関連障害を訴え,睡眠専門施設を訪れた患者がどの程度,上気道疾患や顎顔面の形態異常を有しているかその頻度を検討した.睡眠呼吸関連障害を訴え精査目的で,2017年1月1日から12月31日に太田睡眠科学センターを受診した当時18歳以上であった744名を対象とした.顎顔面の形態上の−1SD以下の頻度は,上顎の指標(SNA)で3.5%(25/710名),下顎の指標(SNB)で7.5%(53/710名),下顎下方の成長指標(Fx)で30.0%(213/710名)であった.また,治療抵抗性を示す可能性のある上気道疾患の割合は,口蓋扁桃肥大2度以上が,99/614名(16.1%),鼻中隔弯曲3度以上が,80/614名(13.0%),肥厚性鼻炎3度以上は31/614名(5%),慢性副鼻腔炎と診断された症例が134/744名(18.0%),仰臥位の鼻腔抵抗値が0.35 pa/cm3/sec以上の症例が39/729名(5.3%),座位の鼻腔抵抗値が0.31 pa/cm3/sec以上の症例が65/729名(8.9%)であった.今回の検討で睡眠呼吸関連障害を訴えて受診する患者の中には一定の頻度で上気道疾患・顎顔面形態異常によって治療抵抗性となるリスクが存在することが推察された.

  • 仲宗根 和究, 真栄田 裕行, 鈴木 幹男
    原稿種別: 原著
    2023 年 66 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    喉頭低位,肥満,短頸などを伴う症例では,通常の気管切開では手術や術後管理に難渋する例が少なくない.その様な症例に対して,輪状軟骨開窓術の安全性が示唆されている.当科で実施した輪状軟骨開窓術14例についてレビューし,その有用性を検討した.

    14症例中10症例で喉頭低位,肥満,短頸等を有していたが,カニューレの再挿入困難や皮下への迷入などの重大な合併症はなかった.14例中5例はCOVID-19肺炎による長期挿管に対して施行された.開窓からカニューレ留置までの時間短縮を目的として通常と異なる逆U字の開窓を行う工夫をした.14例中2例は腫瘍による上気道閉塞に対する局所麻酔下の手術であった.輪状軟骨開窓術は輪状甲状間膜と術野が隣接し,術中の窒息が起きた際は速やかに輪状甲状間膜切開へと移行できる安全な術式と考えられた.14例中4例では開窓孔は閉鎖された.閉鎖後半年の経過観察で気道狭窄などの合併症は生じていない.

    輪状軟骨開窓術は喉頭低位,肥満,短頸などの症例に安全な術式であり,COVID-19肺炎による長期挿管,局所麻酔下の施行,気管孔閉鎖を望める症例にも対応可能だが,長期的な合併症の可能性もあるため適応症例を慎重に判断する必要がある.

  • 菅野 万規, 阿久津 泰伴, 永井 美耶子, 竹下 直宏, 水成 陽介, 黒田 健斗, 大戸 弘人, 西谷 友樹雄, 結束 寿, 原山 幸久 ...
    原稿種別: 原著
    2023 年 66 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    CheckMate 141試験の結果を受け当院では2017年10月より再発・転移頭頸部扁平上皮癌に対するニボルマブ治療を開始した.本研究では実臨床の場でニボルマブの予後延長効果が実現しているか検証した.対象は2010年1月から2019年10月に当院で再発・転移頭頸部扁平上皮癌に対して緩和的治療を施行された患者とし,ニボルマブ投与群,ニボルマブ保険収載前後群(2017年10月以降のニボルマブ投与機会の可否で2群に分けた)を抽出した.ニボルマブ投与群の1年生存率は58.9%,2年生存率は46.6%でありCheckMate 141試験と比較して良好な治療成績だった.ニボルマブ保険収載前後群では1年生存率は保険収載前群で43.9%,保険収載後群で70.5%,2年生存率はそれぞれ21.7%,57.2%と有意に保険収載後群で全生存率が延長していた(p < 0.001).また,緩和的治療開始後1年以内のBSC(Best Supportive Care)移行率は保険収載前群で52.3%,保険収載後群で9.3%と保険収載後群で早期BSC移行率が低かった.以上より,当院でもニボルマブの予後延長効果が追証可能でありニボルマブ登場による緩和的薬物療法の治療選択肢の増加により早期にBSCへ移行する患者が減少した.

  • 溝上 雄大, 丸山 祐樹, 油井 健史
    原稿種別: 原著
    2023 年 66 巻 1 号 p. 36-45
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    両側に発症する顔面神経麻痺は片側発症例に比べて稀であり,鑑別に全身性疾患も考える必要がある.今回ANCA関連血管炎性中耳炎(Otitis media with ANCA associated vasculitis: OMAAV)が原因となり両側顔面神経麻痺をきたした症例を経験した.症例は80歳男性.X − 2月から左聴力低下と左耳痛自覚,X − 1月に左顔面神経麻痺が出現して近医受診し,左ベル麻痺として治療をしたが症状の変化はなかった.X月さらに右顔面神経麻痺が出現したため,精査目的で当院を受診した.初診時顔面神経麻痺スコア(柳原法)は両側とも12点で,原因が判明しなかった.OMAVVを精査しつつ両側ベル麻痺を疑い入院治療を施行したが,改善は認めなかった.その後,MPO-ANCA陽性となりOMAAVを疑い内科に相談したところ,専門病院に転院となった.X + 3月の時点で両側顔面神経麻痺スコア2点であった.X + 4月,リツキシマブ導入中に心停止があり心肺蘇生が施行された.X + 7月時点で顔面神経麻痺スコア14点となりその後点数は固定している.両側顔面神経麻痺の鑑別にOMAAVも考慮する必要がある.

境界領域
  • 加藤 雄仁
    原稿種別: 境界領域
    2023 年 66 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    本邦においてめまいはありふれた症状の一つであるが,その診断・治療にはしばしば難渋することがある.めまい症状が回転性か非回転性かなどの性質のみに注目するのではなく,発症様式や症状発現の誘因に注目し診断を行うことで,疾患を整理して考えることができる.急性めまいに関しては,急性めまいの診療フローチャートも公表されておりその診断の一助となる.慢性めまいについては,一側前庭障害の代償不全,両側前庭機能障害,前庭性発作症,加齢性前庭障害,心因性めまい,持続性知覚性姿勢誘発めまい(persistent postural-perceptual dizziness: PPPD)などの鑑別疾患および診断基準を理解することで,診断に応じた治療選択を行うことが重要である.

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