耳鼻咽喉科展望
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34 巻 , 1 号
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  • 実験的真珠腫の再現性と鼓膜内真珠腫の発生機転について
    沖久 衛
    1991 年 34 巻 1 号 p. 5-23
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    後天性中耳真珠腫の成因にはretraction theoryとimmigration theoryの二つの学説がある。当教室では従来より臨床的な観察からretractiontheoryを支持してきたが,佐野らは実験的にもこれを証明した。彼は家兎の耳管鼓室口を閉塞して4週から5週間飼育し,retractioncholesteatomaを作製した。しかしその発生率は低かった。
    今回,同様の方法で飼育期間を延長した。その目的は,retraction cholesteatomaの長期予後の観察と再現性の向上にあった。
    家兎の耳管鼓室口を自家筋肉片で閉塞し,処置後4週から20週飼育し観察した。28耳中,鼓膜穿孔のあるもの10耳,穿孔のないもの18耳であった。穿孔例はすべて化膿性中耳炎であったが穿孔縁からの表皮侵入はなかった。無穿孔18耳は鼓膜所見より三つのタイプに分類された。即ち,
    Type I:無変化2耳
    Type II:弛緩部陥凹12耳
    Type IIa:retraction with effusion 9耳
    Type IIb:retraction without effusion 3耳
    Type III:その他4耳
    弛緩部突出2耳
    正常位置で肥厚2耳
    Type Iは滲出性中耳炎の治癒した状態,Type IIaは滲出性中耳炎状態,Type IIbは滲出性中耳炎の後遺症,Type IIIは陰圧のない中耳炎状態と考える。Type IIaの鼓膜弛緩部は飼育期間にかかわらず,種々の程度に陥凹し,上鼓室に貯留液のあるものは肥厚した。その内12週飼育の1耳に弛緩部鼓膜内真珠腫を形成した。しかしretraction cholesteatomaの再現性を向上させることはできなかった。その理由は飼育期間を延長したことによると考える。処置後長期間を経過すると耳管が再開通して陰圧が解除され,中耳の炎症が軽症化してしまうと考えられる。また,一旦形成されたretraction cholesteatomaも長期間経過すると家兎の解剖学的特徴により,中鼓室に陥凹していくため穿孔をきたし化膿性中耳炎に移行してしまうと考え。従って,実験的retraction cholesteatomaの再現性を高めるためには処置後4週から5週以内に強い陰圧を作るエ夫が必要であると考える。
  • 矢部 武
    1991 年 34 巻 1 号 p. 25-37
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    耳硬化症の病因について様々な仮説が提起されているが,いまだ確定するに至っていない。近年になって,その病因はII型コラーゲンに対する自己免疫疾患であるという仮説が発表され,以後様々な実験がなされている。
    本研究では,(1)耳硬化症におけるII型コラーゲンの関与を検討するために患者血清中の抗II型コラーゲン抗体価の測定,(2)II型コラーゲン免疫ラットにおける側頭骨の組織学的検討および(3)II型コラーゲン免疫ラットのリンパ球と線維芽細胞・マクロファージの相互作用によるコラゲナーゼ産生能に対する影響等を検討した。その結果患者血清中には20例中4例に抗II型コラーゲン抗体陽性例がみられた。(2)しかし,II型コラーゲン免疫ラットの側頭骨に耳硬化症様の組織学的変化は認められなかった。(3)一方,II型コラーゲン免疫ラットにおいては,リンパ球が線維芽細胞・マクロファージのコラゲナーゼ産生能を促進するという実験結果を得た。
    これらの結果から,耳硬化症発症においてII型コラーゲンが何らかの関与をしている可能性が示唆されたが,その他の因子の存在が必要であろうと思われた。
  • 森山 寛, 青木 基, 関 哲郎, 沖久 衛
    1991 年 34 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    緊張部型真珠腫は癒着性中耳炎との関連が深く, とくに後上部 (PSQ部) の陥凹癒着する癒着性中耳炎との類似点が多い。すなわち後上部の陥凹癒着した鼓膜上皮が1-Sjointを破壊し, キヌタ骨の裏よりtympanic isthmus方向へ侵入する。上鼓室や乳突腔にまで進展すると完全な真珠腫といえるが, 緊張部型真珠腫と癒着性中耳炎との区別はかならずしも明確ではなく, 過去の手術例を検討してみるとその間にはさまざまな中間型が存在し, あるものは真珠腫に進展する可能性をもっている。この中間型をとりあえず前真珠腫 (pre-epidermosis) と呼称してその病態をまとめた。
  • 耳鼻咽喉科医は何をすべきか
    伊藤 裕之, 猿谷 文男, 石井 正則, 小林 毅
    1991 年 34 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    眩量のリハビリテーションは中枢神経疾患のリハビリテーションとは多少異なる。その理由は眩量患者のADLは, 四肢麻痺や片麻痺などの患者に較べるとはるかに自立しているからである。眩量のリハビリテーションにおいて耳鼻咽喉科医が行うべきことについて検討した。真珠腫の術後の眩量症例を呈示し, 眩量患者について眩量に対する不安の有無, 眩量の日常生活における影響の有無, 眩量がおきたときに最初に考えた疾患について調査した。眩量患者の63.8%が眩量に対して不安を抱き, 71.6%が脳血管障害や脳腫瘍を眩量の原因として考え, さらに, 53.3%が眩量が日常生活に影響していると答えている。
    眩量のリハビリテーションで成功をおさめるためには, 患者や家族の教育が重要である。それは, 眩量に対する不安感を除くために眩量の原因や予後について正しい知識を与えること, 眩量を増悪させるような姿勢や動作をさけるように説明することである。
    眩量のリハビリテーションで我々がするべきことは眩量の治療と患者や家族の指導である。耳鼻咽喉科医の参加なくして眩量のリハビリテーションは成功しない。
  • 八代 利伸, 栄 春海, 小林 毅, 梅澤 祐二, 橋本 卓雄, 和田 崇文
    1991 年 34 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    顔面痙攣, 三叉神経痛等の原因として知られる神経血管圧迫症候群が, 第VIII脳神経においても存在し, これがめまい, 耳鳴, 難聴をおこし, これに対しNeuro vascular decompression (NVD) が有効であることが報告されてきた。
    今回我々は, 5例にNVDを行い, 4例において, めまいの消失, 耳鳴の軽減等の良好な結果を得た。この4例の経験から, 短時間, 高頻度のめまい発作, 動揺視, 患側下での増悪, 発作性耳鳴, 聴性脳幹反応 (ABR) でI III波潜時延長が, NVDの適応の一つの指標となると考えられ, 診断に有用であることを確認した。
  • 國弘 幸伸, 大内 利昭, 佐藤 彰芳, 増野 博康, 小形 章, 神崎 仁
    1991 年 34 巻 1 号 p. 59-68
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    発症後60日以内に初回耳鳴検査を施行し得た一側性突発性難聴症例61例を対象として, 発症早期の耳鳴の性状とその経時的変化につき検討し以下の結果を得た。1) 発症7日以内の初回耳鳴検査時には73.0%で, 発症29日には33.3%で耳鳴の存在が確認された。2) 自発的擬声語および耳鳴同定音の検討より, 発症初期には雑音性耳鳴の頻度が高く, 経過とともに次第に純音性耳鳴に移行していくものが多いと考えられた。3) 初回検査時と最終検査時の耳鳴周波数を比較すると, 約73%で1オクターブを越える変化が認められた。4) 感覚レベル表示の平均ラウドネスには明らかな変化は認められなかったが, 耳鳴の自覚的大きさは経過とともに次第に小さくなる傾向が認められた。5) 耳鳴の性状の経時的変化は純音聴力レベルの経時的変化とほぼ平行していたことより, 突発性難聴における耳鳴の病態は, その難聴発症機序と密接に関係していると考えられた。
  • 西川 恵子, 西川 益利
    1991 年 34 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    当院職員190名の血清総IgE, スギIgE RASTを, 年2回 (春と秋) 測定し, 以下の結果が得られた。
    1.血清総IgEは, 季節および各年齢層で差がなかったが, スギIgE RAST陽性者はスギIgE RAST陰性者より高値であった。
    2.全体のスギIgE RAST陽性者は, 春57名 (30%), 秋52名 (27%) であった。スギIgE RAST陽性率では, 春と秋で有意差を認めなかった。一方, スギIgERASTスコアでは, 春が秋より有意に高い傾向を認めた。
    3.スギIgE RAST陽性率は, 20歳代で最も高く, 加齢とともに低下していた。加齢とスギIgE RAST陽性率は負の相関が認められた。
    4.スギIgE RAST陽性率は, 男女間に有意差を認めなかった。
  • 丹羽 一成
    1991 年 34 巻 1 号 p. 75-85
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    挿耳形補聴器のフィッティング, 作製のために, module形挿耳形補聴器を使って試聴, 仮り合わせ, 挿入利得の測定をし, これまでにないよい結果を与えることができた。フィッティングの具体的な方法を症例について記載し, 併せて挿入利得の重要性と留意点, また試聴, 仮り合わせの注意すべき点などについて述べた。この方法のこれまでにないよい結果は, 少なくなったリハビリの回数で示すことができた。
  • 横田 淳一, 吉本 裕, 吉野 英夫, 太田 聡, 水野 美邦
    1991 年 34 巻 1 号 p. 87-93
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    突然, 激しい眩量と右聴力障害を呈した55歳男性例である。純音聴力検査では, 右耳はscaleoutの状態であった。神経学的には, 軽度ふらつきが認められたのみであった。頭部単純レ線, CTでは特に異常を認めなかった。ABR検査では右耳の1波の消失が認められたが, 他の波は異常はみられなかった。最終的には, air-CTcisternography, MRIにて内耳道内聴神経腫瘍と診断された。しかしながら, ステロイド療法 (デキサメサゾン3mg/day) 10日間施行後には, 聴力は正常域まで回復した。
    我々の調べ得た限りでは, このように聾から正常域まで回復した報告は, これまでに見出し得なかった。こうした現象の機序は不明である。しかしながら, 内耳道内の小腫瘍が一過性に第VIII神経, 前下小脳動脈を圧排し, その後ステロイド投与によって腫瘍容積が減少したか, 或いは, 腫瘍の進展方向が変化した事によって圧迫が解除されたためと推定した。突発難聴例を診察する際には充分な神経放射線学的検索 (air-CTcisternography, MRI) が必要である。
  • 大西 俊郎
    1991 年 34 巻 1 号 p. 95-100
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    慢性副鼻炎の治療のための副鼻腔手術, とくに箭骨洞手術に際しての手術合併症は視力障害者や頭蓋内合併症で代表されるように重篤なもので全力で回避されなければならない。そのために内視鏡的節骨洞微細手術は有用な手段であるが, この手術に際していわゆる危険部位がどのように見え, 合併症をどのように回避するかを眼窩紙様板, 箭骨洞内側壁, 前箭骨神経附近, 後筋骨洞後壁の4ヵ所について記述する。
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