耳鼻咽喉科展望
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65 巻, 3 号
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カラーアトラス
綜説
原著
  • 横井 佑一郎, 山口 宗太, 穐山 直太郎, 吉川 衛
    原稿種別: 原著
    2022 年 65 巻 3 号 p. 100-105
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    IgG4関連疾患は血清IgG4の上昇と全身諸臓器にIgG4陽性形質細胞の浸潤を伴う臓器腫大,肥厚性病変を認める全身性慢性疾患であり,涙腺・唾液腺病変,自己免疫性膵炎に加えて胆管,腎,後腹膜・大動脈周囲ならびに肺等に時間的多発性をもって病変が出現する。

    症例は72歳,男性。当院消化器内科で後腹膜線維症を指摘されIgG4関連疾患の疑いで当院膠原病リウマチ科を紹介受診した。後腹膜病変の生検は高侵襲であるため大唾液腺生検の検討を目的に当科を紹介された。超音波検査で両側顎下腺の低エコー領域を認めたが,頸部単純CTや単純MRIでは顎下腺病変は認めなかった。顎下腺生検も検討したが,唾液腺病変を認めていなくても小唾液腺の生検による組織学的検査でIgG4関連疾患を診断できる可能性が一定確率あり,診断の一助になる有益性も考慮して口唇生検を選択した。病理組織学的所見では「著明なリンパ球,形質細胞の浸潤と線維化を認める」,「IgG4/IgG陽性細胞比40%以上,かつIgG4陽性形質細胞が10/hpfをこえる」の2項目を満たしIgG4関連疾患の診断に至った。IgG4関連疾患の診断において生検部位に悩む症例では低侵襲で行える口唇小唾液腺生検の有用性が高いと考えられた。

  • 中澤 圭史, 岡村 彩加, 佐久間 信行, 田中 大貴, 飯村 慈朗
    原稿種別: 原著
    2022 年 65 巻 3 号 p. 106-111
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    関節リウマチの治療に関して,メトトレキサートは世界で幅広く治療の中心薬剤として使われており,いわゆるアンカードラッグとなっている。メトトレキサートの使用が広まり,その副作用についても注目が集まっている。近年メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患が注目されており,多くの報告があげられるようになった。メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患はメトトレキサート投与中の患者に発生するリンパ増殖性疾患であり,リンパ節外を原発とする症例も多い。初発症状としては皮膚病変,咽頭・扁桃病変,軟部組織腫瘤,異常肺陰影の出現などが報告されており,耳鼻咽喉科領域でも念頭に置いた診察が必要である。今回われわれは,鼻腔から硬口蓋への瘻孔を認めたメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患の症例を経験したので報告する。

    本症例は,受診1ヵ月前から口蓋の潰瘍病変があり,他院歯科からの紹介で当院を受診した。身体所見では口蓋に瘻孔を伴う潰瘍病変がみられ,周囲の組織は壊死していた。鼻内内視鏡で鼻内に壊死組織がみられ,鼻中隔欠損も認められた。CT所見では,鼻中隔欠損,左鼻腔内に腫瘤性病変を認めた。既往歴の関節リウマチに対してメトトレキサートの内服治療中であり,口腔内潰瘍部の生検結果からもメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患として矛盾しない結果であった。当院血液内科医に相談しMTX-LPDの診断となりメトトレキサート服用を中断した。2週間の休薬で硬口蓋の病変は自然退縮傾向を認め,経過観察とともに瘻孔の縮小を認めた。

    メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患はリンパ節外病変が多く,関節リウマチに合併することが多いとされるため,メトトレキサート服用中の口腔内・鼻内の腫瘤性病変の鑑別には,メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患を念頭に置き精査をすすめることが重要である。

  • 石橋 直樹, 宇田川 友克, 栗原 渉, 茂木 雅臣, 中澤 宝, 櫻井 結華, 小島 博己
    原稿種別: 原著
    2022 年 65 巻 3 号 p. 112-116
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    めまいは多くの人々が経験する一般的な症状であるが,原因としては末梢性のめまいが最も多い。末梢性めまいを引き起こす疾患の一つにPendred症候群がある。Pendred症候群はめまいとともに,高度の感音難聴と前庭水管拡大,甲状腺腫を合併する。しかしながら,これらの症状は必ずしも同一時期に発症するとは限らず,個別に診断されることも珍しくない。

    今回われわれは幼少期から高度の難聴を患い,壮年期になって重度のめまいを発症したPendred症候群を経験した。紹介元病院の入院時の所見として,頭位眼振検査では顕著な右向き水平回旋混合性眼振が認められた。純音聴力検査では両側高度感音難聴,画像検査では著明な両側前庭水管の拡大,および甲状腺腫大を認め,以上より,Pendred症候群と診断した。抗めまい薬等により,めまい症状は軽快しており,現在,紹介病院と連携してPendred症候群の諸症状・所見を経過観察中である。

境界領域
  • 小森 学
    原稿種別: 境界領域
    2022 年 65 巻 3 号 p. 117-121
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    先天性難聴は出生1,000人に1~2人に発症するとされており,遺伝子は小児期までに発症する感音難聴の6~7割程度に関与していると考えられている。現在までに100種類を超える原因遺伝子が見いだされており,年々その数は増加している。現在は主に確定診断に留まっているものの,随伴症状の予測や治療方針の決定に非常に有効な検査であり,すでになくてはならないものになっている。治療についてもそう遠くない未来において遺伝子治療が本格的に始まるものと考えられている。

    本稿では先天性難聴の診療の実際に加え,先天性サイトメガロウイルス,非症候群性難聴の代表的な遺伝子変異であるGJB2,SLC26A4,OTOF,ミトコンドリア遺伝子,症候群性難聴のUsher症候群,BOR症候群について概説した。

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