小児期副鼻腔炎の特殊性を検討し, その主因と考えられる自然変動の実態が先天的遺伝的素因と如何なる関連をもつかを, 同一人の長期的観察成績を中心として検討した。
その結果,
1.小児期の副鼻腔炎の発症や慢性化には, 明らかに個人差が認められ, 年令的にもある傾向をもつていることを認めた。
2.親子間の罹患状態には明らかな遺伝傾向があることを認めた。
3.親子間の病変の程度, 臨床病型, 洞発育にも明らかな家族相似性を認めた。またその中で洞発育が最も遺伝的傾向が強いことを明らかにした。
4.このような病態の相似性は年令が長ずるにしたがつて, その相似性が強くなることを実証した。
5.小児期の副鼻腔炎の長期的病変の変動は, 両親の病変に相似する方向に変動することを認めた。
6.本症には罹り易い素因, 罹り難い素因, また治り易い素因, 慢性化し易い素因の存在することを認めた。
7.洞発育および洞発育の伸び率は, 病変および病変の変動と密接な関係を有していることから, 本症発症にはこの洞発育という局所的先天素因が重要な役割りを演じているものと考えた。
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