耳鼻咽喉科展望
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60 巻, 3 号
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カラーアトラス
綜説
臨床
  • 後藤 一貴, 金谷 洋明, 常見 泰弘, 今野 渉, 柏木 隆志, 近藤 農, 井上 大介, 平林 秀樹, 春名 眞一
    2017 年 60 巻 3 号 p. 123-128
    発行日: 2017/06/15
    公開日: 2018/06/15
    ジャーナル フリー

     喉頭悪性腫瘍の大部分は原発性であり, 転移性のものは稀である。 過去の報告でその頻度は0.09~0.4%と推定されている。 転移性喉頭腫瘍の原発となる臓器は皮膚, 消化管, 腎臓など多岐にわたるが, 今回われわれは前立腺腺癌の声門下転移症例を経験した。

     【症例】 70歳, 男性。【主訴】 嗄声。

     【現病歴】 平成 X 年1月頃より嗄声が出現したため近医耳鼻咽喉科を受診し, 声門下腫瘍を指摘され当科紹介となった。 喉頭内視鏡検査にて声門下に暗赤色の表面平滑で境界明瞭な腫瘤を認めた。 頸部造影 CT では, 声門下前方に造影効果のある腫瘍を認めた。 リンパ節転移は認めなかった。

     【経過】 直達喉頭鏡にて病変を切除し, 腺癌の診断を得た。 前立腺癌の多発性皮膚転移, 骨転移があり, 前立腺腺癌の喉頭転移と診断した。 腫瘍切除により気道は確保され, 本人, 家族, 他院泌尿器科主治医と相談し, 喉頭への追加治療は行わなかった。 他臓器からの遠隔転移を想定した問診が重要と考えた。

  • 光吉 亮人, 西谷 友樹雄, 大村 和弘, 青木 謙祐, 浅香 大也, 清野 洋一
    2017 年 60 巻 3 号 p. 129-133
    発行日: 2017/06/15
    公開日: 2018/06/15
    ジャーナル フリー

     鼻出血は耳鼻咽喉科医が日常診療において頻回に診療する疾患であるが, その中には外来処置が困難で初期対応を誤ると致命的になりうる症例も存在する。 今回われわれは, 上下顎前方移動術後の顎動脈仮性動脈瘤から大量鼻出血をきたした1例を経験したので報告する。

      症例は26歳女性で, 受診18日前に他院口腔外科にて上下顎前方移動術を施行され, 経過良好にて退院するも, その後より鼻出血を繰り返し, 当院救急を受診した。 当院で施行した血管造影検査にて術後性左顎動脈仮性動脈瘤と診断し, 動脈塞栓術を施行し止血し得た。 術後12ヵ月時点で鼻出血は認めていない。

     仮性動脈瘤からの鼻出血は初期対応を誤ると致死的になりうる。 難治性の大量鼻出血を診察する際には仮性動脈瘤の存在も念頭に置き, 外傷や手術歴, 放射線照射歴や真菌感染など仮性動脈瘤を引き起こす疾患の有無を確認することが重要と考える。 また, 仮性動脈瘤による鼻出血に対しては動脈塞栓による止血術が有用と考えられた。

  • 菊地 瞬, 飯村 慈朗, 岡田 晋一, 小島 慎平, 久保田 俊輝, 三浦 正寛, 千葉 伸太郎
    2017 年 60 巻 3 号 p. 134-139
    発行日: 2017/06/15
    公開日: 2018/06/15
    ジャーナル フリー

     今回われわれは, 内視鏡下鼻副鼻腔手術の術中所見および内服歴よりビスフォスフォネート関連顎骨壊死 (Bisphosphonate-Related Osteonecrosis of the Jaw: BRONJ) の診断にいたった1例を経験した。 症例は76歳女性で, 4年前から繰り返す膿性鼻汁と頬部痛を主訴に当院を受診した。 副鼻腔 CT 所見にて術後性上顎嚢胞と診断し, 左内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行した。 手術中に排膿部に壊死骨を認め, その術中所見および内服歴より BRONJ の診断にいたった。 ビスフォスフォネート製剤は骨粗鬆症等に使う薬剤であり, 創傷治癒不全を惹起し顎骨壊死を起こすことがある。 BRONJ は, 耳鼻咽喉科領域においては症例報告が散見される程度の疾患にとどまっている。 顎骨が露出する可能性がある手術では医原性に BRONJ を発生させてしまう危険性があると考えられる。 耳鼻咽喉科領域においても BRONJ を新たに発生させないために BRONJ は知っておくべき疾患であると考えた。

  • 小島 慎平, 露無 松里, 加藤 孝邦, 小島 博己
    2017 年 60 巻 3 号 p. 140-145
    発行日: 2017/04/19
    公開日: 2018/06/15
    ジャーナル フリー

     悪性黒色腫が喉頭に転移した極めて稀な1例を経験したので, 文献的考察を加え報告する。 症例は76歳男性。 左手第4指原発の皮膚腫瘍に対し悪性黒色腫と診断され, 近位指節間関節にて第4指切断, 左腋窩リンパ節郭清が施行された。 その後, 皮膚, 肺, 脳転移が認められ, 当院皮膚科にて化学療法, 外科的治療, ガンマナイフが施行された。 皮膚科加療12年後, 嗄声が出現し当科を受診した。 左声門から声門下に喉頭粘膜下腫瘍を認め, 喉頭直達鏡下生検にて悪性黒色腫の喉頭転移と診断した。 再発進行癌であったこと, 本人の音声機能温存の強い希望から, 喉頭全摘出を選択せず喉頭への局注療法を施行した。 局注療法を施行している数ヵ月は喉頭病変の大きさに著変を認めなかったが, 悪性黒色腫の転移による小腸イレウスなど全身状態の悪化も伴い, 治療の中止を余儀なくされた。 その後, 喉頭病変が増大し, イレウス解除術と同時に気管切開を施行したが, 肺転移が悪化したため永眠した。 本症例においては局注療法の施行中は, 腫瘍の明らかな増大を認めず, 局注療法が病変の進行を遅らせた可能性があるが, 長期効果についての検討はさらなる症例の積み重ねが必要である。

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