頭頸部扁平上皮癌培養細胞を対象とし, 上皮成長因子 (Epidermal Growth Factor; EGF), 形質転換成長因子 (Transforming Growth Factor-alpha; TGF-α) の作用, またこれらの細胞のEGFレセプター (EGFR), c-erbB-2, cyclin D1発現, ビタミンA, Dの腫瘍細胞増殖に対する作用, 抗EGFR抗体の細胞増殖や化学療法の感受性などに対する影響を検討した。培養上清中のEGFおよびTGF-α産生量はすべて検出限界値以下であった。EGFR, c-erbB-2は全ての細胞に発現し, サイトカイン (IFN-α, β, TNF-α) によってEGFR発現は増強した。2種類の腫瘍がEGFによって増殖促進され, この増殖促進効果は抗EGFR抗体添加により抑制された。さらにこれら2種類の細胞にはセルサイクルの変化すなわちS+G2M期への集積がみられた。ビタミンA, DによるEGFR発現への影響はみられなかったが, ビタミンAによりEGFの腫瘍増殖促進効果が抑制された。cisplatin, 5-fluor-ouracil, adriamycinの抗腫瘍効果は抗EGFR抗体添加によって増強された。
以上より頭頸部扁平上皮癌治療における抗EGFR抗体, ビタミンAなどの臨床応用の可能性が示唆された。
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