耳鼻咽喉科診療所を受診する小児中耳炎のうち反復性, 遷延性, 難治性滲出性中耳炎罹患児を中心に鼓膜弛緩部の変貌について検討した。観察には鼓膜内視鏡とCCDカメラならびに専用の画像ファイリングコンピュータを用いた。
対象症例は240名で, 1年におよぶ治療を継続し, 少なくとも3年以上経時的に追跡している症例とした。弛緩部陥凹評価はTosの分類を用いた。
結果
1.Tosの病型分類に基づいて0-IV型に分類した結果, 初診時0型は43.4%, I型は36.0%, II型は16.4%, III型は4.0%, IV型は0真2%であった。終診では, 0型は40.9%, I型は39.0%, II型は148%, III型46%であった。IV型は初診時1例 (0.2%) に見られ, 終診でもこの症例のみに見られた。
2.弛緩部陥凹の改善についてはII型までであれば中鼓室の改善に伴って正常位置に回復する場合もあるが, III型になると改善が見込めないことが多い。
3.III型でダウン症候群や口蓋裂の子供たちが多く含まれることから, III型にいたる症例の背景には潜在的に耳管機能不全があるものと推測される。
4.今回の調査では弛緩部型真珠腫を形成する症例は見られなかった。
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