耳鼻咽喉科展望
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65 巻, 1 号
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カラーアトラス
綜説
  • ―治療のエビデンスと実際の治療―
    小川 武則
    原稿種別: 総説
    2022 年 65 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2022/02/15
    公開日: 2023/02/15
    ジャーナル フリー

     頭蓋底浸潤頭頸部がんの治療法は, 大きな変遷を迎えている。 古くから行われている開頭頭蓋底手術に代わり, 内視鏡頭蓋底手術の適応は拡大しつつある。 さらに, 非手術治療においても, シスプラチン併用化学放射線治療の他, 超選択的動注化学放射線治療 (RADPLAT) が行われ, 放射線治療では強度変調放射線治療 (IMRT) や粒子線治療が根治治療として検討され, 再発がんにおいては, ホウ素中性子捕捉療法 (BNCT), 光免疫治療, 免疫チェックポイント阻害薬などの新治療が保険適応となっている。 頭蓋底浸潤がんにおいてもこれらの新治療を適切に用い, さらに組み合わせることで生命予後と QOL 向上が期待できる新時代を迎えている。

臨床
  • 加藤 照幸
    原稿種別: 臨床
    2022 年 65 巻 1 号 p. 18-26
    発行日: 2022/02/15
    公開日: 2023/02/15
    ジャーナル フリー

     今回われわれは, 鼻中隔癌が頭蓋内へ浸潤した結果, 両側前頭葉に膿瘍を形成し, 著明な脳浮腫による意識障害, 痙攣を来たした症例を報告する。

     症例は62歳男性。 意識障害と痙攣のため救急搬送された。 頭部 CT および造影頭部 MRI では, 前頭蓋底に浸潤する鼻中隔癌と, 両側前頭葉に膿瘍を形成し, その周囲に広範な脳浮腫を認めた。 病理組織検査の結果, 非角化扁平上皮癌と診断され, 画像上リンパ節や遠隔転移は認めなかった。 脳神経外科と合同で, 開頭による切開排膿と開頭併用で内視鏡下鼻腔・前頭蓋底悪性腫瘍切除術を行い, 頭蓋底は大腿筋膜と前頭筋骨膜弁で多層閉鎖した。 術後に放射線治療を行い, 治療後 10ヵ 月時点での経過は良好である。 鼻中隔癌の初発症状が突然の意識障害, 痙攣という進行した状態で発見されたが, 適切な治療を行い救命された稀な症例であった。

  • 山口 裕聖, 大平 真也, 神山 和久, 綱 由香里, 和田 弘太
    原稿種別: 臨床
    2022 年 65 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2022/02/15
    公開日: 2023/02/15
    ジャーナル フリー

     発熱, 咽頭痛などの症状を主訴とする患者は耳鼻咽喉科を受診することが多いが, 非典型的な口腔粘膜病変を認めた際には全身性疾患も疑い, 各診療科の連携も重要となる。 今回, 咽頭痛, 発熱を主訴に耳鼻咽喉科を受診し, Stevens-Johnson 症候群と診断された2症例を経験したため報告する。

     2症例とも発熱, 咽頭痛を主訴に耳鼻咽喉科を受診した。 咽頭粘膜病変のみならず皮膚粘膜病変も認めたことから Stevens-Jonson 症候群が疑われ, 速やかに皮膚科によりステロイド加療が開始された。 咽頭粘膜病変も認めたため, 耳鼻咽喉科も併診となった。 入院時に施行した皮膚生検結果から, Stevens-Jonson 症候群と確定診断した。 原因としては, マイコプラズマ感染や薬剤性が考えられた。 加療により, 徐々に皮膚粘膜所見の改善を認め, 後遺症を残すことなく治癒した。

     Stevens-Johnson 症候群は早期診断・治療が重要であり, 治療が遅れると後遺症が残り, 最悪の場合死に至る病気である。 咽頭痛や発熱を訴える患者を診たら, 皮膚粘膜所見にも注意し, 異常所見を認めた際には Stevens-Johnson 症候群の可能性も念頭に置き, 速やかな他科 (特に皮膚科) への連携が重要である。

  • 明石 愛美, 深澤 雅彦, 三上 公志, 肥塚 泉
    原稿種別: 臨床
    2022 年 65 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2022/02/15
    公開日: 2023/02/15
    ジャーナル フリー

     症例は27歳, 女性。 菌血症にて入院中であったが, 嗄声を自覚し当科へ依頼となった。 喉頭内視鏡検査で, 左声帯は傍正中位で固定, 右声帯は可動良好で air way は保たれていた。 入院時の胸部X線検査および頸胸部CT検査にて, 著明な心拡大および肺動脈の拡張が認められた。 左声帯麻痺は拡張した肺動脈が左反回神経を圧迫したためであろうと考えた。 このように, 心脈管疾患に伴い発症する左声帯麻痺は Ortner 症候群とよばれている。 今回われわれは, Ortner 症候群の心脈管疾患としては稀である肺高血圧症に起因した声帯麻痺の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する。

     声帯麻痺は耳鼻咽喉科医がしばしば遭遇する症候であり, その原因は多岐にわたる。 原因検索をする上では, 喉頭内視鏡による喉頭疾患の確認, 画像検査による頸部, 縦隔における腫瘍性病変の確認のみならず, 原因検索には心脈管疾患の可能性も念頭に置く必要があると思われる。 そして, 合併する自覚症状として呼吸困難や胸痛, 血痰や浮腫など心脈管系の疾患に伴う症状の有無について聴取する必要があると思われる。

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