当科において過去7年間に治療を行った口腔扁平上皮癌症例49例のうち, 70歳以上の23例を高齢者群として, 70歳未満の対照群26例と比較することで臨床的検討を行った。
高齢者群は23例で全体の47%を占め, 男性10例, 女性13例であった。発生部位では舌, 歯肉が多かった。高齢者群のTNM病期分類はT1 3例, T2 12例, T3 7例, T4 1例, NO 21例, N1 1例, N2 1例, N3 0例, 病期別ではI期3例, II期12例, III期7例, IV期1例であり比較的早期症例が多かった。高齢者群では循環器や呼吸器疾患などの合併症を有するものが多く, 精神疾患, 整形外科的疾患を有するものの一部では治療法の選択に影響する症例も見られた。治療方法では手術療法を施行したものが多く, 治療態度が根治的であった症例では予後は良好であり, 高齢者群と対照群の粗生存率および疾患特異的生存率には有意差を認めなかった。切除においては種々の要因のために術前照射後の縮小手術となった症例もあり, 再建においては材料の工夫により術後の安静度を軽減し早期の離床を目指した。高齢者群の治療では, 種々の因子のために姑息的になることもあるが, 根治的治療が行われれば予後は対照群と差は少なく, 全身状態と本人の意欲があれば手術内容を考慮するなどして可能な限り根治を目指した治療を行うことが有用と思われた。その治療においては, 暦年齢だけでなく, 合併症を含めた全身状態, 患者や家族の希望, 社会的背景を考慮して治療法を選択することが重要と思われた。
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