鼻科用FOMの副鼻腔炎に対する有効性を基礎的な面から検討するために, 3%鼻科用FOMを噴霧投与した時の上顎洞内濃度, 組織中濃度並びに血清中濃度について検討し, 以下の成績を得た。
1) 投与直後の上顎洞内濃度は, 自然孔付近では2.93->200μg/ml, 上顎洞側壁では2.35->200μg/ml, 上顎洞底では2.74-187.5μg/mlであった。
2) 投与後の上顎洞粘膜中濃度は, 投与直後では5.84-40.64μg/g, 0.25時間後では7.84-23.56μg/gであった。鼻腔粘膜中濃度は112.5, 125μg/gであった。
3) 血清中濃度は, 投与開始直前は全例検出限界以下であった。投与0.5時間後は1例で検討されたが検出限界以下であった。投与後1時間では, 1例のみに検出されその濃度は2.65μg/mlであった。
以上, 鼻科用FOMを噴霧投与した際の上顎洞内濃度並びに上顎洞粘膜中濃度は経口投与時に比べ高く, 十分に菌消失を期待できる濃度であった。この結果は, 本剤の副鼻腔炎に対する臨床効果を裏づけるものと考えられた。また, 投与後, 血中に本剤は検出されないかあるいは検出されてもその濃度は低かったことから, 血中への移行1生は低いと考えられ, 本剤の高い安全性を裏づけるものと考えられた。耳鼻咽喉科的処置を行い自然孔を十分に確保した後に鼻科用FOMを噴霧投与することで高い上顎洞内濃度並びに組織中濃度が得られる一方, 血中への移行性は低いという成績は, ネブライザー療法の副鼻腔炎に対する高い臨床効果と安全性を基礎的な面から立証することができたと考えられた。
抄録全体を表示