耳鼻咽喉科展望
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39 巻, 2 号
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  • 今野 昭義, 寺田 修久, 花沢 豊行, 沼田 勉, 片橋 立秋
    1996 年 39 巻 2 号 p. 127-136
    発行日: 1996/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    鼻アレルギーにみられる鼻粘膜の血管拡張および血漿蛋白漏出の発現機序に局所および中枢を介する神経反射は一部関与する。 蒼白浮腫状の鼻粘膜では間質浮腫が著明であり, レーザードップラー血流計で測定した鼻粘膜血流は著明に減少している。また浮腫状の鼻粘膜においては容積血管の交感神経刺激に対する反応は減弱している。鼻アレルギー症例にみられる高度な鼻粘膜腫脹の大部分はペプチドロイコトリエン, ヒスタミン, PAFなど多種類の化学伝達物質の鼻粘膜血管に対する直接作用によるものであり, その中でもペプチドロイコトリエンが最も重要である。これらの化学伝達物質はお互いに作用し合うことによって鼻粘膜の標的器官に対する作用が増幅される。
  • ABRおよび下丘電位のBinaural Interaction
    藤田 博之
    1996 年 39 巻 2 号 p. 137-144
    発行日: 1996/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    聴覚系の特有の機能である両耳相互作用についてモルモットを用いて実験的に証明した。方法は全身麻酔下でABRおよびBI (Binaural Interaction) を記録した後, 頭蓋骨を削除し直接左下丘に電極を刺入し, 下丘電位とBIを記録した。その結果, ABRではP3以降に両耳刺激波形と加算波形の間に振幅差, 位相差を認めたため上オリーブ複合体以上の中枢がBIに関与していることが確認された。また下丘電位では電極の刺入部位と反対側の波形の振幅が大きく, 潜時も短縮された。このことから下丘電位は対側優位であることが確認された。さらにABRと下丘電位のBIの波形の潜時は, ともに刺激音圧と負の相関が認められた。
  • 大久保 仁, 奥野 秀次, 山田 麻里, 辺土名 仁
    1996 年 39 巻 2 号 p. 145-149
    発行日: 1996/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    滲出性中耳炎患者22名24耳で, いずれもチンパノグラムがC型ないしはB型を示し平均年齢が48.7歳と比較的年齢の高い滲出性中耳炎が対象とされた。
    方法は, イオントフォレーゼ麻酔下の鼓膜切開孔からアンチモンpHメータが挿入された。チンパノメトリとpH値を比較するとC, B型共にpH7.4台を越えるものはなくpHの平均値は7.05±0.27近辺に落ち着く。
    この結果は, 滲出性中耳炎の陰圧形成がもっぱら中耳腔酸素の粘膜吸収が原因とされてきたが, 酸素より液体に溶解性の高い炭酸ガスが滲出液中に溶解する可能性が高い。
    即ち, 中耳腔のガス組成は, 窒素約79%, 酸素約9%, 炭酸ガス約6%, 蒸気6%で構成され, 滲出性中耳炎の陰圧化が酸素が吸収される事を考慮しても, なお, 水と親和性の高い炭酸ガスが滲出液中に飽和して中耳腔のガス環境を陰圧化の方向に導く可能性が示唆された。
    また, モデル実験から, 滲出性中耳炎症例のpH値がばらついた理由は, 疾患のステージに基づく滲出液と中耳腔気体との体積比率に炭酸ガス溶解度が高い相関を持つ事が示唆され, 滲出性中耳炎の陰圧形成には, 滲出液中への炭酸ガスの溶解度が大きな要因の一つと推論された。
  • 青木 和博, 三谷 幸恵, 辻 富彦, 濱田 幸雄, 森山 寛
    1996 年 39 巻 2 号 p. 150-157
    発行日: 1996/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    鼓膜換気チューブを留置した小児滲出性中耳炎例36例を対象に, チューブ留置後14日, 1-2ヵ月, 3-4ヵ月, 5-7ヵ月, 11-13ヵ月, 18ヵ月の時点で外耳道を閉鎖して中耳含気腔の圧変化と容積を測定した。また, 初診時のシュラー位レントゲンフィルム上における蜂巣発育面積, チューブ留置時に鼓室より採取した中耳粘膜の組織学的変化も合わせて検討した。中耳粘膜の上皮と上皮下の組織所見については, 我々の炎症程度の基準に応じて4段階に分類した。
    初診時のレントゲンフィルム上での蜂巣発育面積と含気腔容積はチューブ留置後2・3ヵ月を中心に高い相関関係を示していた。この事実は鼓膜チューブ留置後3ヵ月を経過すると, 中耳含気腔内粘膜の腫脹も取れ, 正常の厚さにもどったことを示していると理解できる。含気腔圧は同時期に最低となり, その後徐々に増加していく。その後の圧上昇の回復程度は粘膜病変度の影響を強く受け, 粘膜病変度の進行した症例群では回復は遅く, 軽度粘膜病変群と比較して両群問には明らかな有意差が認められた。高度粘膜病変例ではその回復に1年以上の長期間を要することが明らかとなった。
    鼓膜チューブを留置した滲出性中耳炎例で, 中耳含気腔圧と容積を測定することは滲出性中耳炎例の回復程度を知る上で重要で, チューブの抜去時期を探る一つの指標となり得ると考えられる。
  • 井上 貴博, 冨田 俊樹, 新田 清一, 高木 均, 加納 滋
    1996 年 39 巻 2 号 p. 158-162
    発行日: 1996/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    原発性上皮小体機能充進症の術前部位診断は, 手術の成功を左右すると言っても過言ではない。画像による術前部位診断が可能な症例は, 術中的確に上皮小体病変の同定ができ, 短時間かつ他の組織に無用な侵襲を与えずに手術が行える。画像診断は超音波, subtraction scintigraphy, CT, MRIなどが用いられている。現在, subtractionscintigraphyは一般には, 201 Tl-99m Tc subtraction scintigraphyが用いられている。今回われわれは, 99m Tc・MIBI-99m Tc subtraction scintigraphyと201 Tl-99m Tc subtraction scintigraphyを施行し比較検討したが, 99mTc・MIBI-99m Tc subtraction scintigraphyの方が描出が優れていた。今後, 99mTc・MIBI-99m Tc subtractionscintigraphyとMRI等を併用することによって, より適切な術前部位診断が可能になると思われる。
  • 藤森 功, 野沢 出, 久松 建一, 小塚 雄史, 中山 久代, 河野 正, 村上 嘉彦
    1996 年 39 巻 2 号 p. 163-167
    発行日: 1996/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    上顎洞アスペルギルス症が眼窩, 頭蓋内に進展した1症例を経験したので報告した。症例は76歳男性で, 平成6年9月に近医にて上顎洞開放術を施行し, アスペルギルス症との診断を得た。その後, 眼球突出, 複視を訴えたため, CT, MRIを施行したところ, 左眼窩内に上顎洞に連続するmasslesion を認めた。全身的な抗真菌剤の投与とともに経鼻外的に病巣廓清術を行った。1ヵ月後のCT, MRI所見では, 前頭蓋窩, 中頭蓋窩へさらに進展が認められており, その後, 脳梗塞, 発作性上室性頻脈にて死亡した。臨床的にはきわめて, まれな上顎洞アスペルギルス症の広範な進展例と考えられた。
  • 藤田 信哉, 山中 敏彰, 安東 香織, 宮原 裕, 松永 喬
    1996 年 39 巻 2 号 p. 168-171
    発行日: 1996/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    頭部外傷後の耳小骨不完全離断症例を報告した。当初は外傷性鼓膜穿孔と考えたが, 保存的治療では難聴の改善がなく鼓室形成術を施行した。術後45dBの聴力の回復をみた。頭部外傷後の伝音性難聴で病変の確定が困難な場合には, 積極的な対応が望まれる。
  • 水谷 俊美, 大蔵 眞一, 飯野 ゆき子
    1996 年 39 巻 2 号 p. 172-176
    発行日: 1996/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    巨大な側頭骨骨腫に, 二次的な外耳道狭窄による外耳道真珠腫を合併した稀な症例を経験した。症例は左難聴, 左耳漏を主訴とする51歳女性である。耳鏡所見にて, 外耳道後壁から膨隆しほぼ外耳道を閉塞する固い腫瘤を認めた。CT像, MRI像から側頭骨乳突部表層から生じ外耳道まで進展した骨原性腫瘍と診断し, 腫瘍摘出術および外耳道・鼓室形成術を施行した。外耳道真珠腫は鼓室弛緩部から上鼓室まで進展していた。病理組織学的には, 緻密骨と海綿様骨からなる混合型骨腫であった。
  • 富谷 義徳, 本多 芳男, 矢部 武, 菊池 康隆, 太田 正治
    1996 年 39 巻 2 号 p. 177-181
    発行日: 1996/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    奇形腫は仙尾部, 性腺などに多く発生するが, 頭頸部領域で見られることは比較的少なく, 特に中耳および耳管に発生することはきわめて稀である。今回我々は中耳奇形腫の1症例を経験したので文献的考察を加えてここに報告した。症例は6歳男児で反復する右耳漏および難聴にて発症した。充実性の腫瘤が中耳腔から右鼓膜の穿孔縁を通して外耳道にかけて認められており, 炎症性肉芽および良性腫瘍を疑って手術を施行した。手術時腫瘤は中耳腔に充満しており, 茎部が確認できないため減量鉗除していくと中耳腔から拡大した耳管内にまで侵入していた。耳管内の腫瘤を鉗除していくと内頸動脈の拍動が認められたため, 腫瘤と内頸動脈の間の骨壁が消失していることが示唆された。これ以上の鉗除は危険と考え手術を終了した。腫瘤が全摘されているか否かの確認はできなかった。病理組織学的検査にてMatureTeratoma (成熟奇形腫) と判明した。本症例は現在耳漏が停止し臨床的に術後経過良好であるが, 再発の可能性も含め, 今後長期間にわたる経過観察が必要であると考えている。
  • 牛島 定信
    1996 年 39 巻 2 号 p. 182-187
    発行日: 1996/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原田 昌彦
    1996 年 39 巻 2 号 p. 188-192
    発行日: 1996/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 畔柳 達雄
    1996 年 39 巻 2 号 p. 193-201
    発行日: 1996/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 増野 博康, 大内 利昭, 小形 章, 吉原 重光, 佐藤 靖夫, 大平 達郎, 神崎 仁
    1996 年 39 巻 2 号 p. 207-212
    発行日: 1996/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    耳鳴を主訴に外来を受診した脳血管障害を有する症例のうち鎮静剤, 精神安定剤を併用した症例を除く, 男14例, 女14例, 計28例 (右耳鳴6例, 左耳鳴15例, 両側耳鳴3例, 頭鳴4例) を対象として, イブジラストの有効性, 安全性及び有用性を検討し, 以下の結果を得た。
    1) 耳鳴症例, 頭鳴症例ともに投与前および最終検査時 (投与開始後8週) の間の5周波数平均純音聴力に有意の差は認められなかった。
    2) 耳鳴の自覚的大きさおよび自覚的気になり方ともに投与前と最終診察時 (投与開始後8週) の間には検定 (Wilcoxon) にて傾向差が認められた (p<0.1)。
    3) 投与開始後4週の改善度の上昇はプラセボ効果が関与しているとも考えられるが, さらに投与開始後8週の改善度の上昇が見られたことは本剤の薬効を示唆していると考えられた。
    4) 投与開始後8週の全般改善度について著明改善はなく, 改善が23.1%, 軽度改善も含めた軽度改善以上は57.7%であった。
    5) 60歳以上の症例の全般改善度は59歳以下のそれと比較して改善, 軽度改善以上ともに高かった。
    6) 副作用は2例に認められたが, いずれも軽度のものであった。
    イブジラストは脳血管障害を有する耳鳴に対し有用であると思われた。
  • 真崎 正美, 米本 友明, 春名 裕恵, 皆藤 彦義
    1996 年 39 巻 2 号 p. 213-221
    発行日: 1996/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    鼻茸の成因については不明な点が多いが鼻茸組織中の炎症細胞, 特に好酸球の動態が注目されている。さらに副鼻腔炎に対する14員環マクロライド系抗生物質の臨床効果が報告され, これら基礎的, 臨床的知見をもとに鼻茸に対する保存的治療の可能性を探るためにフマル酸エメダスチン (ダレンカプセル ®) とロキシスロマイシン (ルリッド錠 ®) の併用長期投与を行い, その臨床効果について検討した。対象とした26症例のうち自覚症状 (鼻漏, 鼻閉, 嗅覚) は軽度改善以上93.1%, 鼻鏡所見 (鼻粘膜の発赤, 鼻粘膜の浮腫・腫脹, 鼻汁量) は軽度改善以上96.7%, 鼻茸の縮小がみられたのは51.7%であった。画像所見では鼻腔・副鼻腔の病的陰影の軽減と粘膜の腫脹が減少していた。二剤併用による副作用はみられず, その有用性が示された。
  • 荻野 敏, 菊守 寛, 後藤 啓恵, 入船 盛弘
    1996 年 39 巻 2 号 p. 222-231
    発行日: 1996/04/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    男性23名, 女性33名のイネ科花粉症を対象に, アゼラスチンの効果を初期投与, 治療投与の2群で比較検討した。
    著明改善は初期投与群28.6%, 治療投与群23.8%と初期投与群で良い効果が見られた。逆に改善以上の改善率はそれぞれ57.1%, 71.4%と治療投与群でより良い効果が認められた。また, 初期投与群では平均約4週間早く投与を開始したことから8週目, 治療投与群では4週目とほぼ同じ時期の症状を比較すると, 初期投与群では症状はより軽症に抑えられている成績が得られた。治療投与群の3例に軽度の眠気の副作用が認められたが, 薬剤の継続投与に問題はなかった。
    アゼラスチンはイネ科花粉症に対しても初期投与, 治療投与いずれにおいても優れた効果が見られ, 特に花粉飛散初期からの投与は有効性が高く使用する価値のある薬剤であると思われた。
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