耳鳴を主訴に外来を受診した脳血管障害を有する症例のうち鎮静剤, 精神安定剤を併用した症例を除く, 男14例, 女14例, 計28例 (右耳鳴6例, 左耳鳴15例, 両側耳鳴3例, 頭鳴4例) を対象として, イブジラストの有効性, 安全性及び有用性を検討し, 以下の結果を得た。
1) 耳鳴症例, 頭鳴症例ともに投与前および最終検査時 (投与開始後8週) の間の5周波数平均純音聴力に有意の差は認められなかった。
2) 耳鳴の自覚的大きさおよび自覚的気になり方ともに投与前と最終診察時 (投与開始後8週) の間には検定 (Wilcoxon) にて傾向差が認められた (p<0.1)。
3) 投与開始後4週の改善度の上昇はプラセボ効果が関与しているとも考えられるが, さらに投与開始後8週の改善度の上昇が見られたことは本剤の薬効を示唆していると考えられた。
4) 投与開始後8週の全般改善度について著明改善はなく, 改善が23.1%, 軽度改善も含めた軽度改善以上は57.7%であった。
5) 60歳以上の症例の全般改善度は59歳以下のそれと比較して改善, 軽度改善以上ともに高かった。
6) 副作用は2例に認められたが, いずれも軽度のものであった。
イブジラストは脳血管障害を有する耳鳴に対し有用であると思われた。
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