オレオサイエンス
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17 巻, 5 号
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特集総説論文
  • 中 建介
    2017 年 17 巻 5 号 p. 203-210
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    オクタキス(ジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサンとアリルコハク酸無水物とのヒドロシリル化により得られるオクタキス(プロペニルジメチルシロキシ無水コハク酸)オクタシルセスキオキサン(OS-SA)は,開環および縮合反応を行うことで簡便に16末端のかご型オクタシリケート(OS)をコアとする有機無機ハイブリッドデンドリマーを合成することができる前駆体として有用である。OSコアデンドリマーは分子レベルで剛直なOS骨格によって誘起される特徴的な構造のため周囲の有機分岐鎖は適度な運動性を有するものの, 末端基間の距離は保っているという特異な分子形態を有している。本稿では,OSをコアとする種々の機能性末端基を有する有機無機ハイブリッドデンドリマーについて,主として固体機能材料としての特徴について述べる。π共役ユニットとしてビフェニル基およびカルバゾール基を末端に有するOSコアデンドリマーの合成を行ったところ,ガラス転移温度が室温付近以上のアモルファス性透明自立膜が得られることがわかった。また,OS-SAの開環および縮合反応に異なる基質を用いることで,電子供与性のカルバゾール基と電子受容性のナフタルイミド基や互いに相溶化しないパーフルオロカーボンとハイドロカーボンなど2種類の機能性官能基を末端部位に交互に導入した有機無機ハイブリッドデンドリマーを合成することができ,これらは単一分子としての性質のみならず,両者の相互作用による新たな機能を発現した。

  • 杉本 洋輔, 大谷 亨
    2017 年 17 巻 5 号 p. 211-216
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    ポリグリセロールデンドリマー(PGD)やハイパーブランチポリグリセロール(HPG)は,親水性の特徴を示すのみならず,水中では弱い疎水性の特徴を示す。この弱い疎水性環境とPGD,HPDの枝分かれ度の違いに起因するナノ空間によって,様々なサイズの塩基性低分子化合物を認識するホスト分子として機能することが明らかになってきた。一方,親水性の特徴から,血液からの診断目的で使用されるバイオセンサ表面にPGDやGDを固定化すると,血液中のタンパク質の吸着を抑制する効果が期待されるが,疎水場の提供によってむしろ抗体を吸着する選択的なタンパク質吸着制御の可能性が示された。PGD及びHPDは,枝分かれ度とナノ空間の違いに起因する分子間相互作用に選択性を付与するユニークな特徴が期待される。

総説
  • 菅野 道廣
    2017 年 17 巻 5 号 p. 217-222
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    本誌17巻第2号(2017)に掲載されたビタミンとしてのコリンの生理活性についての日比野の論文1)は関連分野の理解に大いに資するものであが,コリンの代謝産物で,健康と関わりがあるトリメチルアミン-N-オキサイド(TMAO)に関しては割愛されている。 摂取したコリンの一部は腸内細菌によってトリメチルアミンに変換され体内に取り込まれ,肝臓においてTMAOに変換され,動脈硬化の危険因子となることが指摘されている。したがって,TMAOは安全性と関わる成分でもある。実際には,コリンはそのものとしてよりも大部分がホスファチジルコリン(PC)として摂取れているが,PCは動脈硬化予防的に働くことが指摘されていて,問題は複雑である。卵はコリンのよい供給源であり(Lタイプで147 mg),1 日1~2個程度の摂取では血清中のTMAOレベルの上昇は認められないようである。腸内細菌との関わりは,コリンの認知機能とも結びつく興味深い話題の1つでもある。

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