マンノシルエリスリトールリピッド (MEL) は, 酵母によって各種バイオマスから生産される両親媒性脂質 (バイオサーファクタント) の一種であり, 優れた環境・生体適合性と多彩な機能を併せ持つ先進的なバイオベース素材として注目されている。しかし, これまで発見・同定されている構造種が少なく, その用途開拓が制約されていた。今回, 生産酵母や培養条件を適宜選択することで, 従来とは「疎水基・親水基の構造および組成」が大きく異なる, さまざまなMEL同族体の開発に成功した。まず, 従来のMELが二鎖型の糖脂質であるのに対して, 培養条件を精密に制御することで, 三鎖型, および一鎖型MELが優先的に生産されることを見出した。これにより, 幅広い親水一疎水バランス (HLB) を有する各種のMELの提供が可能となった。また, ある種の酵母が, 既存のMELとは糖鎖の立体構造が異なる新しい構造種 (反転型MEL) を生産することを見出した。分子 (糖鎖) のキラリティーの違いは, 液晶形成や生理活性に大きく影響するため, これらの作り分けはMELの医薬・化粧品分野への用途展開を大きく促進することとなった。以上のように, バイオプロセスの精密制御により, 異なる用途に対応する種々のMEL同族体をテーラーメイド的に提供する画期的な手法が開発された。
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