ポリフェノール類は,芳香環に2つ以上の水酸基を持つ化合物の総称であり,植物に広く含まれる二次代謝物である。近年では様々な機能性が報告されているが,共通して強い抗酸化性を有することが知られている。抗酸化性はポリフェノールの酸化反応を意味しており,その過程でその化学構造は大きく変化する。この変化は生体内だけでなくポリフェノール類を含む食品の保蔵や加工中でも起こっていると考えられる。本稿では,特に食品加工や保蔵中におけるポリフェノール類の酸化反応に着目して,その化学構造の変化と反応メカニズムについて紹介する。
天然抗酸化剤は生体の還元剤として,活性酸素の過剰生成による酸化傷害から生体を防御する機能を担っている。抗酸化剤の基本的な物理化学的特性を評価するために,電気化学測定は非常に有効な手段である。電気化学測定によって得られるパラメータのうち,筆者らは特に酸化電子数(n)に注目することで,酸化に伴う多量化反応によってnが増大する反応メカニズムを発見した。これはバルク溶液中での抗酸化活性を非常によく説明することができる特性であった。一方で,生体内での反応を考えるうえで,混じり合わない溶液/溶液または溶液/膜界面での反応を観察することは極めて重要である。液/液界面近傍で起こる電子移動の観察にも着手し,疎水性の度合いにより反応機構が異なることを示した。液膜界面での電子移動を観察するために,筆者らが考案した分光測定法についても紹介する。