高温・高圧・強酸性下等の過酷な条件下に棲息する古細菌の存在が知られている。この高度な耐環境性の源として, 生体膜に含まれる環状脂質が挙げられている。われわれは機械的・熱的に安定な脂質膜の構築を目的として, この天然の環状脂質をモデルとした人工環状脂質の合成とその自己組織化に取り組んだ。人工環状脂質の構造上の特徴として, (1) 環状骨格, (2) 環状骨格内のジアセチレン基, (3) エーテル (またはアミド) 結合, (4) 環状骨格の両端に位置する親水基が挙げられる。二種の保護基を選択的に脱保護する, あるいはあらかじめ用意したいくつかのキラルなビルディングブロックをカップリングさせることにより, 立体選択的な人工環状脂質の合成に成功した。さらに種々の自己組織化法により, これらの人工環状脂質がさまざまな自己集合体を構築することを見出した。
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