食品の外観は,食品のおいしさや鮮度,柔らかさなどを推定するための重要な情報である。我々は,食品の外観を自然に変化させるために,いくつかの画像処理技術を開発した。第一の手法は輝度分布操作(LDM)である。この手法により,食品のしっとり感や柔らかさなどの見た目を自然に修正できることを見出した。第二の方法は,Visual Texture Exchange(VTE)である。VTEでは,マグロからトロへ,ブラックコーヒーからカフェラテへなど,食品の見た目の質感をリアルタイムで変化させることができる。第三の方法は,元の食品画像から,油っぽい食品,乾燥した食品,焦げた食品,生の食品などを見た目で作成できる光沢/陰影フィルター制御(GSFO)である。このような画像処理手法と拡張現実技術を応用することで,食材の見た目だけを画像処理で変調させ,人工的に味をコントロールできることを示す。また,拡張現実(Augmented Reality)を用いて食品の外観を変化させることで塩味を変調させて減塩を実現するアプローチを紹介する。
本稿では著者が長年着手していた,脳波を用いた感性のリアルタイム評価について冒頭で紹介し,これを用いることで可能になった例を紹介する。さらに,脳機能を計測することで,オイル摂取がストレスに対してどう働くか,時系列で紹介する。
国内の食品工業界では,PB商品の開発が激化している。それは,消費者のニーズが多様化しており,その多様なニーズに対応するためである。商品開発において,一番重要なのは,客様の多様なニーズを探ることである。味覚センサを用いることで,消費者の求める味のニーズを数値化し,見えるようになる。その結果,商品の開発コンセプトが明確になり,味の目標値が明確になる。そして,今,世界中が市場になってきていて,好みの違いは,お互い理解不能なほどである。その大きな違いを理解しあうために,味の共通の言語(味のものさし)が必要である。
食品の「おいしさ」には,人の五感で知覚される味・香り・食感・外観といった様々な要素が複雑に関わっている。揚げ物やスナック菓子等の固形食品の「おいしさ」評価では,サクサク・パリパリという“音”で表現される食感(テクスチャー)が重要であり,これを客観的に評価する手法が開発されている。本稿では,筆者らの研究グループが開発した「食感音響評価システム」による,咀嚼を模した食品破砕とその破砕音の解析結果を中心に,“音”による食感評価方法について解説する。