アミノ酸や乳酸に代表される多官能メタンには生体内で重要な役割を示すものが多く知られている。したがって,多官能メタン類の合成手法の開発は医薬品や生体親和性材料の探索に繋がる重要な課題である。本総説では,近年我々が開発したジエチルメソキサレート(DEMO)を出発原料とした新たな多官能メタンの合成法について紹介する。本手法は二段階の求核付加反応により多官能メタンを合成するものであるが,DEMOとN-アシルイミンという非常に求電子性の高い試薬を用いることで導入できる求核剤の基質汎用性を高めている。例えば,DEMOに対しては酸アミドのような求核性の低い基質であっても導入可能である。また,本付加反応により得られたN,O-ヘミアセタールをO-アシル化した後に塩基を作用させると,もう一つの求電子剤であるN-アシルイミンが生成する。N-アシルイミンに対しては複素芳香環化合物,アミンや酸アミドを導入することが可能であった。これらの反応により,1つの炭素に2つのエステル基,アシルアミノ基に加えてさらにもう一つの置換基を有する多官能メタンを合成することに成功した。また,1,3-ジエステル部位を加水分解と脱炭酸することにより非天然型アミノ酸へ誘導することにも成功した。
ポリエチレングリコール(12モル)/ポリジメチルシロキサン共重合体(PEG-12ジメチコン)はポリエーテル変性シリコーン(PEMS)の一種であり,ラメラ液晶を形成することが知られており,化粧品に利用されている。剪断,水の揮発,基板との相互作用によるPEG-12ジメチコンの構造体の変化をレオロジーと中性子小角散乱の同時測定(Rheo-SANS)または中性子反射率法(NR)により評価した。バルクでは36wt%以上のPEG-12ジメチコン高濃度において板状のラメラ構造の再配向が生じ,neutral配向へと転位した。しかしながらよく知られているラメラ-マルチラメラベシクル転移は確認されなかった。また基板表面への界面活性剤の静的および動的吸着過程を理解し,吸着膜構造を解明することは塗布膜の機能や性質を制御するうえで非常に重要である。PEG-12ジメチコンは親水化シリコン基板上でバルク中の構造と類似してはいるが一定の表面粗さを持った1枚の二分子膜を形成していることが分かった。