オレオサイエンス
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20 巻, 12 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
特集総説論文
  • 稲木 敏男
    2020 年 20 巻 12 号 p. 535-541
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/04
    ジャーナル フリー

    日本においてシルクは,明治時代には生糸生産量が世界一となり日本近代化の足掛かりを作った。その後,変遷は有るものの第二次世界大戦後には養蚕業が日本の基幹産業へと成長した。しかし,昭和40年代以降,海外の安価な生糸の輸入,化学繊維の普及並びに需給構造の変化により衣料を中心としたシルク産業は後退している。しかしながら,シルクは繊維のみならず,UV遮蔽効果を利用した化粧品,生体電極などの医療機器,更には遺伝子組み換えを応用した医薬品など新しい観点からのアプローチが注目されている。本稿では,シルクの歴史と新しい研究動向から見えるシルクの将来像について概説する。

  • 寺本 英敏
    2020 年 20 巻 12 号 p. 543-548
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/04
    ジャーナル フリー

    本稿では,特徴あるカイコ系統を利用した新規シルク素材の開発について2つの例を紹介する。従来の品種改良によって生み出されたカイコ系統「セリシンホープ」は,シルクを構成する接着タンパク質セリシンのみからなる薄い繭を作る。このセリシンホープの繭からは,フィルムや含水ゲルといった素材化が可能な高分子セリシンを得ることができる。化粧品素材や細胞培養基材,組織再生材料などへの利用展開が期待できる。遺伝子組換え技術を使えば,従来の品種改良では付与できない特徴をもつカイコ系統を作出できる。遺伝子組換え技術を用いて人工アミノ酸をタンパク質合成に利用できる能力を付与したカイコ系統を作出した。この系統はアジド基をもつ人工アミノ酸4-アジドフェニルアラニン(AzPhe)をタンパク質合成に利用でき,AzPheが導入されたフィブロイン「クリッカブルシルク」を産生する。クリッカブルシルク中のアジド基には,クリック反応によって選択的に機能分子を結合することができる。クリッカブルシルクを用いて光で細胞接着を制御できる培養基材を開発し,マウス繊維芽細胞を平面上にパターニングすることに成功した。

  • 中澤 靖元, 山本 絢音
    2020 年 20 巻 12 号 p. 549-556
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/04
    ジャーナル フリー

    再生医療には,組織や臓器を再生させるための細胞や成長因子のみならず,それら細胞が組織を再構築するための「足場(組織工学材料)」が必要不可欠である。組織工学材料は工学的技術を駆使し,組織適合性,血液適合性,免疫原性,免疫毒性等の生体適合性,埋植部位に応じた物性,分解性,加工性等の最適化が求められる。近年,それら要件に適した様々な組織工学材料が報告されている中で,シルクフィブロイン(SF)もその候補の一つとなっている。本総説では,組織工学材料として応用するために必要なSFの分解性や炎症性に関する知見をまとめるとともに,具体的な組織工学材料への応用研究について紹介する。

  • 鳥光 慶一
    2020 年 20 巻 12 号 p. 557-563
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/04
    ジャーナル フリー

    バイタル等の生体信号を取得する上で電極の生体適合性はもちろんながら,その肌感触や風合いは極めて重要である。計測していることを意識させないさりげなさは,計測によるストレスを軽減させる。シルクなどの繊維素材は,この様な点で優れており,導電性化することでストレスの少ないフレキシブルな電極としてバイタル計測に最適であると考える。本稿では,この繊維電極についてその技術と可能性について紹介する。

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