L-アミノ酸系低分子ゲル化剤は,比較的簡単に合成でき優れたゲル化能を発揮する。中でもイソロイシン誘導体は,無極性溶媒,エステル油,ミネラル油,植物油あるいはシリコーン油をゲル化する。本論文では,L-イソロイシン型低分子ゲル化剤を安定剤として使用した超分子ゲルエマルションの調製について報告する。
長鎖アルキル鎖をもつポリ(アリールエーテル)デンドロン誘導体の単成分系と,ピレン誘導体とナフタレンジイミド誘導体の二成分系のゲル化挙動と溶媒効果について紹介する。これらゲル化剤のゲル化挙動と溶媒効果は,Hansen溶解度パラメータ(HSP)により解釈できた。HSPのTeasプロットから,ゲル化に用いた溶媒は,不溶・沈殿,ゲル化,溶解の各領域に区分された。このとき,ゲル化領域は,溶解領域と沈殿・不溶領域の間に存在することが示された。また,HSPの極性項(δa)とGelation Numbers(GNs)との相関関係から,ゲル形成の主な推進力は,極性溶媒では適度な疎溶媒効果が,非極性溶媒中では水素結合やCT相互作用などのゲル化剤分子間相互作用であることが示された。
オイルとワックス類(パラフィンや植物性ワックス)からなるワックスゲルは,口紅,リップクリーム,アイシャドウ,ファンデーションなどの種々の化粧品に使用される。ワックスゲルは,板状結晶が組み合うことで形成されたカードハウス構造と呼ばれる骨格で形成されているため,ゲルの物理的性質やオイルの極性とゲル硬度の関係などは,通常のオルガノゲルと異なる。また,分子構造の異なるワックスを混合することによりゲルの硬度や油の保持力が大きく変化する。 この総説では,ワックスゲルの微細構造と油固化能との関係を明らかにし,化粧品に適したワックスゲルの物性を制御する技術について述べる。