輸血を代替する人工血液の開発研究は, 特に赤血球の酸素運搬能の人工的な代替を目的として開発が進んできた。赤血球のバイオミメティックテクノロジーとして, 赤血球と同等の優れた酸素輸送機能を有する人工酸素運搬体を得るために, リン脂質, コレステロールの分子間相互作用を利用し, 高濃度精製ヒトヘモグロビンを2分子膜小胞体リボソームでカプセル化した, ヘモグロビン小胞体 (Neo Red Cell) を開発した。その機能設計として, Inositol hexaphosphateをアロステリックエフェクターとして用い, 酸素親和性 (P50) を40~50torrと低下させることにより, 30~50%程度の酸素吸入下において人赤血球に比較して, g-ヘモグロビン当たりの酸素運搬量を2倍と, 高効率な酸素輸送特性を与えることが可能となった。さらに赤血球の糖代謝系の酵素活性を維持したままストローマフリーヘモグロビンを精製し, 基質等と共にリボソームにカプセル化することで, 赤血球のメトヘモグロビン還元機能を模したシステムを, リボソーム中に構築することに成功した。
今後, 人工酸素運搬体には, 血液代替から脳梗塞や心筋梗塞の治療を目的とした, 酸素輸液としての展開が考えられる。そこで機能設計として血液代替を目指した機能設計から, 治療目的とした機能設計への発展が必要となる。
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