オイルゲル化剤の最近の展開と応用について述べた。まず,低分子化合物による溶液の物理ゲル化と溶液からの結晶化について,その類似性を説明した。結晶化は分子が分子間相互作用により三次元的に秩序性のある完全な配列をするために溶媒から相分離する現象であり,物理ゲル化は2次元的な配列で繊維状の会合体が網目構造を形成し,その空隙に溶媒を絡めこむために起こる。結晶化もゲル化も原動力は共に水素結合やファンデルワールス力,静電的相互作用,π-π相互作用などの協同的な非共有結合的相互作用であることを述べた。
次に,“ゲル化駆動セグメント” という概念を述べ,官能基を含むゲル化駆動セグメントから様々な機能性ゲル化剤が容易に合成できることを示した。
ポリマーやオリゴマーは分子量分布や屈曲鎖の運動により結晶化しない。この性質を利用して半永久的に安定なゲルを形成するゲル化剤の開発について述べた。ゲル化駆動部位をポリマーの一部に共有結合を介して付加させることにより,安定なゲルを形成するポリマー型ゲル化剤を開発した。極性油としてグリセリド,非極性油として流動パラフィン,シリコンオイルとしてデカメチルシクロペンタシロキサンを選び,三成分混合溶媒系でのゲル化挙動を調べた。
最後に,環状ジペプチドをゲル化駆動セグメントとするポリマー型ゲル化剤の示す特異なチキソトロピー性について述べた。
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