セイヨウナタネ(Brassica napus)は、その種子中にオレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)の3つの主要な不飽和脂肪酸を含む重要な油糧作物であり、日本の食用油として最も重要なナタネ油の原料となる。セイヨウナタネ種子の脂肪酸の含有量と成分比は栄養学的および加工用途において重要であり、オレイン酸含量を高めることは、主要な育種目的である。本論文では、高オレイン酸ナタネのゲノム育種の現状とゲノム編集技術の適用例を紹介する。
米糠に含まれるγ-オリザノールは小麦・大麦には存在しない米特有の物質であり,高脂血症改善や肥満予防等や,抗酸化,紫外線吸収作用の効果が知られている。これらの効果から,米糠から抽出したγ-オリザノールが医薬品,化粧品等に利用されている。また近年,食や健康に対する消費者の多様化,細分化にともない,玄米食や玄米粉加工食品が食の選択肢のひとつになっており,γ-オリザノール含有量が高い品種は玄米食や玄米粉加工品の魅力の向上に役立つとして期待されている。本稿では玄米を利用した食品に活用できるγ-オリザノール高含有品種の開発に向けた,玄米中のγ-オリザノールの量的変異に関連する遺伝子の探索の取組みについて紹介する。また,こめ油増産用イネの育種基盤の構築を目指して開始した研究プロジェクトを紹介する。