表面圧力, 表面積, 放射能計数, 密度, 粘度, 自己拡散係数, 近赤外吸収, SEM, ESR, NMR, X線回折, 中性子散乱など様々な測定を行い, 脂肪酸やアルコール, アシルグリセリン, ステロイドなどの脂質の水面上単分子膜やLB膜の「二次元における構造と物性」, さらに結晶, 融液および溶液の「三次元における構造と物性」を研究した。その結果, KMnO
4水溶液表面上のオレイン酸やトリオレイル単分子膜の分子占専有面積の経時変化が, 従来言われていたジオールの生成ではなく, エポキシ化合物の生成と溶解に起因すること。
3H標識脂肪酸Cd塩のLB膜を薄く均一で, 強力なβ線源として用いることでニュートリノの質量の上限値を決定した。また,
14C標識脂肪酸を使って, 脂肪酸LB膜が作製直後の不安定状態から安定結晶へ変化する際に, 「大気と基板との問に存在する脂肪酸の蒸気相を通して脂肪酸分子が移動することで結晶が成長する」新しい機構を発見した。アシルグリセリンのキラル体およびラセミ体の水素結合性と物性の関係を明らかにした。さらに, 融液中の脂肪酸分子の動的挙動と液体構造, および水素結合との関係を明らかにした。すなわち, カルボキシル基問の強い水素結合で会合した脂肪酸ダイマーは高温でも安定で, このダイマーが運動の単位粒子であること。また, ダイマーが指組み構造的に互い違いに集合し, スメクチック液晶類似のクラスター構造を形成し, そのクラスター構造が種々脂肪酸の自己拡散係数, 密度, 分子内運動性等の融液物性に影響を与えること。また, 二成分混合系においても脂肪酸は同種分子間でしかダイマーを形成しないことを明らかにした。
抄録全体を表示