オレオサイエンス
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16 巻, 4 号
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受賞論文
  • 佐藤 博文
    2016 年16 巻4 号 p. 173-182
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    モノクロロプロパンジオール(MCPD)類やグリシドールは油脂精製過程に発生する不純物である。DGF 公定法は油脂中の3-MCPD(エステル)の量あるいはグリシドール(エステル)の間接定量法である。DGF公定法では誘導体化の過程でアルカリ処理と酸処理を行うが,MCPDとグリシドールが相互変換し,定量性が失われる可能性が指摘されていた。DGF公定法中の物質変換をNMR法で直接観測したところ,3-MCPDは一部がいったんグリシドールに変換されるものの,誘導体化の段階で3-MCPDに再変換されていることがわかった。また,3-MCPDからグリシドールが生成する量と,そのグリシドールから3-MCPDが再生成する量がほぼ等しいため,定量結果が見かけ正しくなっていることを明らかとした。

    3-MCPDの異性体である2-MCPDについて純粋な標品を合成し,2-MCPDもDGF公定法で定量できることを明らかとした。また,3-MCPDと同様に,2-MCPDの公定法中での物質変換についてもNMR法で直接観測し,グリシドールを経由して2-MCPDに再変換されていることを明らかとした。

    3-MCPDホウ酸エステル(3-MCPD-PBA)と2-MCPD-PBAのEIイオン化におけるフラグメントに着目し,3-MCPD-PBAのフラグメント化の割合と2-MCPD-PBAの3-MCPD-PBAに対するみかけのイオン化効率比から,内部標準物質(2-MCPD-d5)も純粋な標品(2-MCPD)も必要とせず油脂中の2-MCPDを定量することのできる式を提案した。

    本稿ではこれらの研究内容について紹介する。

特集総説論文
  • 木田 敏之
    2016 年16 巻4 号 p. 183-190
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    シクロデキストリン(CD)はデンプン由来の環状オリゴ糖であり,主に6~8個のD-グルコースから構成されている。CDは,そのサブナノメートルサイズの空孔の形と大きさに合う分子を包接することができる。この包接能は学術的にも工業的にも広く利用されてきた。しかし,CDによる分子の包接のほとんどは水中に限られており,非極性溶媒や油の中での効果的な包接は,多量に存在する溶媒分子や油分子が包接の競合相手となるために困難と考えられ,実現されていなかった。著者らは最近,油や非極性溶媒中のゲスト分子を効果的に包接できるCD誘導体の開発に成功した。本稿では,非極性溶媒中でのCDホスト分子の分子認識能について述べた後,それらを用いての油中の有害物質の除去・回収について紹介する。

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