オレオサイエンス
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3 巻, 10 号
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総合論文
  • 瀬戸 秀紀, 長尾 道弘, 川端 庸平
    2003 年3 巻10 号 p. 511-522,508
    発行日: 2003年
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    両親媒性物質を水や油と混合することによって得られるミセルやマイクロエマルションの系は, 「ソフトマター物理学」の対象の一つとして注目を集めている。我々はこの観点から, イオン性界面活性剤AOTと水, デカンからなる系について, 中性子小角散乱, X線小角散乱, 中性子スピンエコーを用いてセミミクロ構造の形成要因, 特に温度変化と圧力変化の違いについて, モデルと対応させながら詳細に検討した。これにより, 温度効果は親水基側に顕著であるのに対して圧力効果は疎水基問の相互作用を変化させること, それが膜の曲率剛性率の変化に関係していること, その一方で温度上昇と圧力上昇により同様のセミミクロ構造の変化が見られることを示した。
  • 好村 滋行
    2003 年3 巻10 号 p. 523-530,508
    発行日: 2003年
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    近年のソフトマター研究について, 凝縮系物理学の観点から概観する。ソフトマターに共通の性質は, メソスコピックな長さのスケールの存在であり, それが系の特徴を決定する上で重要な役割を果している。ソフトマターの一例として, 水, 油, 界面活性剤から成るマイクロエマルションを考察する。マイクロエマルションは熱力学的に安定で, 様々な相挙動を示すことが知られている。このような系を理解するために, 格子スピンモデル, ギンズブルグーランダウ理論, 膜の曲率弾性理論のような現象論的理論が重要であることを強調する。これらのすべての理論は, マイクロエマルションの基礎的性質を理解する上で役立っている。最後に, 高分子マイクロエマルションに関する最近の実験的および理論的進展について簡単にレビューする。
  • 中谷 香織, 今井 正幸
    2003 年3 巻10 号 p. 531-539,509
    発行日: 2003年
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    高分子, 界面活性剤, コロイド分散系などのソフトマターは, それぞれ大きな内部自由度を有するため, エネルギー的な相互作用とエントロピー的な相互作用の微妙なバランスによって, 様々な構造を形成する。最近, このソフトマターの中でも膜+高分子複合系は, 生物, 製薬, 化粧品および食品分野においてよくみられることから, 非常に興味を持たれている。本稿ではこの複合系についてソフトマターの物理といった観点から最近の研究を紹介する。特に界面活性剤/水系においてラメラ状2分子膜の膜間に高分子を閉じ込めた場合と, 水/界面活性剤/油系の3成分系において球状マイクロエマルションの中に高分子を閉じ込めた場合の2つのケースについて解説する。ラメラ+高分子系では, 高分子鎖の閉じ込めによるエントロピーの損失と膜面に対する高分子鎖の排除体積効果 (枯渇相互作用) により, ラメラ膜間に引力的相互作用が生じる。一方マイクロエマルション+高分子系では, 高分子鎖の閉じ込めにより, 膜の弾性エネルギーと高分子鎖の閉じ込めによるエントロピーの損失との微妙なバランスの下, 多段階的な膜のモルフォロジー転移が誘起される。界面活性剤膜+高分子の複合系は, ソフトマターの物理として非常に興味深く, また生物的にも工業的にもこの系を理解することは重要である。
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