スマートテキスタイルの一般的な歴史と定義を最初に説明し,次に歴史的および基本的なスマートウェアとして音楽プレーヤージャケットとソーラーパワースーツを紹介する。次で,導電性糸,導電性ペースト,各種センサー,電池など,スマートテキスタイルを作るための基本的なコンポーネントを紹介する。中でも,非常に重要な部材である導電繊維は製造方法も含め詳細を解説する。はんだ,プリンテッドエレクトロニクス,刺繡など,各部品を接続するための要素技術について説明する。最後に,スマートテキスタイルの最も重要なターゲットとしての生体センシングウェアの国内外の開発動向を説明する。まず,日本の繊維メーカらが作成している心臓モニタリングウェアから世界の最先端を行く台湾の非接触型センシングウェアを紹介する。最後にフランスで量産を開始し,世界11か国,75以上の病院で患者に着用している生体センシングウェアの詳細を紹介する。冷暖房ウェアなどの他の関連アイテムも併せて紹介する。
Covid-19は私たち人類に多くの気づきを与えた。そのひとつに先進諸国を中心に経済活動優先で進めてきた「人類中心の世界」から①変異ウィルスと②地球環境(気候変動による海面上昇,自然災害,水や食料・資源の枯渇問題等),そして③AI(2045年シンギュラリティ)とが共存する世界に突入したことを実感した。更に日本では急速に高齢化が進んでいる。持続可能な社会の実現のためには毎日着用するスマートテキスタイルやスマートウェアのイノベーションが欠かせない。従来型のアナログ洋服から未来のスマートテキスタイル・ウェアの進化について考察してみる。
近年,熱中症の患者は増加傾向にあり,誰にでも起こりうる病気となっている。しかしながら,多くの人々は経験則に基づいた判断を行っていることにより,症状を未然に防ぐことが出来ていない。そのため,熱中症等の症状を未然に防ぐ技術が求められている。そこで我々は,汎用一眼カメラを近赤外線カメラに改造し,運動前後の皮膚表面を撮影し血行動態変化を可視化できないか検討を行った。本研究ではヒト皮膚表面から得られた赤外線画像を反射率画像に変換し,血行動態変化の可視化を試みた。実験は暗室内における前腕部の計測,暗室内における足裏部の計測,屋外における前腕部の計測の3種類を実施し,反射率の変化と血行動態変化の関連性を検討した。反射率画像の結果から,本提案計測システムが血行動態変化の可視化により熱中症等の予防に適用できる可能性が示された。