オレオサイエンス
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14 巻, 4 号
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受賞論文
  • 佐藤 俊
    2014 年 14 巻 4 号 p. 141-147
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    化石資源から再生可能資源への原料転換が進む中,原料に油脂を利用した化成品やバイオ燃料等の生産量が増加している。そのため,これらの産業で副生するグリセリンの有効利用技術開発が課題となっている。筆者の所属する研究グループでは,副生グリセリンの有効利用を目指し,グリセリンを原料に微生物発酵によって得られるグリセリン酸の生産技術開発を進めてきた。しかし,グリセリン酸の機能や用途に関する知見が乏しく,その利用技術開発が必要となっていた。本総説では,グリセリン酸の生産および利用技術の研究に関して,筆者および筆者の所属する研究グループで進めてきた近年の研究成果について紹介する。グリセリン酸の利用技術開発では,グリセリン酸塩に新たな細胞賦活活性を見出し,アシルおよびグルコシル誘導体には優れた界面活性剤としての機能および生体分子の保護機能があることを明らかにした。一方,グリセリン酸の生産技術の研究では,副生グリセリン中のメタノールの影響を調べ,グリセリンを酸化する酵素反応をメタノールが直接阻害することを明らかにした。さらに,メタノール耐性を有するグリセリン酸生産菌の改良にも取り組んだ。

  • 野々村 美宗
    2014 年 14 巻 4 号 p. 149-156
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    生体表面では,ワックスで被覆された超凸凹表面における超撥水現象や,霧の中の水の凝縮現象,表面張力勾配を利用した滑らかな水滴移動など,興味深い界面現象が起こっている。なかでも舌や小腸など粘膜で覆われた凸凹な臓器表面では,味物質の知覚や栄養吸収に影響を及ぼす,特徴的な界面現象が起こっているものと推察される。しかし,これらの表面で起こる濡れ現象は直接観察することが難しいため,これまでにほとんど研究されてこなかった。われわれは,アルキルケテンダイマーという油脂が形成する階層性凸凹構造を表面に転写したフラクタル寒天ゲルを開発し,その表面における濡れ現象を高速観察した。 その結果,表面の凸凹によって濡れ速度が顕著に速くなること,先行膜と呼ばれる薄膜が液滴の三相接触線付近に現れることを確認した。さらに,水に1-プロパノールなどのアルコールを加えるとマランゴーニ対流による濡れの促進現象が,コロイド粒子や油滴が分散したディスパージョンやエマルションでは粒子の集積により抑制現象が起こることを見出した。このように,生体の特性を模倣したバイオミメティック材料を用いることで,直接観察することの難しい界面現象を垣間見,濡れダイナミクスを支配する法則を提案することに成功した。これらの知見は機能性食品や医薬品,化粧品の評価と開発に有用であろう。

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