オレオサイエンス
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18 巻, 7 号
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特集総説論文
  • 守口 徹, 原馬 明子
    2018 年18 巻7 号 p. 309-315
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/02
    ジャーナル フリー

    これまでω3系脂肪酸の脳機能に関する有用性は数多く報告されているが,個々のω3系脂肪酸と競合するω6系脂肪酸の相互作用について検討した報告は少ない。我々は脂質代謝酵素の1つであるΔ6不飽和化酵素の欠損マウスと新生仔の人工飼育法を組み合わせて,成長発達期に重要な多価不飽和脂肪酸を明らかにしようとした。その結果,成長発達期の身体成長にはアラキドン酸(ARA)が必要で,脳機能の発達・維持にはドコサヘキサエン酸(DHA)が重要な役割を果たしていることがわかった。実際の生体ではリノール酸やα-リノレン酸,エイコサペンタエン酸がARAやDHAに代謝され有効性を示すことが考えられるが,脂質代謝活性の未熟な乳幼児では,両脂肪酸の直接的な摂取が不可欠である。

  • 宮下 和夫, 上村 麻梨子, 細川 雅史
    2018 年18 巻7 号 p. 317-324
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/02
    ジャーナル フリー

    魚油はEPAやDHAを多く含むため,酸化安定性が低い。また,酸化の第一次生成物であるヒドロペルオキシド(ROOH)の安定性も低く,ROOHの分解によりアルデヒドなどの風味劣化成分が酸化のごく初期から生じる。魚油の酸化防止は,この風味劣化成分の抑制が鍵となる。一方,魚油の風味劣化についてはこれまでも多くの研究があるが,その主因については明確にはされていない。本項では,魚油の風味劣化成分について,特にその酸化初期に生成するアルデヒドに焦点をあてる。また,魚油の酸化に伴う風味劣化の効果的な防止法についても紹介する。

  • 太田 宣康, 曽我 聡子, 峯岸 慶彦, 矢野 路子, 杉田 聡
    2018 年18 巻7 号 p. 325-331
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/02
    ジャーナル フリー

    超高齢社会において,運動機能を高め健康寿命の延伸を実現することは重要な課題である。中高年齢者の運動機能改善を目指し,加齢に伴う運動機能低下の特徴を探るため体力横断研究を行った結果,敏捷性を始めとする行動を調節する力の低下が顕著であることが示された。また我々は,運動ニューロンとそれが支配する筋線維群から成る運動単位の機能を改善し得る食品素材として乳に着目し,乳中の極性脂質であるスフィンゴミエリンが,神経筋接合部の構造・機能の改善を介して運動単位の活動性を高め,敏捷性などの運動機能改善に作用していることを見出した。更に,ヒトにおいては,食事性スフィンゴミエリンと適度な運動を併用することで,中高年齢者の敏捷性や転倒リスク,また虚弱状態が改善されることが臨床試験で明らかとなっている。以上より,栄養や適度な運動の介入による,神経筋接合部を中心とする運動単位に対するアプローチが,運動機能を高めるための有効な選択肢となることが示唆された。

  • 多久和 陽
    2019 年18 巻7 号 p. 333-340
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/02
    ジャーナル フリー

    細胞膜に豊富に存在するスフィンゴ脂質に由来する脂質メディエータースフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は,5種のS1P特異的Gタンパク質共役型受容体を活性化して,多彩なシグナル経路に共役する。標的細胞におけるしばしば複数のS1P受容体の発現とあいまって,S1Pによる複雑な細胞機能の制御を可能にしている。二つ目の特徴は,S1Pは血漿中に高濃度で存在し,血中と組織の間にS1Pの大きな濃度勾配が存在することである。S1Pシグナル系の主要な標的は,血管系と免疫系であることが明らかになってきた。血管系では,血管形成,障壁機能の維持,血管障害に対する防御などに関わる。免疫系においては,リンパ球の体内循環,活性化,分化やマクロファージ機能を調節することにより,免疫機能の生理的調節ならびに炎症応答に関与する。多発性硬化症に対する治療薬FTY720が開発されたのを皮切りに,さまざまな免疫,炎症性疾患を標的としたS1P創薬研究が活発に展開されている。

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