N-アシルイミンは高い反応性を有するビルディングブロックとして合成化学分野において幅広く利用されている。本稿では,これまで合成例のない二官能基化N-アシルイミンの開発を目指し,対応する前駆体の合成とイミンの発生,およびその反応について検討した結果を紹介する。前駆体の合成では隣接トリカルボニル化合物の高い求電子性に着目し,金属試薬等による活性化を必要としない実用的な酸アミドの直接求核付加反応を見出した。また,O-アセチル化-N,O-ヘミアセタールをN-アシルイミンの安定な前駆体として位置づけ,種々の求核剤との反応を行なった結果,効率よく反応し付加体を与えることを明らかにした。さらに生成物の官能基変換も行なったので併せて紹介する。
物体表面における液滴のダイナミクスは,物体表面への液滴の衝突,表面上への濡れ,脱濡れ現象など,これまで多く報告されてきた。これらは学術的に興味深い現象であるだけでなく,たとえば,インクジェットプリンターのインクの設計や,農薬の付着量の調整など,産業的にも重要な現象である。このうち,本稿では,脱濡れ現象に着目する。
基板表面と相互作用する物質を含まない液滴の濡れ,及び脱濡れ現象は,液滴が基板表面に衝突した後,基板表面と液滴との平衡接触角に向かって緩和していく。しかし,液滴内に,基板表面と相互作用する物質を含む場合の,濡れ,脱濡れ現象は単純ではなく,産業的に重要視されるのはこのような複雑な濡れ,脱濡れが起こる場合が多い。一般的にreactive dewettingと呼ばれているこの脱濡れ現象は,界面活性剤等の基板表面と相互作用する物質が液滴内に含まれているときに観察される。ここではreactive dewettingの半定量的な解析と,実際の実験結果を示し,これらの結果がどのように産業利用できるのか可能性を示す。